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「まあ」
このやりとりをきいて目を丸くしている、グインの兵士たちの前で、リンダはとうとう笑い出した。
「なんという豪華な傭兵なんでしょう! とても光栄ですわ、ケイロニア王グイン陛下! こんな豪華な傭兵を雇っている女なんて、中原にほかにひとりもいないに違いないわ」(page 21)
グインがリンダ護衛を申し出てリンダ姉ちゃん図に乗っております。早川文庫版で読了。
魔都クリスタルを脱したグインとリンダはケイロニア軍に合流、一路ナリスの居るマルガへ進軍する。同じくマルガを目指すゴーラのイシュトヴァーン軍は、しかしマルガのカレニア政府から合流要請が貰えず、進軍を躊躇う。カレニア政府はゴーラと手を組むことで中原の信用を失うのを恐れているらしい。腹心マルコをマルガへ使いに出してイシュトは酒を飲むが、良い気分なところに草原の民スカールの軍がゴーラ軍に襲いかかる……の巻。
豹頭のおっさんはイシュトと手を組むつもりはないと一蹴、イシュトもカレニアがケイロニアと組むなら一戦交えずにはいられまいと腹を括っております。グインと戦いたいと心密かに期待するイシュトの気持ちも解らんではないですが、黒太子との一騎打ちで尻尾巻くようではグインどころの話ではないように思いますぞ。まぁ、グラチウスもヤンダルもイシュトを欲しがっておるようなので、もう一波乱ありますかな。
ガルーダ II、浅葱で 1c all。score はしょぼしょぼ。
Suzukiski 先生の新作 "Ozma" は 7/22 release とのこと。知らずに探し回った小生でありました。Rei Harakami の "暗やみの色" は 7/12、Helmet の "Monochrome" は 7/18。物欲めも。
冷蔵庫は借りている部屋に据え付けられている小さいのを使ってますが、その上部に取り付けられている冷凍庫もどきから氷がはみだして空いている空間を圧迫しつつあったのです。そこで一度電源落として氷を落とそう計画発動。
中に入れてある beer だの茶だのは一旦外に出し、使ってない布切れ掻き集めて冷蔵庫の底に敷き詰める。後は待つだけ。
2 時間も経つとでかい塊が落ちかけてきて、しかしなかなか落ちないので鋏で急所を切断して大物を除去。後は適当に片付けて任務完了。
2 年に一度はこういう作業も必要になるか。まぁ、浮草な人生ではここに何時まで居られるかは解らんのですが。
渡辺信一郎監督作品、2001 年。邦題「Cowboy Bebop 天国の扉」。
火星の賞金稼ぎスパイクらは、カップ麺ばかりの食生活にうんざりしていた。そんな時、賞金首の hacker を追っていたフェイは tanker の爆発事故を目撃する。爆発前に車から降りた黒髪の男は姿を眩まし、また事件後に付近一帯は原因不明の症状による死者が急増した。生物兵器による terrorism を警戒した政府はその犯人に高額の懸賞金を掛け、スパイクらは犯人探しに乗り出す。やがて犯人は元軍人のヴィンセントであると判明するが、ヴィンセントは世界を死滅させるための計画を立てていた……。
劇場版らしい high quality な animation で楽しめますが story は薄味。悪役に虚無的な思想観を持つ奴を持ってきても話は盛り上がらんのじゃよ。微妙に軽い乗りのネタも振ってきますが main story とは見事に噛み合わないし。
菅野よう子の音楽はよろしかったです。引出しの多さが半端じゃないですなぁ。
UK の重低音な人達、Black Sabbath の 6th album、1975 年発表。"Black Box The Complete Original Black Sabbath 1970-1978" 盤。
従来の暗い重い汗臭いの color から一転、heavy さより pop さを強調しての売れ線 hard rock を志向する Black Sabbath であります。世間では prog rock 寄りと言われておるようですがいやいやこれは真っ当な hard rock でしょう。むしろ Ozzy Osbourne の solo 作を彷彿とさせる catcy さが特徴で、従来の Sabbath な album に比べれば格段に聞きやすい。tr.3 "Symptom of the Universe" なんぞは思春期の少年少女を猿のように跳ねさせること間違い無しの疾走 hard rock でやたらかっちょええし。
しかし Sabbath を Sabbath 足らしめる doomy な雰囲気は大分後退しておるので、普通の大衆食堂的 hard rock になってしまっておるとも言えるでしょう。まぁ、小生としては嫌いではないのですが。
仕事終えてへろへろで自宅に戻り radio 付けたらば浅井健一が喋っておって吃驚だわさ。ぶっきらぼうで場慣れしてない一人 talk でしたがそれがまたベンジーらしくて良好。やっぱりな感じの Stray Cats、ちと意外なところで Portishead や Tricky といった dark electro も選曲しておりました。BJC 解散後は追っかけてませんが元気そうで何よりです。という流れで BJC の 1992 年 live 盤を聴いております。
