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発作的に聴き直したくなったので。Hidenobu Ito の 2nd、2002 年発表。
いやはやいつ聴いてもごった煮 electro click funk でネタ満載の腹いっぱいで尚且つ分解しそうで分解しない鋼の pop music なのであります。西の Max Tundra に対抗できるのはこの人しかおらへん。是非とも戦って砕け散ってほしいと願って止みません。
序盤は pureness ぶりばりのキラキラ系生音 electronica、ambient でゆるゆるな音響で忘我と恍惚の汀に漂う中盤を経て、甘酸っぱく切ない泣き世界系音楽を展開する終盤へ。いや見事。天才。Beethoven は越えてますって。
映画 "Goodfellas" の中で、Tommy のアホ話に大笑いした Henry が「おかしなやっちゃなぁ」と笑いながら言ったらば、Tommy が急に真顔になって「俺のどこがおかしいっちゅうねん、ほれ言ってみぃ、俺がおかしいか、おかしいんかえぇコラ」と凄みだして Henry をびびらせる場面がありますが、現場の親方の気分を読み違えると途端にこういう展開になるのであります。恐るべし AB 型。
Guillermo del Toro 監督作品、2002 年。
前作の続き。人間と吸血鬼の混血で、日光に当たっても死なないことから Daywalker とも称され恐れられる男 Blade (Wesley Snipes) は、vampire を根絶やしにするべく日夜戦っていた。恩人 Whistler (Kris Kristofferson) が vampire に連れ去られ、新たな武器係 Scud (Norman Reedus) と共に戦う Blade は、何とか Whistler の救出に成功する。間もなく根城に vampire が潜入するが、vampire は Blade との休戦を申し入れに来たのだった。人も vampire も喰らい、銀の弾も大蒜も効かない魔人達、通称 reapers が世界を脅かしており、vampire は Blade と組んで reapers を叩こうと画策していた。Blade はその誘いに乗り、reapers の首領 Nomak (Luke Goss) を倒すべく行動を起こす……。
"Underworld" なんぞに比べると Blade は痛快娯楽度が高くて非常によろしい。筋肉質な体で日本刀振り回し手裏剣も投げる Blade は最高っす。これみよがしに噴出する血飛沫や、日を浴びて花火のように燃え散る reapers や vampire 達、そして血の pool 等、吸血鬼 entertainment としての道具立ても充分。面白かったですよ。
とはいえ今回の Blade は team の頭役ってことで、前作のように孤独な戦いを強いられているわけではないので、活躍度はいまいち。Nomak も強烈に強いって感じじゃないし、vampire の Nyssa (Leonor Varela) と Blade の微妙な romance もあったりで、ちょっと気合いが抜けてしまった印象も。まぁ続編としては成功してる方じゃないですかね。
Ron Howard 監督作品、1991 年。
幼い頃に消防士の父を亡くした Brian McCaffrey (William Baldwin) は、何度も転職を繰り返した後、消防士になった。配属された隊は兄の Stephen (Kurt Russell) が隊長を張っている 17 小隊。着任早々現場の洗礼を受けた Brian は、Stephen の勇猛果敢ぶりを目の当りにする。火事が収まった後、調査官の Donald Rimgale (Robert De Niro) は火事が放火によるものではないかと疑う。仕事では優秀な Stephen だが、妻の Helen (Rebecca De Mornay) とは数ヵ月前に離婚していた。Brian は兄に負けるまいと努力したものの、格の違いを思い知る。Brian の昔の恋人で、今は市議会議員 Alderman Marty Swayzak (J.T. Walsh) の秘書として働く Jennifer Vaitkus (Jennifer Jason Leigh) は、そんな Brian に Rimgale の助手になるよう勧め、Brian も逡巡した後、その申し出を受ける。連続放火魔を追う Rimgale は、犯人が火を熟知した人間だと Brian に語る……。
久々に観ましたが、やっぱええ映画ですなぁ。炎と格闘する男達の背中がやたらと格好良いのですよ。でもって Stephen の趣味は Iron Butterfly に Cream ってことで、これだけで兄貴応援したくもなりますよ(爆)。
