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純粋な studio full album としては 3 年振りだそうな。小生は "Pyramid" 以降の Rovo しか知らないけれど、それでも "Sai"、"Tonic 2000" (live)、"Live at Liquid Room 2001.05.16" (live) と毎年のように album 出してるので、ご無沙汰な感じは皆無。きっと今回も混沌と騒乱の超絶 world を繰り広げることであろーと思ってましたが、全くもって期待通りの音を届けてくれました。
Rovo と言えば rhythm 隊。岡部洋一と芳垣安洋の twin drum が分厚い音の壁を築き上げ、原田仁の bass が変幻自在の跳ねっぷりで踊りまくる。そして益子樹や中西宏司の synther が緩やかで大きな音響空間を演出。こうした土台が安定しているからこそ、勝井祐二の violin、山本精一の guitar が縦横無尽の improvisation を繰り広げることができる。始めのうちは混沌でバタバタしてて五月蠅いように聞こえるかも知れないが、その音の壁に慣れてしまえば、実は精緻かつ巧妙な計算が音を発する前から組み上げられていることに気付くだろう。ここで jazz 的な、仕切り線のある battle を期待してはいけない。連鎖的に起爆する化学反応の嵐が、次第に一枚の絵を描く。その process を目の当たりにしているような感覚を我々にもたらすのが Rovo の音だ。そしてこの世界では、時に過程がそのまま art となり結果を打ち負かす。
という Rovo を Rovo たらしめている要素はそのままに、この新作では既に live 盤などで収録済の楽曲から、音響 〜 minimal な雰囲気を閉じ込めた夢幻的(無限的) sound まで幅広く取り込んでいる。むしろここまで完成されると、次に期待するものが無くなってしまいそうで怖いな。
tr.1 "Pulse. Pause. Repeat"。点。中断。繰り返し。素っ気ない title だが、ambience を知悉している三人の演奏家の手に掛かると、柔らかい静寂の中を piano の音が緩やかにたゆたう不思議な空間が生まれる。点と中断と繰り返し、しかし点と点の間には減衰があり、時の経過と微かな感情の起伏がある。
tr.1 は stoic な曲だけれど、melodious な曲もある。しかし、ここには三人の pianist が火花を散らしているような雰囲気は微塵もない。それどころか、本当に三人で弾いているのかも危ぶまれるほどの静寂がここには横たわっている。この徹底的な匿名性。だがそれを悪い意味で捕らえてはいけない。三人の音楽家が同じ vector で音を発するとき、そこに記名性があることにはさして意味がない。ある情景を彩るために、音を発し、音を聴くということ。曲の赴く方向に沿って、ただ筆を置いていく。三人の音楽家は、むしろ曲に従属することで、曲そのものへの同化を果たそうとしているかのように思える。
静かな世界の、静かな情景。見事な collaboration です。
Darius series の音はどれも浮世離れした響きに満たされているけれど、G の音は明らかにそれ以前の Darius とは異質な禍々しさに溢れている。いや、"Chaos" 辺りで既に片鱗を覗かせていたその禍々しさを、当時とは比べ物にならない音源環境によって拡大解釈して見せた音と称しても良いのかも知れない。だが、それだけとも思えない。この威圧感。この冷たさ。この machinery な響き。OGR の曲はもっと控えめだった筈だ。彼独自の世界を丹念に描きつつも、listening music という一線をぎりぎりの線で守るのが彼らしい美意識の表現だったはずだ。だから、G が現れたときには誰もが当惑した。音は game という磁場に住み着きながらも、自分の存在を誇示し続けた。かつて無いほどの押し付けがましさで player の耳に napalm を投下し続けた。この過剰な表現。この音圧。
G-Darius が世に出てから既に 5 年の歳月が過ぎ、多少は冷静に聴けるようにはなったものの、未だに異質な感覚に襲われる。Darius series の特徴と言っていいだろう voice synthesizer の響きや、minimal だが melodious な piano の phrase など、やはりこれは OGR の手によるものだとは思う。しかし何が彼を beat の洪水へ向かわせたのか、或いは melody を生かすような楽曲構成をかなぐり捨ててまで彼が表現したかったものが何なのか、そこが不鮮明なままなのである。
