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痙攣するような Drum 'n' Bass と、箱庭の ambient な音響空間とが同居する、Aphex Twin の 2001 年作。
Aphex Twin の個性とも言える、cheap な音はここでも健在。Drum 'n' Bass の先読み不能性は更に過激になっているが、その歩みは Squarepusher の様に前進を繰り返すことで歪になっていったのとは対照的に、前作 "Richard D. James album" から立脚点を殆ど変えていないかのように見える。本作では piano の音がよく聞こえてくることが特徴と言えるけれど、その佇まいは前作とほとんど同じだ。
けれども、より私的に、内側へ内側へと籠もっていくような音になっているなぁと思ったりもする。音楽を拠り所として生きることの孤独な心情が吐露されているような。だから、この album は techno 的には機能しない。今の Richard の有り様を、そのまま素直に表現したような album だ。
John Zorn 率いる Masada の 5 枚目。
相変わらず quality が高い演奏で、聞き易い melody とそれをあっという間に覆す瞬間の爆発力は、1 枚目の頃から変わっていない。でも初期に比べると、沈み込むような内省的な雰囲気の曲が多いかな。
ユダヤの民族音楽を jazz の語法で展開した……と、簡単に片づけると火傷する。かといって、free jazz 的な側面だけを取り出しても充分ではない。form に縛られた jazz という枠の中で、その潜在的な可能性をどこまで引き出せるか、という点がこの group の焦点になっているような気がする。故に、free な展開を見せる瞬間でさえ、楽曲の流れの中から外れていくような不安定さは微塵も感じさせないのである。そこが物足りないところでもあるのだけれど、Zorn の完全即興な album は他にあるからいいじゃないの、と思いましょう。
小生の Masada 国内盤の旅も、あと二枚を残すのみとなってしまったなぁ。さぁ、ちゃんと揃えることができるか!?(笑)
Iris 0.10、Nebulus 0.2.0、Titlefader 0.4.7、Goom 1.8.1などを download。油断してるとぽこぽこ増えてた……。
いかん、久々に聴いたがこの tension の高さは尋常ではない。
孤高の saxophonist、Peter Brotzmann に、灰野敬二と羽野昌二が絡む、完全即興の live 盤。この面子で爆発しなきゃ嘘でしょうというのは確かだとしても、灰野が思わず寡黙になってしまうほどの Brotzmann と羽野の interplay は聞き物です。
三つ巴の大乱戦という様相を呈することは稀な展開で、力場が三つの焦点を緩やかに移動していくような感触がある。free improvisation と言いつつ、三本の糸はなめらかに流れに沿っているのだ。Brotzmann が爆走している間に灰野が冗長な drone を爪弾き、灰野が弦をかき鳴らしている背後で羽野が tribal な beat を keep していたりする。それは、一見不安定ながらも、ぎりぎりの線で groove を生み出しているようだ。
ちなみに最後の encore 曲は、三人とも火花散らしてます。きっちりと entertainment してくれるなぁ。
Music for 23 o'clock と言った方が格好いい? というのはさておき。
てゆか何で「23 時の音楽」なのでせう? ドラマの放送が 23 時だったりしたのだろうか。ちと安直すぎ? 一日が終わる 1 時間前という設定での楽曲なのかも。オトナの private time て感じで。
菅野よう子が音楽担当した、NHK ドラマ「真夜中は別の顔」の soundtrack。小生は菅野よう子というと「才気走っていて album はとっちらかってばかり」という印象(笑)なのだけれど、この album は結構まとまりがあって聞き易いです。南国風味で涼しげな曲が並んでいるし。D'n'B に乗せて funky な bass が押さえ気味に跳ねる tr.4 "Pepper strech"、Horn が speedy に疾走する tr.1 "Two things" とかは菅野お得意の thriller 向け楽曲。
feature されている歌姫は坂本真綾。菅野とのコンビは有名だけれど、solo 作では顕著な idle 志向の歌い方はこの album では皆無。全 14 曲中 vocal track は 6 曲、と、album の半数近くで坂本の歌が feature されているが、殆どが声を音響として使っているような趣。決して坂本の歌が引っ込んでいるようには聞こえないので、これは意図的な音作りなのだろう。23 時にもなって朝駆けの元気溌剌な声もなかろう、という訳か。
guitar で保刈久明も参加。ありゃりゃ、こんなところにもいらっしゃったのですか。"Kokoro library" の soundtrack、新居昭乃の album と続いているので、いつの間にかお馴染みの人になってしまっているなぁ。
ちなみに drama の方は殆ど見てません(笑)。映像は anime か movie でないと続かない体質になってしまってる様子なので……。
それにしても何という創作意欲であろうか。今年に入って sublime の "Sound of Sky" に続く full album 二枚目。昨年度も skintone から "Grinning Cat" と "Will"、一昨年の 2000 年には sublime からの "Zero" と skintone からの "Sakura" を出してたなぁ。三年に一作出れば御の字な昨今の音楽業界で、こんなに放出しまくって良いのでしょうか。しかもいずれも Susumu Yokota 印の押された高 quality な album ばかり。techno 界の星新一とでも言うべきか。
Yokota の作品には何種類かの傾向があって、大別すると sublime 盤は結構 house 寄りで、skintone では "Sakura" のような beatless な ambient ものと、"Grinning Cat" のような映像的な音、そして "Will" のような tribal 〜 deep house 路線があると思う(*1)。
"Boy and Tree" は、"Grinning Cat" の続編とでも言うべき作品。小生はこのような作品にこそ Susumu Yokota の originality を感じます。決して明るくも雄弁でもないけれど、深く沈み込むような ambience の中で、仄かに光り輝くものの軌跡を追いかけているような感触がある。どこか遠い記憶を呼び起こすような淡い色彩に包まれているのは、民族音楽的な意匠が凝らされているからか。
一聴して忽ち世界が一変してしまうような、そういう音楽ではない。するりと耳元をすり抜けて、微かな余韻を残して虚空に散ってゆくような。しかし何度も聞き返すと、濃い霧の中に漂う媚薬に酔わされることになる。長く聴ける一枚です。お買い得です。
最後の曲は Reich の "Different Trains" を連想。
あからさまに Detroit follower してる、Keith Tucker の Optic Nerve 名義作。これが first album で、過去 10 年間で release した track の compile らしい。
tr.5 "Premonition" なんて 1993 年の作品で、そこはかとなく古くてしかも良い感じだったりする。この track が album にぴったりとはまっているということは、10 年間で作風が変わってないとゆーことの証左。これも個性と言っちゃっていいですか?