丁寧さが売りの Ron Howard 監督作品ってことで、滲み出る兄弟愛がまたたまらん。事あるごとに喧嘩ばかりしておるような Brian と Stephen ですが、Brian の着衣を Stephen が直す場面は映画終盤で上手く再演されるし、Brian の訓練に Stephen が付き合って二人階段駆け上がる場面も良好。で終盤、Stephen の足を引っ張る役回りしか演じていなかった Brian が、負傷して身動きできない Stephen の代わりに hose 握って大活躍し、それを Stephen が「見ろよ、あれが俺の弟だぜ」と救助隊相手に自慢する場面にゃ思わず涙ですよ。泣き路線の Ron Howard は強いですなぁ。
炎の演出も見事で、意志を持つかのように消防士に襲いかかる様は迫力あります。「炎は生き物だ」という台詞そのままに、天井を瞬く間に埋めつくしていく炎が、工場で drum を吹っ飛ばしつつ噴出する炎が、尽きることなく男達を追い詰めていく。ただ凄まじい炎を見せるというのではなく、それが意志を持つかのようにのたうち回り、時には人間を誘うかのように身を引いたり、あらぬところから噴出したりする。これが real な描写なのかどうかは解かりませんが、花火どかどか打ち上げるだけの映画とは一線を画した見せ方です。元腕利き消防士 Rimgale や、元放火魔 Ronald Bartel (Donald Sutherland) による火事場講釈も効果的でしたねぇ。
Hans Zimmer による score は某料理番組のお蔭で有名になっちゃいましたが、荘厳でありながら当たりの重い音で、これまた良好。職業劇伴師の性か、pop な曲は書けない Hans Zimmer さんですが、代表作と言ったらこれになるんじゃないですかね。
陰謀話と色恋で tension 下がるという欠点はあるにせよ、全体的には水準以上の面白さなので、未見の方は観ておきましょう。
Alejandro Amenabar 監督作品、2001 年。
第二次大戦末期の英国、Jersey 島。Grace Stewart (Nicole Kidman) は、出征した夫の帰りを待ちつつ、幼い二人の子供、即ち娘の Anne (Alakina Mann)、息子の Nicholas (James Bentley) と共に、大きな屋敷を守って生きていた。使用人が失踪して Grace が困っていたところ、折り良く初老婦人 Mrs. Mills (Fionnula Flanagan)、若いが口の利けない Lydia (Elaine Cassidy)、老いた庭師 Edmund Tuttle (Eric Sykes) の三人が屋敷を訪れ、使用人として雇われることになる。Grace は使用人達にこの家の rule を教える。即ち、部屋から部屋に移るときは必ず前の部屋の鍵を掛けてから移動すること、piano はあるが音を出してはならないこと、子供の前では curtain を閉じて日光を内に入れないこと。Nicholas と Ann は、日の光を浴びると強烈な火傷を起こしてしまう特異体質なのだと Grace は説明する。使用人達が住み込みで働き始めてから数日後、Anne は家の中に誰かがいると言い出す。彼女が Victor と呼ぶその存在は、ここが自分の家だと主張し、あちこち走り回ったり、Anne らの前で curtain を開けたりするらしい。子供の妄想と一蹴し取り合わない Grace だったが、自身もその足音を聞き、誰もいない piano 室から流麗な旋律が流れ出すに及び、使用人らに命じてその何者かを捜し出そうとするが……。
まぁ前々からあれっぽいという評判は聞いていたんですが、幽霊譚の仕掛けとしては確かにその通りでしたな。とはいえ趣向も話のまとめ方もあれとは異なるので、これはこれで楽しめる作品ではありました。
全編を覆う gothic な雰囲気が良いですな。古い洋館に antique な調度で如何にも何か出てきそう。hysteric な女主人 Grace は事あるごとに神への祈りを捧げ、子供のおしおきに聖書暗唱させるという昔ながらの教育ママ。使用人も三人抱えているものの、一癖ありそうな人物ばかりで怪しさ充分。Grace もその怪しさを嗅ぎ付けたのか、Mrs. Mills が用意した偏頭痛止めの薬も飲まずに捨てる始末で、hysteria にも拍車がかかるってもんです。お祓いのために神父を呼んでこようとしてみれば濃い霧に阻まれ、ばったり出会った人物が夫の Charles (Christopher Eccleston) だった、なんて御都合主義的な展開も、観終わってみれば妙に納得なのですよ。そして Grace の hysteria が極まると、我が子を守らねばという強迫観念が度を越えて、何者かに憑依された Anne を救うべく化け物の首を絞めたつもりが愛娘を絞め殺しかけていたという……。この映画、全編 Grace の hysteria 映画でとにかく五月蝿くて重苦しいんですが、そういう Grace の役回りを熱演する Nicole Kidman は良い味出してました。美しいというより恐いっす。