勿論、"Kimera"、"Virus"、"Adam" といった keyword から、原初的な生命の轟き、暴力的で破壊的で荒々しい存在を表現しようとしたのだという解釈は可能だろう。だが、そうした外からの動機付けはともかく、G-Darius の音にはどこかぎりぎりな感じが漂っている。或いはこの beat の嵐が、game、或いは Darius という「抑圧」に対する OGR 的な解決方法だったのかも知れない。
不覚にも新譜が出てたこと知らなかった。情報源はこちら。
Robert Hood と言えば minimal techno。この新譜でも基本路線は変わらない。けれど、この人の minimal は箱詰めぎゅうぎゅうな感じではなくて、ambient な空間の広がりを感じさせたりもするから不思議。例えば tr.3 "sauna" の寡黙な響き。まるで will-o-wisp の蠢きを耳の側で鳴らされてるような。tr.4 "wrath meditation" の dark な雰囲気も、恐怖の具現化ではなくて、何かの気配を感じる恐怖、見えない恐怖を空間に木霊させるかの如き不気味さを漂わせている。一時期の Jeff Mills が達していた内面世界への遡行を、Robert Hood も試みているということか。
しかし相変わらずの tech minimal もスコパコ連発。tr.7 "the body human" って、やたらと格好良いです。まるで昔の Jeff Mills みたい(こればっか)。
tr.8 "method b" は、album "Internal Empire" の tr.1 "intro" を連想させる、beatless な track。いやぁ、美しい。続く tr.9 "the art of war" は、何とも形容しがたい一曲。minimal な synthe の phrase が始めは美しく響き渡るのに、次第に音が重なり、禍々しい様相を帯びる。これは…… minimal のわびさびを知り尽くした職人にしか達し得ない世界ではなかろうか。この狂気は Terry Riley 並み。名曲。
last track "the pipes" は、やはり Robert Hood らしさを一番感じさせる hard minimal で締め。clap 多用でも serious な image を保てる Hood はやはり偉大だ。
とまぁ、以上が一通り聴いての first impression。minimalist でありながらも多様な世界を見せつけた一作です。minimal 嫌いな人にこそ聴いて欲しい。
こないだ "Recreations" 買ったばかりですが、original album も買ってしまいました。あれぇ、この jacket は店頭でよく見かけてた頃があるぞ。そのときに買っとけば人生変わってたかもなぁ。
なんて思うのは小生が歳とったからであって、やっぱりこの人達は pure です techno です minimal です。でも堅苦しい雰囲気とか密室の窒息間なんてのとは全く無縁の、明快にして視界良好、空の突き抜ける青さを思わせる清涼感と楽しさに溢れている。この開放感こそが Technasia の強みでしょう。Detroit taste 溢れる豊かな synthe、疾走する beat、痛快爽快。全編 radio mix な collage が塗されていて、album の流れも自然で力みがない。うひょお。powerful です。至極真っ当な音の camphor 剤というわけで、electronica で脳味噌のネジが緩んじゃった人は technasia 聴いて薔薇色の世界に戻ってきてください。
今年上半期の話題作! ということで今頃聴いてます(笑)。まぁ Underworld とか Primal Scream に比べりゃ、rock 勢に approach できない分、地味な感じもするんですが。でも最近の CD って、国内盤でも半年で repress されなくなるようだから、思わず焦ってしまったあるよ。うーむ。ちょっと前までは 2 年間は保証してたように思うのだけれど。
んで Jazzanova です。流石に Compost の首領、緻密な音作り。でも全体的に地味ぃな印象です。狙ってこういう音にしてるんだろうな。出たとこ勝負の瞬間風速で勝負を決めるのではなく、じっくりゆっくり聞き込んで地味の滋味を味わい尽くしてくれいという、悠然たる姿勢を感じる。歌ものも多いので取っつきやすいし。
でも何ですな、blazilian flavour 満載で beat の手数も多いのに、冷たく mechanical な雰囲気も同時に湛えているというのは、ある意味異常です。こういう album を聴くと、german ってヘンな国だよなーと思う。まぁ、roman と機械の国ですから。
tr.5 "Hanazono" の、吉澤はじめの piano が美味。