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浅井健一 (vo, g)、水政創史郎 (g)、福士久美子 (key)、スティーヴ衛藤 (perc) による 1996 年作。
Blankey Jet City の活動を一時休止して各自 solo project を進めていた頃の Benzie の album であります。BJC の 3 piece の枠組みから外れ、全体的に acoustic で開放的な音像でまとめられたこの album は、BJC の rockin' な緊張感とはまた別の意味での危うさに満ちた作品となっております。
road movie の劇中歌のような映像喚起力のある nostalgic な melody、遠くに投げかけるような Benzie の歌、若干調子外れな backing の演奏と、全ての vector が壊れかけの硝子細工の上で成り立っているような、そういう音。Carpenters の曲を Doors が演ってるような、といえば若干の nuance は伝わるでしょうか。album 発表当時は随分長閑な album と思ったものですが、今にして聴き直してみればこの長閑さは崖っぷちと背中合わせと思い知らされるわけです。American Newcinema の、終末の悲劇へ突き進みつつ展開はむしろあっけからんと爽やかに進んでいく、その面影を湛えている風情もあって。
全 10 曲捨て曲なしの展開。Benzie こと浅井健一の世界観を充分味わえる一枚であります。
めりけんの southern rock band、The Black Crowes の 1996 年作。
相変わらずの濃い口な黒鴉的南部魂炸裂な album です。初期黒鴉は 1st で hard rock と southern rock の狭間を突き、2nd で soulful な魂爆発させつつ pop に昇華して栄達の極みに至るの図を成したと思ってますが、音楽性の成長という点ではその時点でもう仕上がってしまい、以降は快楽原則に則って黒い groove を延々と垂れ流すという如何にもぐーたらな southern rock band の典型みたいな展開を続けてったという印象があります。これを円熟と取るかまんねりと取るかは人によって評価分かれるでしょうが小生のようなおっさんには正当進化じゃないのと思ったりもするわけで。元々が目新しさで売るような band ではないので、こういう長距離とらっくの運ちゃん御用達な人達は自分の音鳴らしてりゃそれだけで満足できてしまうのです。
さてこの 4 枚目。南部寄りのよれよれな rhythm 隊は相変わらずですが、blues feel よりも soul 寄りな横揺れ groove に一層 shift してったような印象で、どの曲でもサビに chorus を被せてきて rock な album というよか gospell な仕立てがこの頃の黒鴉な風情を醸し出しております。single cut された tr.5 "Blackberry" は rockin' な風情がこの album では若干異色ですが、一応当時は若い band だったのでこういう趣向もありかと。しかし全体的には brass 隊やら chorus 隊やらでごてごてに音圧高めつつ Chris Robinson の調子外れな vocal で押し通す、いつもの黒鴉 sound であります。いやはや安定、重厚。佳作であります。
detroit techno な人、DJ 3000 の 2013 年作。
前作 "Galactic Caravan" から 4 年振りの album ですが、本人名義の "Invisible Moods" なんてのもありましたから、大体二年置きに constant に album 作ってる人であります。
しっかし相変わらず既視感ぶりばりな東欧めろ風味 detroit techno です。いや確かに detroit techno な風情はあります、白玉 synth にねーちゃん chorus に四つ打ちに。しかし何とも優等生な仕立てで、めろの印象も希薄で、定時報告以上の面白さはないわけで。ある意味期待通りな一枚ですが detroit techno 的には平凡な一枚と言わざるを得ません。これからが正念場ですぞ。
Steven Spielberg 監督作品、1987 年。邦題「太陽の帝国」。
1941 年上海。英国人ながら上海租界で生まれ育った少年 Jim 'Jamie' Graham (Christian Bale) は何不自由ない生活を送っていたが、日本軍の中国侵攻により家族共々疎開を余儀なくされるがその途中で家族と逸れてしまう。一人で彷徨っているところを米国人の Basie (John Malkovich) に拾われるがドジ踏んで Basie 共々日本軍の収容所に送られる。お坊ちゃん育ちだった Jamie は収容所で生き残るべく育っていくが……。
J. G. Ballard の自叙伝を元にした映画。Spielberg はたまに変な映画を撮りますがこの映画もそういう一本で、entertainment 色はあまり無くて documentary 色が強い一編。しかし妙に味わい深い話でもありまして、小生もこれ観るのは二回目か三回目か。"Dark Knight" で Bruce Wayne 役の Christian Bale が本作の子役主人公とは時の流れは恐ろしい。
お話としては金持ちのボンボンが戦争で無一文になって世慣れた知り合いとくっついて裏切られたr日本人の少年と心通じたり零戦に触れて空への憧れを強めたり年配の女性に浴場したりと、戦時中ながら青春真っ盛りな Jamie 少年の冒険譚であります。冒険しながらも食い物に卑しくなったり人のもの盗むのに躊躇なくなったりと、人間極限に至れば欲望に忠実になるものですなぁ。その意味では Polanski 監督の "The Pianist" に似た主張も感じますが、Polanski 監督作ほど汚さを感じない点が Spoelberg 作と言うべきか。戦場の Huckleberry Finn 的な映画でありました。
日本の rock band、ゆら帝の 1999 年作。
real time ではゆら帝との接点は殆どない小生で、ゆら帝 live の DVD パケを見てあぁそういや解散したんだっけかと思ったのが夜勤明けで名古屋塔盤屋を徘徊していた頃の小生の思い出であります。いやはや名古屋とか岡崎とかきつかったねもう思い出したくもないよでも腐れ縁というかあれで経験値ついてるやろと上から思われてるので相変わらずそれ系のお仕事頂いてるわけですが。まぁ仕方ないね、がらけーもすまほんも今では儲かる仕事ではないんで。そんな話はどうでも良い? それもそうですな。
ゆら帝と言えば psychedelic rock、な印象が強烈になったのは個人的にはこの album からで、major 初作の "3x3x3" がまだ若人の初期衝動 rock だったのに比べてこの 2nd は middle tempo でへろへろ路線な pavement 系ゆるふわ rock で、major 作のくせに indies 作ばりのユルさを提示しまくっておる album となっております。こういうふてぶてしさというか商業性度外視でオレオレ世界に邁進する姿勢がゆら帝を rock band 足らしめる something だよなぁと感心することしきり。白眉はやはり last track の tr.12 "ミーのカー" の 25 分の優越。tr.2 "ズックにロック" や、無常観ぶりばりな tr.5 "ボーンズ" の投げやり感も愛おしい。ゆら帝の rock band 色が色濃く出た album であります。
めりけんの rock band、Mountain の 1974 年作。Leslie West (vo, g)、Felix Pappalardi (vo, b, key)、David Perry (g)、Corky Laing (ds, perc) の布陣による album であります。
めりけん hard と blues rock の狭間で悶える Mountain の図でありますが野太いめりけん hard rock 節は健在で、これがあれば結局 Mountain やなぁと。tr.7 "You Better Believe It" なんて Mountain にしかでけんようなダサ riff なめりけん rock ですし。tr.8 "I Love To See You Fly" でのアコギな展開でもめりけん rock な能天気さが窺えます。つまるところこの人らは単なる爆音大好きなめりけん rocker なわけで、album 通しても実に Mountain な香りが漂うものになっております。めりけん rock ってすげーなぁ。というわけで良作。