この映画の難点といえば、仕立てが上手いのにお話はただのびっくり譚になってることですかね。自分の行いを認めた Grace は親子の関係修復して、そのまま屋敷に留まるんかい。使用人の皆さんは正体ばれてもやっぱり使用人やっとるんかい。じゃあ今までの積み上げは一体何だったんだ……? まぁ Grace の hysteria が治ったぜ、これで万々歳だぜ、という落ちでも良いといえば良いわけですが、その視点から観るとあれには及ばぬ出来と言わざるを得ませんな。怪異に恐れ怯える話として解釈しようとしても、Grace の hysteria 疑惑を増長させる観せ方なので恐さも半減です。怪異が Grace 一人のときに起こるってのは多分狙ってやってるんでしょうが、如何せんその流れで引っ張りすぎた感はあります。そんなこんなで、human drama としても horror としても半端な出来で、びっくり譚という表現が一番似つかわしいですな。一度観れば充分です。
Anne と Nicholas が日に当たって花火のように燃え散ると面白いなぁ、伝説の映画になるよなぁ、と一瞬だけ思いました……。
何か最近再結成したそうですよ、Cream。ええ歳こいた爺様方が何やってるんだか、と言ってはいけない。爺になっても多分はっちゃけた演奏をしてくれることでしょう。Eric Clapton、Jack Bruce、Ginger Baker の trio band、Cream の 1967 年発表 2nd album。
昔の小生は hard rock と言えば classical なものと思っていたわけですが、この歳になって blues を根っこにもつ rock band が耳に馴染むようになってきたようです。って、昔から Allmans やら Gov't Mule やらは好きこのんで聴いてたりもしますが。Cream も真面目に聴くのはこれが初めてですが、真っ当な blues 解釈ではなくて、heavy な音圧、タメの効いた riff、そして三者三様の interplay と、やはりどこか歪な音で、その歪さにどんどんのめり込まされる。計算よりも伝統よりもがむしゃらに自分達の音を追い求められる、そういう時代だったんですなぁ。tr.2 "Sunshine of Your Love" は名曲。でも vocal はへなちょこだぜい。
Booker Little (tp) の最後の leader album、1961 年録音。
23 歳で亡くなった Booker Little ですが、この人の演奏に若々しさを求めてはいかんです。即興のようでありながら計算尽くのようでもあるこの tone、Clifford Brown が free に色目を使ったらこんな音になるか、と思わせるような演奏です。
Booker Little の盤と言えば Eric Dolphy との一連の collaboration が有名で、60 年代初頭にして超絶爆裂な spiritual jazz を展開する Five Spot Live 盤なんてのもありますので、どうも Little の leader album では好敵手に恵まれないような印象がありますなぁ。とはいえ、良い album には違いないです。
北欧 jazz と言えばこの人、と言いたいところですが知名度今一つで Keith Jarrett の真似しいなどと不当に評価されがちですが小生は敬愛してやまぬ Bobo Stenson (p) さんであります。1987 年録音、原盤 Dragon Records ですが小生保有は DIW の reissue 盤。Anders Jormin (b)、Rune Carlsson (ds) との trio 作品。
Bobo Stenson と言えば ECM 盤の "Underwear" や "Reflections" の方が有名なようにも思えますが、どちらかというと抽象的で free 寄りの ECM 諸作に比べると、他作曲家の曲を多く取り上げたこの album は聴きやすいながらも Bobo Stenson らしい清洌な touch が光る名盤に仕上ってます。John Coltrane 作の tr.7 "Satellite" や Ornette Coleman 作の tr.9 "Ramblin'" も、泥々しさから遠く離れた透明感に溢れていて流石の一言。勿論、表題作でもある Bill Evans 作 tr.3 "Very Early"、Vernon Duke 作の standard である tr.4 "Autumn in New York" も型にはまらない和音構成を散りばめつつ美しい展開でまとめてます。Anders Jormin の bass、Rune Carlson の drums も、往年の Evans trio を彷彿とさせる interplay を繰り広げていて、いやこりゃ掘り出し物、良い買い物ですよ。
