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新作 "Play With The Changes" 発売記念ということで 4hero 聴き直しです。これは 1992 年発表の 2nd album、小生の持っているのは sublime から出た reissue 盤です。
この頃の 4hero は drum 'n' bass の pioneer として頭角を現していた時期で、近年の作品と比べれば d'n'b 色が断然強い album となっております。で、白球の synth strings が通奏低音よろしく連綿と流れていく、というのが主な流れ。sax や vocal も果敢に取り入れ、colorful で elegant な音像を提示する辺り、既に soul や jazz への歩み寄りが伺えます。白眉はやはり album の OP と ED を占める名曲 "Universal Love" か。detroit techno の影響はこの時期の 4hero にも色濃く現れていますが、そこから既に一歩も二歩も進んで 4hero 流 UK soul へ踏み出そうとしている点に、この人達が一過性の d'n'b artist として終わらなかった要因があるんでしょうな。まだ荒削りな部分もありますが、この頃から 4hero は 4hero だよなぁと思わされるのであります。
そういや 4hero って、結成当初は 4 人組だったから 4hero と名乗ったとの風説がありますが、その割には単数形なんですよね。不思議ですねぇ。
「うるさい」
グラチウスの手首から先がいきなり、細いしなやかなオオカミ鞭に変化して、ぴしりとユリウスのなまっちろいからだをひっぱたいた。
「わあっ」
ユリウスは悲鳴をあげて、グラチウスを振り落としそうになる。グラチウスはあわてて淫魔の首っ玉につかまる。
「何をするんじゃ、この、くそ淫魔」
「何しやがるんだよ、このくそじじい」(page 271)
仲のよろしいことで。早川文庫版で読了。
グイン率いるケイロニア軍は一路クリスタルを目指すが、途中で怪しい霧に包まれて同士討ちする。敵の思惑に気付いたグインが素早く軍を立て直したため損害は軽微だったものの、野営している間に再び怪異が起こる、といったお話。
途中でアモンが再び登場してグイン弄って帰ってく……って、前の巻と似たような展開だのぅ。シルヴィアとグインの場違いな痴話喧嘩もありますが、そういうのが書きたい気分だったんでしょう。それにしても、半ば妄想とはいえ開脚してちょめちょめ会話するお姫様というのは如何なものかと。
この辺りのアモンの思惑も支離滅裂で、グイン苛めて喜んでおると思ったら、今度はグインとおてて繋ぎたいと言い出す始末。結局何がしたいのか良く解らん。なので、どうやらアモン君もとある存在の意向に左右される木偶の坊な感じ。端から見てるとヤンダルもレムスもアモンも似たり寄ったりな造型だなぁと。
終盤ではヴァレリウスやグラチウスも合流していよいよクリスタル目前です。って、先行しているはずのイシュトは何処に……?