小生にとって BJC の入口になったのがこの album。rental で借りて metal tape に dubbing して tape が伸びきるまで散々聴きましたとも。商業 metal 漬けになっていた小生のどたまを rock な一撃で粉砕した個人的記念碑な album なのです。あれから 10 年以上経過して live album もそこそこ聴いてきましたがこの album を越える衝撃にはついぞ巡り会えておりませぬ。まぁ、思春期の強力な刷りこみによるものなのかも知れませんが。
それにしてもこの頃の BJC は、直情的な歌詞と荒削りな演奏で listener を暴れさせずにはおかない勢いがありますなぁ。hairpin curve に全速力で突っ込んでうきょええと絶叫爆笑しながら次の瞬間には人の背中をぷちっと刺してしまうような痛快かつ不穏な気配の漂う不良音楽。tr.1 "絶望という名の地下鉄" から tr.14 "Baby Baby" まで一気に疾走し現場に居たら酸欠間違いなしの全 14 曲、捨て曲無しの名盤であります。
King Crimson の 1970 年発表 album。
助走後の tr.2 "Pictures of a City including 42nd at Treadmill" は宮殿の "21st Century Schizoid Man" の発展型みたいな曲で、聴いてる間は随分長い曲じゃのぅ 10 分くらい演っておるのではないかと思って時計を観たらばまだ 4 分しか経ってなかったという密度の濃い track なのでした。後に続く曲群も 1st album の傑作 "In The Court of The Crimson King" の手法でもう一枚作りました的風情が漂ってますが、流石に 1st 程の衝撃は無く、その分手慣れた堅実な作りになってます。
Crimson は Yes 程に dramatic でもなく Floyd 程に psychedelic でもない band でありますが、他の prog rock 勢がべたべたの叙情派大作へ流れていく中で唯一 mechanical な approach へと突き進んでいった band なのです。即ち free jazz 的な展開でも計算尽くの ensemble を崩さず、緩い tempo で墓標の寂寥感を醸し出しても外野からの醒めた視線を内包している、というのが Crimson な stance であります。1st では情が過度に勝っている部分もありましたが、この 2nd では情感の control に一層の研きが掛かり、後に華開く理詰め prog rock の萌芽が伺える作品に仕上っております。その後の Crimson を知る者から見れば過渡期の 1 枚と言えるでしょうが、これはこれで傑作。
TV animation "Zegapain" の Original Soundtracks、一枚め。音楽担当は大塚彩子。
今期最強の泣き anime になりつつある Zegapain であります。希望を持たせつつ非情にそれを握り潰していく様が痛快ですな。このまま悲劇街道を突き進んで欲しいものです。
仮想世界や終末世界のお話ですが、音の方はぴこぴこよりは生楽器多用で、めろ立ちした曲が主体です。心象描画している風な弦の揺らぎが良いですなぁ。劇伴としては上質。
少時の閑話があってから、劉備は、態度をあらため、
「先生に、折入ってのお願いをいたします」
と、申し出た。
「なんの依頼かな?」
「昨日、楼桑村は、黄賊の侵すところとなり、青壮年者は悉く拉致され、老幼はのこらずあえない最期をとげました」
「…………」
廬植は、暗然と、眉宇をひそめた。
「それがし劉備は、多年の先生の教えを生かして、起つべき秋を迎えた、とおのれに申しきかせました」(page 39)
集英社文庫版で読了。全六巻の一冊め。
柴錬で三国志とくりゃあ一騎打ち連打に違いないと思ってましたが結構普通の歴史物になってました。黄巾賊の乱、董卓の横暴と死、孫堅も死んで孫策が小覇王と呼ばれ、曹操は有能な士を集め、劉備は方々転々、といった感じ。
張飛の書き方に力入ってるのが柴錬らしいのぅ。
Jim Jarmusch 監督作品、1986 年。
売春婦のヒモである Jack (John Lurie) は大言壮語癖のあるちんぴら。でぶの同業者 Gig (Rockets Redglare) から上質のタマを譲られたので、品の味見をするべく hotel の部屋に入ったところを警察に捕まる。DJ の Zack (Tom Waits) は pride が高いため地元の radio 局から仕事を干され、女にも逃げられる。顔見知りから車を転がすだけで金を貰える話を持ち掛けられ、ほいほい引き受けるが、車を転がしている間に警察に捕まり、車の trunk から死体が出てきた事によりお縄となる。Zack と Jack は刑務所で同じ部屋に入れられ、二人はお互い反りが合わないことを知る。そこに片言英語を操る italian の Roberto (Roberto Benigni) も入れられる。ちぐはぐながらも三人の共同生活が続いたが、Roberto はあるとき脱獄の手掛かりを掴む……。