うーむ、取り立てて凄い album では無いのだけれど、やっぱり detroit techno らしいキレイなシンセ音が疲れた心に染みるんですわ。tr.1 "Virtual World" とか tr.8 "Shade of Gray (Dream Mix)" とか、hard minimal track の後に流れてきたら泣いちゃうかもよ、って曲ばかりです。
おっと、どうも "Premonition" と "Shades of Gray" は、この album のために rework してるらしい。なーんだ、道理で統一感があるわけだ(笑)。
title もズバリな tr.9 "Detroit Night Drive" から、Jeff Mills の track を彷彿とさせる stoic な tr.10 "Deep" へ。soulful だよなー。
この album が世に出たのは 1998 年の 6 月。それから 4 年が経って、Blankey も既に解散してしまっている。時の流れ、か。そういえばこの album が出た頃って、はみぃは金も職もなくて糊口を凌ぐのに精一杯だったなぁ……などと昔を思い出したりして。んで、その時に買いそびれていた CD を、本日ようやく購入した次第。
久々に聴いたベンジーの声は、相変わらず真っ直ぐに耳に入ってきて、keyboard 打つ指を止めてしまう。風評で聞いたコンピュータの導入も、それほど気にならない。思っていた通りの Blankey Jet City の音。初期の頃のような、壊れかけの車で全力疾走して今にも分解してしまいそうな勢いと脆さは、ここにはない。その代わり、タフに強かに時代を生き抜いてきた 3 人の、熟成した Rock Spirits に溢れている。
物足りなさを感じないと言えば嘘になるけれど、静かな曲も激しい曲も、自然な流れの中で演奏できるというのは凄いことである。そして、そんな状態でずっといられる 3 人ではないだろうということも、悲しくも感じられる。安定しているが故に、いつ終わってもおかしくないような緊張感。そんな気分を味あわせてくれるような音は、そう滅多にあるもんじゃない。
last track の "ハツカネズミ" が、instrument のみで妙に泣けるなぁ……。
Jeff Mills 直系の硬派な minimal techno 道を追求する James Ruskin、2000 年の Tresor 作。
小生は初めて聴いたのだけれど、ambient な立ち上がりの tr.1 "Before The Calling" は序曲としても、それ以降の minimal track の応酬には正直腰が抜けます。Surgeon 的な力押しや、Oliver Ho 的な土着性とはまた一味違う、微妙な感触がある。
何と言っていいのか、mechanical な音の狭間で soul が蠢いている、とでも表現しようか。音の感触自体はひんやりとして冷たいのだが、Jeff Mills の作品のように果てしない螺旋を描くわけではなく、絶妙な break や voice の上物によって、聴いていて高揚するような仕掛けが張り巡らされている。上手い人です。
club と airport を繋ぐもの、と言うと "Brian Eno / Music for Airports" ですか(違う)。Eno の ambient は、空港のロビーで空気に交わりつつ旅への期待と倦怠をゆるゆると味わう類のものだけれど、この新宿地下で鼓動する airport では露骨な旅風情を描きます。
何より賑やか。Techno と言うよりは disco な mood。えぇまぁ聴いているうちは楽しくて良いのですよ。しかし気が付けば海岸でぐったりな感じになってしまうんですわ。音の密度の高さ、そして悔しいことにインチキと一蹴できない高級感が空の旅の豪華さを見事に演出しておる。だいたい疲れ切った頃にノスタルジックな tr.13 "My Love is Like a Red, Red Rose" が流れてくるってのは反則も反則。くそう、してやられたり。
んでもんでも、毎日聴くような album ではないんです。だいたい空の旅でゴージャスで高級で、ってのはたまにあるからそう思うのであって、毎日がそんなでは映画「ファイトクラブ」の彼みたいに根っこの方で狂気が渦巻いてしまうのである。忘れた頃に聴きましょう。そして項垂れましょう。「旅はいいねぇ」とかなんとか、ありふれた台詞でも口にしながら、ね。