泣く子も黙る 4hero 最高傑作、1998 年発表。CD 2 枚組。
この album を取り上げるのも何度目か……。しかし何度聴いても美しいのぅ。歳月を重ねると趣味趣向は次第に変わっていくし時代と共に求められる音も変化していくのは世の常人の常といったところですが、この album に関しては未だに新鮮な気分で聴けるのですよ。d'n'b 好きも jazz 好きも classic 好きも soul 好きも飲み込みながらいずれにも偏りすぎず、4hero らしい血肉の通った音として仕上げている点が未だに聴ける要因か。
d'n'b が当初の下世話な地下室音響から fashonable な音へと向かっていった時期、それは genre が成熟に向かい後の衰退を準備する時期でもあったわけですが、4hero がこの album で辿り着いた高みは凡百の流行音楽とは一線を画する次元でありました。何せ誰も follow できなかったからねぇ。逆に本家 4hero はこの album が枷になり、4hero 名義での作品は弦楽への拘りを突き詰めつつ新世代の soul music 探究へ向かうことに相成るのであります。一方、同じく 70's の soul music に一家言持っている Ian O'brien や Kirk Degiorgio らは detroit techno 消化後の電子音楽的側面から soul music へと向かっていきます。その辺の話はまた後で。
Martin Scorsese 監督作品、2004 年。
親から莫大な遺産を相続した若者 Howard Hughes (Leonardo DiCaprio) は、飛行機好き、かつ映画好きだった。Howard は莫大な製作費を投じて映画 "Hell's Angels" を作り、女優 Katharine Hepburn (Cate Blanchett) と浮名を流す。また航空会社 TWA を買収し、自ら飛行機開発に携わりつつ、国際線を独占しようと画策する巨人 Pan Am に戦いを挑む。公私共に多忙な日々を送る Howard だったが、Katharine との不仲や開発中飛行機の事故などで精神衰弱に陥り、強迫性障害の兆候が露になっていく……。
長い映画の割にはぱっとしない感じ。Scorsese も大監督になってからは作品の密度がどんどん薄まってるような気がするのぅ。そういう自分と Howard Hughes を重ね合わせている……というわけではなかろうが。
映画終盤で裁判で一撃食らわせて Hercules 飛ばして明るい未来を感じさせつつ、強迫性障害の現れている Howard の姿を見せて締め括る……って、そこで終わりかよと。長丁場なのに半端な終わらせ方でげんなり。まぁ、Howard が短期間で濃厚な時間を過ごしたことは良く解る映画でしたが、本人にとっては濃厚でも観客にとってはどの素材も中途半端な印象になってるように思いますな。
Guy Hamilton 監督作品、1978 年。邦題「ナバロンの嵐」。
時は第二次世界大戦。Navarone 要塞の爆破で功を立てた Keith Mallory (Robert Shaw) と Dusty Miller (Edward Fox) に新たな密命が下される。Yugoslavia で独軍と交戦している Partisans の中に、独軍 spy の Nikolai Leskovar が潜り込んでいるため、それを排除するのが今回の指令だった。Mallory と Miller は米軍特殊部隊 Force 10 に配属される。Force 10 を指揮するのは若き中佐 Mike Barnsby (Harrison Ford) で、彼には独軍の Yugoslavia 侵攻を食い止めるために峡谷に架けられた橋を爆破するという命令が下されていた。Italy 経由で Yugoslavia へと潜入しようとする Force 10 だったが、その行く手には様々な困難が待ち構えていた……。
そういや小生、「荒鷲の要塞」は観たことあるけど「ナバロンの要塞」は観たことないわ。それはさておき。
独軍 spy だが Partisans の信任厚い Nikolai と、衆人環視の中で Nikolai を殺すのは躊躇われる Mallory との腹の探り合いとか、終盤の水防破壊の場面とかはまぁ面白いものの、全体的にはのっぺりした戦争映画。もう一工夫欲しいところです。
Harrison Ford は若いのに既に堅物役で笑えました。
4hero の 2001 年作。
