|
UK の techno な人、Kirk Degiorgio の As One 名義作、1995 年発表。邦盤再発の XQAW-1009 (SPESC-009)。
jazz に色目を使った techno や house は失敗する……と何かの review で見掛けましたが、この頃の Kirk さんもその罠にはまっておったのでしょうかね。rhythm に遊びが効かない techno の場合、jazz を採り入れるつーても雰囲気 jazz にしかならなくて、jazz 的にも techno 的にも半端な仕上りになりやすいような。techno の束縛を乗り越えて breakbeats 大会に入り込んだ次作 "Planetary Folklore" は奇跡的傑作でしたが、今作に関しては detroit techno への愛着が未だに窺え、それがむしろ印象の薄さに繋がっておるような感じであります。
まぁ、落ち着いた音でほのぼの聴ける album ではあります。
ハゾスはにがい顔をした。
「ましてそれがパロ聖王家の唯一頼りになる成年男子であった、というようなことになっては……」
「私は、パロの誇りなんて、本当はどうでもいいことだと思えてきたの。最近」
ふいに、ずっと黙って二人の宰相たちの話をきいていたリンダが驚くべき発言をしたので、ほかのものたちははっとなって彼女をふりあおいだ。(page 42)
ほんの 20 page 程前には「誇りは国の根源」とか言ってませんでしたっけ、この人。早川文庫版で先日読了。
ケイロニアのハゾスがパロにやってきてリンダと会談。ヴァレリウスも交えて三人でマリウス君の我儘ぶりを貶して意気投合。そこにグラチウスの爺さんが飛び込んできてグインがノスフェラスで呆けておるとの情報を吹き込み、リンダはパロの女王となる腹を固め、ハゾスとヴァレリウスはグインを連れ戻すために軍を動かそうとする……の巻。
中原の政治家はこんな人達ばかりで大丈夫なのかのぅ。
リンダは女王に即位したらばマリウスの件はうっちゃっててもええわとお考えのようですが、んなわけねーだろ。状況は何も変わっておらんのだからマリウス君が悪いおっさんに騙されて利用されたり、リンダが暗殺されて跡継ぎどーしよって話になったらばまたぞろ大混乱ですよ。ヴァレリウスもハゾスも小娘の美貌とノリに乗せられて同調しておるし。宰相失格。
ハゾスも一国を代表してパロに来ておるのだからグラチウスの情報を鵜呑みにしちゃいかんだろ。国に帰ったら「得体の知れない魔法使いの爺さんから豹頭がノスフェラスに居ると聞いたので、ちょっくら軍隊率いて行ってきます」とでも言うつもりか。ぐらっち本人は無理にしても、せめてヨナっちかヴァレリウスか、その筋の専門家をケイロニアに引っ張っていかんと国民も納得せえへんのとちゃうか。
という感じで相変わらず都合良すぎる展開なので楽しめます。わざと突っ込ませてくれる仕掛けなのでしょう。
おれもトゥトゥインガ語の練習はしている。とはいえ、動機に多少不純なところがないわけではない。王女のミュザが勝手につきまとってきて、おれにいろいろと話しかけるのだ。ドゥプレがいれば通訳に使うのだが、やつは調査のために出歩いていることが多い。(page 150)
年端も行かぬ幼女をも引きよせるとは、流石は天性の pheromone 男くっきーであります。講談社文庫版で読了。7 巻の続き。
九鬼一行は砂漠を越え高峰を越え秘境に到着。美人姉妹に色目を使われたり王位継承の争いに巻き込まれたりでどたばた。でもって九鬼が幼女の申し出を断ったことが元で内乱勃発なお話。
Michael Bay 監督作品、2007 年。劇場観賞。
めりけんの地方都市に住む 16 歳の Sam Witwicky (Shia LaBeouf) は、金を工面したり良い学業成績を取ったりして父親の機嫌を取り、おんぼろ中古車の入手に成功する。憧れの同級生 Mikaela Banes (Megan Fox) を隣に乗っけて良い雰囲気にしようと画策する Sam だったが、ある日彼は、自分の車が robot に変形するのを目撃する。その頃、quatar の米軍基地が何者かに襲われ壊滅したり、Air Force One に何者かが潜入し軍の情報を hacking するという事件が起こり、米国防長官 John Keller (Jon Voight) は敵の正体を掴むべく専門家の team を編成して事に当たらせる。そして彼らは、機械生命体の二大勢力による戦いに巻き込まれていく……。
