この微睡みは何なのだ!苫小牧東

  • 2024年思い出の釣行記No.3
  • この微睡みは何なのだ!
  •             釣行日:3月6日(水)13:30~19:00
                入釣場所:苫小牧東港
                天 気:晴れ 気温0℃→-4℃ 夕方北風6m
                釣 果:クロガレイ 43㎝、40㎝ 
  • 初釣りはクロガレイ2枚。腹の卵は未成熟だった。
  • 微睡みの中で振り返る
     今、私は、背中に熱いほどの陽射しを浴びて、居間でパソコンに向かって微睡んでいる。ストーブは先ほど女房が消してしまった。昨日の釣行時の凍えるような冷気と比べて、この陽射しの強さは間もなくやってくる春の気配を感じるに十分な陽気だ。
     砂川遊水地は暖冬のために氷が緩み、ワカサギ釣りへの開放が28日を待たずに中止になった。すぐさま、ワカサギ釣り道具は片付けて、海釣りの準備をした。まずは、例年のように苫小牧東港周辺を探ってみようと思う。
     冬の間は「つりしん」を購入することはなかったが、そろそろではないかなと思い、手にしてみると、「今年は当たり年確定か!」「カレイ大豊作!」との文字が躍っていた。「浜厚真漁港基部海岸 夕まずめにアタリ集中 30㎝から40㎝が16枚」との記事を見て胸が騒がないはずはない。

     6日(水)、苫小牧に向けて車を走らせた。「つりしん」に掲載された浜厚真漁港右の磯を見ると、3名の釣り人が竿を出していた。釣果を聞くと、朝からの入釣で35㎝を頭に3人で7枚の釣果があったという。しかし、残念ながらどれもが雄だともいう。磯は狭くそれ以上の釣り人を受け入れてもらえるには無理なので、苫小牧東港フェンス前に向かった。ルアーやワーム、フライ、サビキ釣り師に混じってクロガレイを狙って投げ竿を出している釣り人もいる。この場でこれだけの投げ竿を見るのは初めてのことだ。フェンス前を歩いて行くと、45㎝ほどのクロガレイとアメマス2本が無造作に横たわっていたが、ほとんどの人があきらめ顔で首を項垂れていた。
     ここで、昼食をとりながら、しばらく眺めていたが魚の銀鱗を見ることはできなかった。昨年、同時期に抱卵クロガレイが上がった水路に向かった。まだ誰も釣り人が入っている様子はなく、鹿の踏み跡が縦横無尽についている雪原の上を歩いて駐車帯から300m程離れた釣り場に着いた。昨年は大雨後だったので濁りが入っていたが、晴天続きなので海水は澄んでいた。

     ロケットカゴ仕掛け2本を中投げ、2本バリ仕掛け2本を遠投にしてアタリを待った。30分ほどすると左のロケットカゴ仕掛けの方に糸ふけが出た。そして、竿尻で身構える間もなく大きく竿先がグイングインと入った。慌てて竿を掴んでリールを巻いた。40㎝のバッカンからはみ出すクロガレイだった。
  • 幸先がよく、40㎝強のクロガレイが上がった。
  •  そして、またその30分後、今度は右のロケットカゴ仕掛けの方にツンツンと微妙なアタリが出た。10分ほど待ったが、竿先を食い込むようなアタリは出ない。エサでも取り替えるかと、静かに聞いてみるとスーッと仕掛けが寄ってくる。何もついていなかったかともう一度静かに竿を引いてみる。やはり同じだ。イソメを咥えたクロガレイがこちらに向かってきているようにも思える。更に静かにリールを回していると、竿先がギュンと入った。手応え十分で底へ底へと刺さり込んでいく。波打ち際に現れたのは、まさしくクロガレイだった。波打ち際までは、釣り場より竿2本分ぐらい離れているので、一気に抜き上げるのを躊躇して、少し間を詰めてからガラ場に引き上げようとした。すると、引き上げる前に波打ち際の玉石原にオモリが引っかかったようだ。クロガレイは泳ぎ回ってバタバタとしている。竿を煽っても抜けてこないので、慎重に蛇籠の上を伝って下りて、竿を向こう側に何度か煽っている内にオモリが岩の隙間から外れたようだ。今日の2枚目は少し手こずらせたが、バッカンに丁度の大きさだった。
     昼間にこの釣果なので、夕まずめにはどれほどが竿を揺らすことだろう。楽しみにして何度も打ち返すが、その後、アタリは全くなくなってしまった。竿先を軽く曲げる程で待っているのだが、その竿先がピンと真っ直ぐになることもなく、そして、チョコン、チョコンと揺らすこともなく平穏なままだった。
     北風が強く吹くようになった。一旦、休憩のために車に戻って暖をとった。凍えていた手が云うことを利くようになって、釣り場に戻った時にも竿先は微動だにしないで元のままだった。エサを取り替えるべく、仕掛けを上げても、イソメはそのままの状態だった。
     こんなことを3度繰り返した。3度目には女房に電話したほどだった。「諦めて帰る」と!それから、釣り場に戻って竿や道具を片付け雪道を歩いた。鹿の足跡だけだった雪原が、私が何度も踏み固めた1本道に変わっていた。溶け始めていた雪も凍てついて、歩を進めて雪原を踏み抜く度に、ガリッ、ガリッと音がした。
     家に付くと、女房がクックと含み笑いを浮かべて下を向く。「明日の昼までには帰る」と豪語していた私が、とぼとぼと帰還してきたのがよほど可笑しかったらしい。熱めの風呂に入ってからビールで喉を潤しているときでも、その含み笑いは消えなかった。
  • クロガレイは少し縮まったが43㎝あった。
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