前作 "Two Pages" は acoustic side である page one と、電子音による実験的な breakbeats 主体の page two に分かれていて、綺麗に分かれているものの噛み合わせた場合の化学反応はさほど意識しませんでしたが、この album では確かに soul jazz 路線を突き進む Marc Mac と、例によって beat への偏愛を隠さない Dego とで分業化が進んでいるものの、album としてのまとまりは前作より上なんじゃないかと思ってたりします。既に自分の思い描く世界を確立している Marc Mac はさておき、特筆すべきは Dego の tracks。vocal や生楽器を巧みに取り入れつつ躍動巻溢れる broken beats を展開しており、jazz 寄りの elegant music として昇華させてます。これが直球 soul 路線の Marc Mac side の楽曲とも相性が良くて、album の tone を統一させながらも variation 豊かな起伏を生み出すことに成功している。結局この二人、個々の趣向は違えども 4hero としての視線は一致しているということでしょう。その結果、やはり 4hero 作品としか言いようのない上質の新世代 soul music が目の前に広がっていくのであります。
感動的な高揚を味わえる tr.13 "Les Fleur"、続く Terry Callier の渋い声に泣ける tr.14 "The Day of The Greys" は名曲ですなぁ……。
某所で BattleFantasia のロケテ拝見。おおっと良く動けてますな。闘○伝みたいだ。play しとらんので実際はどうだか解りませんが。
4hero の 2007 年発表作。
4hero 名義では前作から 6 年振りとなる album release ですが、空白期間も何のその、前作の手法を踏襲しての新作と相成っております。Marc Mac の orchestration はより冴え渡り、Dego の broken beats はより自然に繰り出され、elegant な UK black soul music に仕上っております。今回は特に 70's soul への傾倒を強く打ち出している様子。strings への拘りは勿論あるものの、bass が強かったり rhodes piano や electric な装飾が多かったりするからそういう印象に繋がるのかも。或いは、"Two Pages" の頃に比べると肩の力が抜けた mild な楽曲が多いからか。まぁそんなこんなで、album total で聴かせるというより single collection みたいな趣。
しかしやはり 4hero は安心して聴けますな。Kirk Degiorgio の The Beauty Room はほとんど受け付けなかった小生ですが、Kirk 同様に UK soul の現代解釈を展開する 4hero は聴けてしまうのはどういうことかのぅ。頭と heart の違いか、出自と血の違いか……。
french techno の若手有望株、かどうかは解かりませんが The Youngsters の 1st album、2001 年発表。
いわゆる detroit techno follower の音なんですが、欧州産だと快楽主義に突き進んで hi-fi な音になる傾向がありますな。まぁ delsin や warp はちと違いますが、soma や kanzleramt の detroit スキーな人達はぴかぴかな音で elegant に責め立てる風潮が強いような。
The Youngsters のこの album もまた、その手のぴかぴか techno の系譜に連なる一枚であります。四つ打ち一辺倒ではなく様々な beat に手を出してるところも欧州産ぽいところか。しかしこの人達の音はなかなかにかっちょよくて sense の良さが光ってます。次作 "The Army of 1-0" も傑作でしたが、この 1st もなかなかの仕上りであります。
市川崑監督作品、1976 年。
終戦後間もない信州。日本でも有数の大企業である犬神製薬の創始者、犬神佐兵衛 (三國連太郎) が老衰で亡くなる。莫大な遺産の行方が記された遺言状は、故人の希望により一族全員が揃わないと開示されないことになっており、弁護士の古館 (小沢栄太郎) が厳重に保管している。ある日、私立探偵の金田一耕助 (石坂浩二) が犬神家を訪れる。依頼人は古館と共に遺書を管理していた助手の若林 (西尾啓) だったが、金田一に会う前に謎の死を遂げる。古館から改めて調査の依頼を受けた金田一はそれを受ける。犬神佐兵衛は生涯妻帯せず、異なる愛人に産ませた三人の娘、即ち松子 (高峰三枝子)、竹子 (三条美紀)、梅子 (草笛光子) がいて、彼女らはそれぞれ佐清 (あおい輝彦)、佐武 (地井武男)、佐智 (川口恒) という息子を設けていた。遺言状は松子の息子である佐清が戦争から復員してこないことで開示が延期されていたが、ある日松子は佐清を伴って犬神の屋敷にやってくる。佐清は顔の酷い火傷を mask で隠していた。一族が揃ったことにより、古館は金田一を立会人として遺言状の開示を行うが、その内容は、佐兵衛の恩人である野々宮大弐の孫娘、珠世 (島田陽子) が、佐清、佐武、佐智の三人の中から婿に選んだ者に遺産を与えるという内容だった。一族の間に険悪な雰囲気が漂う中、次々と惨劇が起こる……。
原作未読ですがなんとなく見覚えがあるのは TV drama 版でも観ているからかのぅ。人形の首挿げ替えとか池で足にょっきりとかで有名なお話ですし。尤も話の筋はすっかり忘れていたのでそれなりに楽しめました。
古い家並みや暗めの色彩で雰囲気出してるのも良好。石坂浩二は昔から石坂浩二でした、って当り前か。