tr.6 "Pavane" は Gabriel Faure の classics が原曲ですが、物の見事に europian jazz と化しております。懐が深くて嫌味がない。見事。
John Zorn's Masada、1 枚目。1994 年録音。
10 枚続いた正規 Masada の 1 発目だけあって、演奏、楽曲ともに充実してます。自らの roots を問い直した Zorn が、自身の idiom である jewish music と jazz を徹底的に追求した album で、まぁ小生は John Zorn (as) の生 jazz ってだけでも興奮醒めやらにゅうにゅうな感じではあるのですが、Dave Douglas (tp)、Greg Cohen (b)、Joey Baron (ds) という猛者達による隙のない ensemble がまた凄い。1 作目にして全てを為してしまったかのような完成度で、正に Masada の顔役 album ですな。小生も聴く機会が一番多い album と思います。
John Schlesinger 監督作品、1976 年。
Babe (Dustin Hoffman) は毎日の running を欠かさない大学生、いずれは full marathon に出場したいと思っている。一方で彼は、幼い頃に不審な自殺で世を去った父親のことを知るべく、父の生きた時代を論文に仕立てようとしていた。Babe は図書館で見掛けた美女 Elsa Opel (Marthe Keller) を口説き落とし、二人は良い仲になる。その頃、Babe の兄 Doc (Roy Scheider) は何者かに命を狙われていると知り、Babe の元へとやってくる。Doc は支局とのみ称される政府の裏機関に属しているが、Babe には自分を石油を扱う business man と思わせていた。Babe が Elsa を Doc と引き合わせたとき、Doc は彼女が身分を偽って Babe に接近した工作員と見抜くが、Babe はそれを信じない。夜、Doc は一人である男と会見する。その男は Nazi 残党の Dr. Christian Szell (Laurence Olivier) で、Doc は彼の為に運び屋の仕事をしていたのだ。しかし Szell は Doc を信用せず、隙を突いて Doc を隠し knife で貫く。命からがら Babe の家に辿り着いた Doc だが、Babe の腕の中で言葉もなく息絶える。悲しみに暮れる Babe だが、Doc が Babe に何か吹き込んだかも知れないと疑った Szell は、Babe の元にも手下を送り込む……。
攻殻 (漫画の方) の中でバトーが「歯医者」という拷問をちらつかせて相手をびびらせる場面がありますが、あれの元ネタってこれですかね。dentist たる Szell が道具の手入れしながら「安全かね? 安全かね?」と拘束された Babe に問いかける場面はもうそれだけで怖い。有名だそうですよ、この歯医者の場面って。
しかし怖さを助長するような仕掛けはこの映画全体に巡らされてますな。はっきり見えないが気配で怖さを伝えるとか、意味ありげな仕草や描写から次の展開を思わず想像して怖がらせたり。映画前半で Doc が遭遇する事件はその辺の怪しさ全開で、乳母車の中の赤ちゃん人形とか、物乞いの鳴らすポコポコとか、暗闇の中からポーンと出てくる succer ball とか、訳解かんなくて最高です。Babe がとっ捕まってからはその辺の意味深な場面が無くなってきますが、その分、Babe が何時の間にか陰謀に巻き込まれて自分の信じていた世界がどんどん崩壊していく様が描かれていて、これはこれでええ感じです。Doc とは支局の同僚だった Peter Janeway (William Devane)、おいしい役回りでしたなぁ。でもって Elsa はやっぱりという感じだし。うんうん、こういう展開は大好きですよ。脚本の William Goldman は "Maverick" や "The Ghost and The Darkness" も書いてる人で、小生とは相性が良いようです。
とはいえ、観せ方にこだわりすぎたからか話は解かり難いし、Dustin Hoffman は若くてもおっさんな佇いなのでいまいち緊迫感に欠けるんだよな。しかし Laurence Olivier の熱演と Roy Scheider の鍛え上げた肉体が拝めるので中々の良作と言っておきましょうってそういう落ちでいいのか自分。