何とも言えぬ脱力映画ですなぁ。刑務所の獄中場面だけで映画終わるかと思ったぞよ。まぁ牢を出ても Zack と Jack が喧嘩しっぱなしなのは変わらんのですが、Roberto が微妙に接着剤な役回りなので離れるに離れられん、というところが面白い。でもって個々の場面がさりげなく絵になる撮り方で、monochrome の映像、John Lurie のへなへな音楽ともあいまってやたら印象的なのです。story は出来の悪い Wim Wenders 風 road movie な装いですが、そのすかすかな隙間の中に石塊とも宝石とも付かぬ輝きを封じている。小狡いぜ Jim Jarmusch。
Tom Waits は存在感充分。John Lurie は The Lounge Lizards 続けておるのかねぇ。
Edward Zwick 監督作品、1998 年。邦題「マーシャル・ロー」。
New York にて、FBI の対諜報部長 Anthony 'Hub' Hubbard (Denzel Washington) は bus に爆弾が仕掛けられたとの報告を受けて現場に急行するが、結局爆弾は無く、ただの悪戯に過ぎなかった。しかし事後調査には CIA の Elise Kraft (Annette Bening) が首を突っ込んでくる。その後、再び busjacking の知らせがあり、爆弾を抱えて bus に立て籠った犯人に Hub は交渉を試みるが、bus は爆発し多数の死傷者が出る。Arab 系 terrorist の犯行と目星を付けた Hub は、情報を出し渋る Elise から協力を引き出し、犯人の一味を殲滅する。だがその後、再び爆弾事件が起こる。犯人 group の要求は先日米軍が確保した Islam の指導者を開放することだった。FBI 本部までが爆破されるに及び、大統領は NY に martial law、即ち戒厳令を敷く。William Devereaux 将軍 (Bruce Willis) は NY に舞台を展開し、arabian の一斉検挙に乗り出す。戦場さながらの様相を呈する Brooklyn にあって、Hub は terrorist を検挙して Devereaux 将軍の横暴を止めるべく奔走する……。
期待してなかった割には面白い作品でした。国内の治安第一に行動する FBI と、国外の情報源たる arab 系 spy を手放したくないために FBI と敵対する CIA との確執や、戒厳令下で arabian 狩りを敢行し重要参考人への拷問も辞さない軍部の独走もあって、個々の組織の思惑が入り乱れている様が良く描けてました。とはいえそれが組織としての動きというよりは、FBI の Hub、CIA の Elise、軍の Devereaux と、それぞれの個人の信念にべったり貼り付いた形で表現されてますので、話としてはあまり広がってない感もあります。
まぁ、CIA が軍事教育した手口により NY が terrorism に侵されていることで Elise が自責に苦しむ面とか、arabian の FBI 調査員 Frank Haddad (Tony Shalhoub) が家族を収監されて米国に幻滅するところなんかは、国の思惑に振り回される人間の苦悩が伝わってくるので、状況に飲まれる個人を描くというのがこの映画の視点だったのかも知れませんが……うーむ、しかし最後の Hub と Devereaux の対決を見せ場にしてしまったらば arab の terrorism は刺身のつまかよと言いたくもなるのぅ。
良い素材を揃えたものの上手く調理しきれてない映画、という印象。軍部がしゃしゃり出てくるまでは良かったんですけどねぇ。
あ、radioparadise で "For a Few Dollars More" の theme が流れておったのぅ。rock な選曲の中にこういうの挟まれると何だか格好良いな。
UK の重低音な人達、Black Sabbath の 7th album、1976 年発表。"Black Box The Complete Original Black Sabbath 1970-1978" 盤。
かつて Sabbath を「大いなる平凡」と呼んだのは誰あろう小生ですが (爆)、前作 "Sabotage" でも着実に表れていた Sabbath 自身による Sabbath 離れが一層顕在化した album であります。暗い恐い気味悪いの 3K 即ち中段蹴りで悶絶な Black Sabbath 臭はどんどん払拭され、heavy ではあるものの pop で明るい hard rock と化しております。tr.3 "It's Alright" は Beatles 風味な哀愁 pops、tr.4 "Gipsy" は pop 期の Yes みたいな大味 pops。嗚呼 Sabbath よ何処へ行く、と当時若かった人達の声が聞こえて来そうであります。
とはいえこういう音の方が受け入れやすい人も多かろうというのは予想が付くことで、恐らく初期 Sabbath を至上とする Sabbath 原理主義者と、それより守備範囲の広い一般的な metal 愛好家との分岐点になるのはこの album くらいからではなかろうか。その意味では様式美な metal を愛する人達や Ozzy の solo から Sabbath へ遡行しようとする人達への入口としては丁度良い album かも知れぬ。それが逆に小生には今一つのめり込めない要因にもなってますが。
tr.8 "Dirty Women" の Ozzy の声入らないところは大好きです。すまんのぅ Ozzy。