Noisy Days in September, 2005

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2005.09.11 (Sun)

[movie] Hammett

 Wim Wenders 監督作品、1982 年。
 元探偵で今は三文小説家の Samuel Dashiell Hammett (Frederic Forrest) は、雑誌用の小説を仕上げた所で探偵時代の友人 Jimmy Ryan (Peter Boyle) の来訪を受ける。Jimmy Ryan は Hammett に、Crystal Ling (Lydia Lei) という中国娘の捜索を依頼する。chinatown へ繰り出した二人は何者かの尾行を受け、それを巻く途中で Hammett は投函するつもりだった原稿を奪われ、Jimmy Ryan ともはぐれてしまう。Jimmy を探す途中で出くわした O'Mara 警部 (R.G. Armstrong) は Hammett に Crystal Ling の件に関わるなと忠告され、また自称新聞記者の Gary Salt (Jack Nance) も Crystal を探しているという。成行きで Crystal を探す羽目に陥った Hammett は、近所に住む図書館司書の Kit Conger (Marilu Henner) も巻き込んで久々の探偵稼業に精を出すが、Crystal の名の周りには chinatown の顔役 Fong Wei Tau (Michael Chow) や悪徳弁護士 Hagedorn (Roy Kinnear) の影もちらついていた……。

 hard-boiled の開祖 Dashiell Hammett を主人公に据えた探偵映画。とはいえお話は完全創作らしい。
 Wim Wenders 監督作品にしては真っ当な探偵もので、pulp fiction らしい安い展開と微妙に間抜けな Hammett に苦笑する一作です。ただ、Hammett を主役に据える必然性ってのがいまひとつ見えてきませんねぇ。いや、Frederic Forrest はものすごーくはまり役なので、それだけでも充分か。
 まぁ、Wenders らしくない映画ではありますがそこそこ楽しめました。

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  • Lewis Carroll 『Through The Looking-Glass』
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 選挙。ちゃんと一票入れてきました。でもって NHK の出口調査を振り切って逃げる (爆)。

log modified: 2005/09/13 01:51:02 JST

2005.09.12 (Mon)

Captain Beefheart & His Magic Band / Safe As Milk

 Captain Beefheart の牛心溢れる旅路の始まりであります。1967 年発表の 1st。
 意外とすっきりした delta blues が基調となっている album です。後の変態性は希薄で、船長も船出は手堅く決めていこうとしたんでしょうなぁ。とはいえ、Frank Zappa とつるんで悪巧み修行を積んだ人なので、やはり一筋縄では行かない sound production です。blues を style ではなく生臭い情念の塊として掴みとり濁声と共に吐き出す牛心様、ある意味その核が素のままで晒け出された album と言えるでしょう。名盤。

log modified: 2005/09/13 02:07:36 JST

2005.09.13 (Tue)

Critters Buggin / Stampede

 Seattle を拠点に活動する post rock band、Critters Buggin の 2004 年発表 album。
 いやもう何というか Tortoise じゃねぇかと。vibraphone で音響とか言うのは今や nostalgie を掻き立てる役割しか果たせないような気がするんですが、Tortoise ほど男気溢れる格好良さや徹底性は感じられず、どうも中途半端な印象が残りますなぁ。
 もっとも、曲によっては爆裂 punk やら free jazz ぽいのやら人力 d'n'b やら、多様な音楽性で聞かせる band だったりもしますが、どこかで聴いたような音の寄せ集めのようにも思えて、album 全体の印象も散漫。新しい音には open でありたいと思う小生ですが、最近は当たりに恵まれてないような……。

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 Hellsing OVA なんてのが計画されとるようです。ところともかず監督作品らしいので密かに期待。原作は未だに読んでなかったりもしますが。

村上 春樹 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド (上)』
 私は太った娘の裸体について考えることをやめ、勘定を払ってレストランを出た。それから近所の図書館まで行き、リファレンスのデスクに座った髪の長いやせた女の子に「哺乳類の頭蓋骨に関する資料はあるでしょうか?」とたずねてみた。彼女は文庫本を読みふけっていたが、顔をあげて私を見た。
「失礼?」と彼女は言った。
「哺乳類の/頭蓋骨に関する/資料」と私はきちんと文節を切って繰りかえした。
「ほにゅうるいのずがいこつ」と唄でも唄うように女の子は言った。そういう風に言うと、まるで詩の題みたいに聞こえた。詩の朗読の前に詩人がその題を聴衆に告げるときの、あのかんじだった。どんな相談がきても、彼女はそんな風に反復するのだろうか、と私はちょっと考えてみた。(page 127)

