7月8日 夕張川 戦慄のドキュメント

  • 2022年思い出の釣行記No.8

  • 戦慄のドキュメント
  • 虫食い模様でアメマスと分かったが・・・
  • 釣 行 日   7月8日      
    入釣場所   幾春別川・夕張川 

    アメマス 520㎜以下 2
    ニジマス 350㎜以下 9
     ウグイ         沢山
  •  6月の解禁に合わせて渓流の女王である山女魚釣りに出かけようと準備していたが、なんやかんやで庭の花菖蒲が咲き誇る季節になってしまった。数日前に雷を伴う大雨が降ったが、川は落ち着きを見せ始めているだろう。岩見沢では気温も30℃を超えて茹だるような暑さが続いた。涼みがてら幾春別川に向かうことにした。
     川は程よい水量で流れている。早速、MAX4.4mのズーム竿を伸ばして瀬の流心に沿ってブドウ虫を流した。すぐに小気味よいアタリが出て、手首を返すと30㎝上のニジマスが宙を舞った。しかし、その後はウグイばかりが釣れてくる。10匹に1匹の割合でニジマスが出て山女魚のアタリは皆無だった。
  • 幾春別川で最初に釣れたのは、30㎝ほどのニジマスだった
  •  最近YouTubeなどで人気が出てきた夕張川に向かうことにした。三夕トンネルをくぐるとシューパロダムの上流域が見えてきた。釣り人が何人か見えたが、川への下り口が分からない。更に進むと立派な橋が見えてきたのでその脇から下りることにしたが、急な崖だったので躊躇することになった。取りあえず、わずかに生えた灌木等を手がかりにして川筋に出ることが出来た。
  • 夕張川の流れ。下り口が急斜面で難儀したがここからスタートした
  •  川幅が大きかったのでMAX6.3mの竿を振った。すぐにニジマスのアタリが出て竿をグングン締め込まれていく。ジャンプさせないように竿を寝せて引き寄せたが、一瞬の油断があったのだろう見事な飛翔でハリを外されてしまった。それからは、ウグイばかりが釣れ続いた。夕張川は、深い落ち込みがなくてだらだらとした流れが続いている。ウグイのアタリに我慢しながら、いつかは大物ニジマスが出るのだろうと釣り続けていた。
     少し深さのある急流が続いているところで重みのある魚を掛けた。少し大きなウグイでも釣れたのだろうと遊ばせていると、背中に虫食い模様が見えた。慎重に寄せて川岸にずり揚げるとまさしくアメマスだった。メジャーを当てると50㎝を超えている。しかし、残念ながら全く貧弱な魚体だった。
  • 夕張川の流れ この流心からアメマスが出た
  • 長さは50㎝超えたのだが、全くみすぼらしいアメマスだった
  •  夕張山系は羆の多いところとして名前が挙がっている。入渓の時もけたたましくホイッスルを鳴らし、見通しのきかない曲がり角では腰に付けた鐘を大きく振った。また、河原を歩くときも足跡に注意していた。鹿や人間の足跡は見えるが、熊のものと思われるものはない。更に上流へと進んでいくと橋が見え、その下で二人の釣り人が竿を振っていた。まだ日は高いところにあるが、もうこの辺でいいだろうと竿を畳んだ。
  • 橋が出てきた。釣り人が2名いたのでここからひきかえした
  •  車に戻り、汗で濡れた下着やTシャツを取り替え、クーラーをキンキンに効かしてからアクセルを踏んだ。
     背後からヘッドランプを点けた2台のバイクが現れたので道を譲ろうかと減速すると、前方に黒毛牛のような大きな影がノソッと現れた。羆だ。しかも大きい。熊牧場や動物園で見慣れたものとは全く違う威風堂々とした姿だ。その威厳のある羆は、私の車に一瞥もせずに国道をノシリ、ノシリと横切った。そして国道脇に付いたガードレールが無いかのように一跨ぎ、一跨ぎして林の中に消えていった。圧倒的な姿で写真を撮るのも忘れていた。
     吉村昭著「羆嵐」が生々しく蘇ってきた。苫前村三毛別で起きた日本史上最悪の熊害と評される事件を題材にした小説だ。私が幼き頃、祖父が寝枕に何度も語ってくれていたので、渓流釣りで山奥に分け入ることが多くなっていたこともあって、あらためて読んでみたのだ。破天荒な祖父らしく脚色したものも随分と多かった気がするが、「羆嵐」も慟哭の谷での羆と被害者を追った戦慄のドキュメントだった。

     帰宅してから女房に釣果を聞かれた私がとった行動も不可解なものだった。絶対秘密にしなければならない羆との遭遇を、つい口走ってしまったのだ。予想通り今後の渓流釣りは難しいものになってしまった。あ~ぁ・・・

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