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Gov't Mule や Allmans の guitarist として知られる、Warren Haynes の solo album。2011 年発表。
どうも solo album となると AOR 的に小洒落た blues rock 道に傾く Warren Haynes さんです。1993 年の "Tales of Ordinary Madness" の時と似たような方向性の soulful な blues rock。お姉ちゃんの backing vocal や sax も交えた band 編成に、あまり尖らない円やかな Warren の guitar や vocal が乗っかって、かなり relax した雰囲気で進んでいくオトナ rock であります。最近の Mule も初期に比べれば丸くなってますので、solo がこの路線でも特に驚いたりはしないのです。でも正直、こういう contemporary な form での blues ってあまり面白くないんですよね。聞いてる間はいい気分なものの後に残らないというか。70 年代 respect だった初期 Mule が濃すぎたってのもあるんでしょうが。
酒飲みながらゆるゆる聞くには良い album であります。それにしても Warren のしゃがれ声はいつ聴いてもええですなぁ。この人の場合、一聴荒れてるような声に聴こえるかもしれませんが意外と伸びやかだったりもして、vocalist としても優れたものがあると思います。
盲目の blues guitarist、Jeff Healey 率いる band の 1st album。1988 年発表。
1 歳のときに失明した Jeff Healey ですが、guitar を膝の上に乗せ、平置き奏法で blues するという独自の奏法で一躍話題になりました。小生は名前は以前から知ってました (というか中古盤屋でよく見かけたので) が最近になって聴き始めました。blues rock 好きなら避けては通れんと思ったもので。
この 1st album では vocal の微妙な echo や音の rough mix な感じが如何にも低予算な感じを醸し出してはいますが、演奏自体は blues harp あり chorus ありで洗練された大人向け modern blues、しかし guitar は hard rockin' で bottom 低めながら硬派な音で締めていきます。曲調は王道 blues rock 主体ながら、tr.6 "Nice Problem To Have" のような instrumental でしっとりした曲も交えたりして、芸達者振りを発揮。まぁ blues rock なんで hook の効いた曲が無いってのは確かで、album total でものっぺりした印象ではありますが、煌びやかな 80 年代の末に AOR とも mainstream rock とも迎合ぜず、洗練された blues rock な album を作り出したその手腕と姿勢は大いに結構と思っております。時代を変える音ではないが愛される音、とでも言うべき存在なんでしょう。良作。
UK の songwriter、James Blake の 1st album。2011 年発表。
post dubstep の人ということで有名な方ですが小生は dubstep 全然聴いてないので post とか言われても解りません。思うところで言わせて貰うなら、基本は叙情めろの minimal で、back track は hiphop 主体、でもって隙間が多い。きっちり煮詰めたら Portishead になっちまいそうなところで、隙間の多い音像と微妙に揺らぐ vocal で不定形世界へと listener を誘う謎音楽であります。とろにか寄り soul music、とでも言える音像ですが、何より濡れ濡れな James Blake の vocal が印象的。soul というと汗撒き散らし唾飛びまくりの熱血歌唱を連想しますが、常時半泣き歌唱もまた soul なのだよなぁと思わされるのが James Blake の歌唱法なのです。情けない男子のぼやきがとろにかと合わさって母性本能を擽る、ってのが狙いか。あまり累計のない独特の音像なので、とろにか好きで vocal おけな人は楽しめると思います。
Sonny Rollins (ts)、Tommy Flanagan (p)、Doug Watkins (b)、Max Roach (ds) による 1956 年録音作。Prestige Records から。
jazz 名盤というと必ずと言っていいほど名前が挙がる album であります。何で名盤かというと万人受けしやすいからで、特に tr.1 "St. Thomas" の軽やかで耳に馴染む melody と、男性的な野太さの中に飄々とした humor を感じさせる Sonny Rollins の tenor があれば、老若男女に聴かせてばちは当たるめぇと思ってもこれは仕方ないでしょう。jazz 名盤と一括りに言うと有象無象の魑魅魍魎まで呼び寄せかねんのですが、こと jazz の pop 部門で括れば、"Saxophone Colossus" がその top class に位置するのは間違いないところであります。
Sonny Rollins というと天才肌の野生児、との印象が小生にはあって、奇を衒わずしてしれっと常人の斜め上を行くというのがこの人の凄いところです。"St. Thomas" にしても melody の馴染み易さだけ取り出して pop だねーで終わらせてしまうのは実に勿体無い。Rollins の solo は高揚した牧師の説法にも似て、めろに沿う沿わないを考慮しなくても自然体でめろめろしくて聴き応えがある。tr.3 "Strode Rode" の単音で畳み掛ける展開の中にさえ歌心を感じさせるのが Rollins 節。後に pianoless での trio 録音を多くこなす Rollins だけあって、tenor sax だけでも充分魅せられるだけの力量を、この album からも感じ取ることができます。
確かに pop な jazz の名盤ではありますが、何度聴いてもするめな味わいで楽しめる、そういう点にもこの album が名盤と言われる所以があるのかも知れません。
John Coltrane (ts,ss)、McCoy Tyner (p)、Jimmy Garrison (b)、Elvin Jones (ds) による 1962 年の live 録音。Pablo Records から。
tr.1 "Bye Bye Blackbird" と tr.2 "Traneing In" の全 2 曲、で total 37 分近くの album。何このぷろぐれと突っ込みたくもなりますが長丁場こそ Sheets of sound の真骨頂、絶え間なく浴びせられる trane の solo に聞き惚れて時間感覚を失うのが正しい聴き方であります。と言いつつこの時期の Coltrane Quartet はこの面子ならではの魔法が掛かっており、Coltrane の solo に肉薄する Elvin Jones の drums や McCoy Tyner の piano の疾走感、ふと訪れる静寂の中で粘っこく solo を取る Jimmy Garrison の bass 等、金太郎飴的でありながらも胸を打つ展開が多い。畢竟、苦悩と調和が入り乱れる音像こそが Coltrane Quartet の持ち味であり、その満たされぬ欲望はどれほど高みに達しても極みに達することがない。ただ、小生はこの未完成さこそが jazz の本文と思っていたりもするわけで、その意味では実に jazz な album なのであります。