うわーお。えれえもんを観てしまったよ。
とらんすふぉーまーというとあの乗物が robot になる例のアレであり、車を四つに割ってえっちらおっちらやったら人型になりましたな印象だったのですよ。それがあーたこの映画、あの変形場面の作り込みの凄まじさときたら。よくもまぁあれだけ細かく割って崩して transform できるもんです。見た目の印象だけで言えば、日本の robot anime よりも大友克洋的な融合増殖機械を連想させる代物でありました。でもって robot ものにしてこの動き、この躍動感。長回し多用により四方八方から robot 格闘を見物できる趣向になっております。おかげで目の離せん場面が多くて疲れたりもしますがそれはそれ。撮影には米軍も協力したとのことで、見慣れない angle からの斉射や、かっちょええ軍用機の姿も拝めます。
その一方で story はかなりおっとっとな感じ。所々で軽く笑わせようとして滑ってこける展開に。Sam の実家での眼鏡探しの場面なんぞは無駄無駄ですなぁ。俳優陣にも華がないし。いや Jon Voight は渋くてかっちょええのんですが、この人も国防長官にしては頼りなさげだったり。ま、主役は Transformers ということで納得。
ということで、映像の impact だけで腹一杯な映画でありました。
Quentin Tarantino 監督作品、2004 年。Vol.1 の続き。
過去。殺し屋だった The Bride (Uma Thurman) は、妊娠を機に汚れ稼業から足を洗い、中古盤屋の兄ちゃんと世帯を持とうとしていた。しかし結婚式の予行演習をしているとき、組織の頭である Bill (David Carradine) に居場所を知られ、結婚式場は血で染められた。現在、The Bride の復讐相手は残り三人。Bill の弟 Budd (Michael Madsen)、隻眼の女 Elle Driver (Daryl Hannah)、そして Bill。まず Budd を襲う The Bride だったがあっさり返り討ちにあい、生きながら棺桶に入れられ埋葬されるが……。
二部作の完結編ですが、Vol.1 の大立回りに比べると地味ですなぁ。その分、過去の因縁や現在の境遇が細かく描かれている印象であります。今まで背景に居た Bill が表に出てくるところなので、相応の情念的裏付けが必要だったということですかね。
日本映画の間の美学を Tarantino 流に解釈したとも取れる作りで、特に Bill との会話にはその寛いだ見立てとは裏腹の緊張感が窺えます。でもって雌雄が決するのは一瞬。そういうのがさむらい映画よと言いたいのも解りますが、どうにも間延びで退屈な素質も受け継ぐ必要は無かったんではないかなと。
The Bride の昔の師匠 Pai Mei (Gordon Liu) が鬚をはねあげる度に笑ってしまったのは小生だけかのぅ。
暑いときに熱い音を聴く、また暑苦しからずや。Pantera の frontman として有名な Philip Anselmo が中心となって結成された Black Sabbath 愛な band、Down の 2nd album。2002 年発表。AMCY-10007。
前作以上に bluesy で groovy な地べた這いずり系の黒めたるであります。extreme な方向に突き進んで inflation を起こしていた Pantera よりも、こういう音の方が個人的にはええですな。heavy 一辺倒でなく、ballade 調や jam band 風の展開もあって全体の緩急もありで楽しめます。こういう音がひょっこり出てくるから米国産も侮れん。良作であります。