9月25日箸別サケ息子と雄2

  • 2020年思い出の釣行記No.15
  • 敬愛すべきセンター長
  • 9月25日 箸別川河口右
     サケ2本(オス73㎝、72㎝)
  • 1本は息子が釣ったものだが、自分が2本釣ったような気分だ。どちらもオスだったが右は身が真っ赤だった
  •  前回(17日)の好釣を得て息子を誘うと、息子の勤務の合間を縫って25日に釣行することになった。24日発行の「つりしん」では
  •  増毛町箸別川河口海岸
      分厚い群れ到来
      最多30匹超えの爆釣劇!
  • と、その好調ぶりが掲載された。釣り場は混雑していることだろう。
     前回より早めに息子の車で箸別に向かうと、駐車帯は満車の状態だった。私が先に車から降りて釣り場確保のために河口へと向かった。案の定、河口からウキルアーの釣り人が並び、その端に到着したばかりのぶっ込み釣り師が1本竿立てをゴロタ場に打ち込んでいるところだった。
     幸いウキルアーのスペースが一人分空いていたので、「入らせてもらっていいですか」と両隣に声を掛けてからその場に立とうとすると、左隣の若者が他の場所に移動するという。自分は未熟でこんな混雑の中で釣りをしてもみんなに迷惑を掛けてしまうと言うのだ。それでは申し訳ないので私の方が入るのを遠慮しますとやりとりしていると、右隣の御仁が一人ぐらいのスペースは十分あるのでお互いに譲り合って楽しい釣りをしましょうと言って下さった。左隣の若者は本州からの釣り人で、休暇を取ってこの北海道までやってきたと言うことだ。彼が謙遜するようなことはなく、コントロール良く遠投も出来ていた。そして、私たち親子が立ち去るときには、3本のサケを釣り上げていた。
     準備し終わったところに息子が来たのでその場を交代した。私は息子の背後でそれを見守ることになった。未だ暗い内に息子が掛けた。竿を大きく曲げて懸命にリールを巻いている。2年ぶりのサケ釣りのために合わせが甘かったのだろうか、岸際に来てから外れてしまった。付近では一番乗りのサケだったはずだ。気を取り直して再び竿を振り出した。また掛けた。今度はグイグイと竿を煽ってハリをくい込ませてから引き寄せている。左隣の若者も右隣の御仁も仕掛を上げて見守ってくれている。私が軍手を履いて取り込みを手伝いに行ったときには、もうゴロタ浜にずり上げていた。ブナ掛かったサケの上唇が切れたようでペンチでハリを外すこともなかった。両隣が息子の健闘をたたえてくれている。
     サケの処理を私に託した息子が釣り場に戻ろうとすると「あれ、俺は何処で釣っていたんだっけ」と呟いた。息子が釣っていたスペースに新たな釣り人が入ってしまっていたために自分の釣り場が分からなくなってしまったようだ。
     右隣の御仁(この際名前をつけよう。周辺の仲間が【センター長】と呼んでいたのでそれを使わせていただく)がすぐさま対応してくれた。【センター長】が割り込んだ釣り人に丁寧に話しかけた。
    「今その場所で、その人がサケを釣り上げたところですよ。その取り込みのどさくさに紛れて、入り込むなんて卑怯ではないですか。その場所は、彼のお父さんが息子さんのために両隣に丁寧に挨拶をしてから釣り場を確保し、そこを息子さんに譲って自分は釣り場に立つスペースがないために息子さんを見守っているという状況なのですよ。」
     そのスペースに入り込んだ方は、無言だがその場を立ち去る様子もない。【センター長】は追い打ちを掛ける。
    「これだけお話ししても立ち去らないのはどういう了見ですか?黙っていればそのまま見逃してくれるとお思いですか?そんな方のそばで釣りをしたくはありません。皆さんどう思います。」と、彼の仲間らしい方達を振り返った。私も気づかなかったのだが彼の仲間が5人いた。【センター長】も後から来た仲間のための釣り場を確保するために気を遣っていたらしい。
     【センター長】の仲間が「わたしもいやですねえ」「他の所に移りましょうか」「しかし、悔しいですね」「【センター長】らの先人隊がせっかく確保してくれた釣り場を譲ってしまうのは腹立たしいですね」「盗っ人猛々しい!」「火事場泥棒!」などと、小声ながら怒気を含んだ物言いが続いた。割り込んだ「空き巣狙い」の顔色は覗えなかったが、圧倒的な不利を感じたのか、すごすごとその場を立ち去った。
     私は、【センター長】に丁寧にお礼を言った。そして、【センター長】に加勢の言葉を掛けられなかったのを恥じた。
     その後も【センター長】は、付近でサケを釣り上げた方に祝福の声を掛けたり、仲間6人が釣り場を交代するタイミングを調整したり、自ら釣り場を譲ったりしながら楽しい時間を過ごしていた。
     私は、その【センター長】がいるので、安心して遠く釣り人のいないところまで出張した。前回良かった自製ウキフカセで狙うもなかなか釣れない。そんなときスマホが鳴った。息子がトラブルを起こしたので助けてほしいというのだ。慌てて息子のところへと駆けつけた。釣り人とのトラブルではなく、ウキの付近に道糸のPEが絡まりそれが解けなく30分ほど格闘していたということだった。私は、絡まったPE道糸をバチバチと切りすぐに回復させた。
     海はべた凪だったが天気予報通り12号台風接近のため風が強くなってきた。風で煽られたさざ波も立ち始めた。潮の流れはいつもと逆である。誰もが時折吹く強風のためにコントロールがままならなく、いつもよりオマツリしている風景が目立つ。息子が精神的に疲れたので休むと言った。そして、誰もいないところで思いっきり竿を振りたいと遠くへ出かけて行ってしまった。私は、息子とその場を交代してアワビブルーのルアーにチェンジして竿を振った。サケからのゴツゴツとしたアタリが出る。そして、その数投目でそのゴツゴツとしたアタリがグインとエサを銜え込んだアタリに変わった。グイッ、グイッと竿を煽ってハリをくい込ませてから引き寄せた。まだ上唇の曲がりが小さい銀ピカのオスだった。
     【センター長】がサケを掛けた。随分とブナが掛かってはいたが、丁寧に血抜きをして海水に晒した。単に遊ぶだけの釣りもあるのだが、私はこのように釣った魚に敬意を払うキャッチ&イート派だ。
     サケを狙った船外機付のゴムボートが近づいてきた。年配の乗船者の姿が見える。遠投すれば届くような距離でボートが留まった。【センター長】の仲間が大声で
    「おーい、危ないよ。ルアーが当たって怪我するよ。ボートに当たったら穴が開いて死んじゃうかもしれないよ。」などと何度も叫んだ。彼らの投げる距離では届きそうにもないが、超遠投できる人なら届いてしまうだろう。この場の釣り人の中には超遠投出来る人が何人も見当たるのでボートまでは届いてしまう。オールを使って少し離れてはみるものの次第に近寄ってきている。岸寄りで釣っている姿が見えるので自然にその方向へと向いてしまうのだろうか。そのボートの釣り人にサケが掛かった様子は覗えなかったが、しばらくすると遠くへと去って行った。
     午前8時、アタリも無くなり付近でも釣れた様子がなくなった。息子が根掛かりなどでアワビ張りの新しいルアーを3個もなくしてしまったこと、釣り上げたサケにイクラが入っていなかったことが心残りだったが、親子が1本ずつ釣り上げたことに満足して釣り場を後にした。
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