 新潮文庫版で読了。
 世界の情報を巡り『組織』と『工場』が戦い続けている世界で、『組織』の計算士である主人公は生物学者の老人から重要な情報の暗号化を依頼される。だがそれが元で様々な騒動に巻き込まれる……というのがハードボイルド・ワンダーランドのお話。
 高い壁に取り囲まれた世界で、夢読みの仕事を与えられた主人公が、淡々とした日常を送りながらこの世界について思いを巡らせる、というのが世界の終りのお話。
 二つの物語が交互に語られる、という構成になってます。

 さて、村上春樹というと小生の嫌いな作家の一人であります。学生時代に『ノルウェイの森』を読んでああそうふーんポイでありました。エロの無いますかき小説に用はないのじゃよ。あと山田詠美の小説も嫌いです。そりゃ余計か。
 とはいえ小生が嫌いと言いきる作家も珍しい (笑) ので前読んでから 10 年以上経ったことだしどれほど嫌いか再確認しようかと思ったわけでして、ついでに某灰羽は世界の終りに似とるという風評もあったりするのでとりあえず読んでみたあるよ。
 辛かった。下巻に続く。

log modified: 2005/09/16 01:17:05 JST

2005.09.14 (Wed)

村上 春樹 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド (下)』
 図書館に着いた時刻はいつもより一時間ばかり早かったが、彼女はストーヴで部屋を暖めて僕を待っていた。彼女は僕のコートに積った雪を払い、靴のスパイクのあいだにこびりついた氷片を落としてくれた。
 昨日も同じようにここにいたはずなのに図書館の中の様子は僕にはこのうえなく懐かしいものに感じられた。すりガラスにうつる黄色い電灯の光や、ストーヴから立ちのぼる親密なぬくもりやポットのくちで湯気をたてるコーヒーの香りや、部屋の隅々にまで浸みこんだひっそりとした古い時間の記憶や、彼女の静かで無駄のない身のこなしを、僕はずいぶん長いあいだ失っていたような気がした。僕は体の力を抜いて、そんな空気の中にじっと身を沈めていた。そして僕がこの静かな世界を永遠に失おうとしていることを思った。(page 248)

 新潮文庫版で読了。上巻の続き。
 ハードボイルド・ワンダーランド編は主人公と太った娘が老科学者の元を再訪、主人公の受けた脳手術により深層意識の表面化が起こっていることを知らされる。自分自身で居られる時間が残り少なくなっていく中、主人公はのほほんと日常を送りつつ終りの到来を待つ。
 世界の終り編は主人公が図書館娘を気に掛けながら、この世界の住人が心を持たないことに気付く。自分の分身である影が死にかけていて、影の死は自らの心の死を意味すると悟った主人公は、この世界に留まるべきか、それとも世界を逃れて生きるべきかで逡巡する。
 やはり交互に物語が進み、それぞれの生き様が語られる。

 いやぁ辛い眠いしんどいの三重苦でしたなぁ。仕事を定時帰りして読了してちょっと横になって気付いたら晩飯も食ってないのに朝になっていて何じゃそりゃあ、というくらい疲労しましたよ。世界の終りでなくて一日の終りで済んだのだからまだましと言うべきか。
 ワンダーランド編は地下潜入行や爺さまが蘊蓄垂れるところは SF 的で面白いんですが、その後の太った娘攻撃をはぐらかしたり胃拡張姉ちゃんとごろにゃんになったりゲセンで暇潰したりといった展開にはほとほとうんざりさせられました。酔っ払いの無駄話を真顔で聞かされてるような感じですな。ワンダーランド編が死に向かって緩慢な歩みを続けている間、世界の終り編は影と引き離され世界と断絶して心を失いつつあった主人公が逆にその心の確かさを確かめてその世界に留まろうとしていく様が描かれていて、二つの世界の vector が主人公視点では逆転してたりします。まぁそれが爺さまの手書き回路図で示唆されていた意識の転回の現れだったりもするんでしょうが、だからどーよと思わなくもない。世界が絶えず巡る中、人は心の平安を求め、安定した着地点を目指す。通して見れば、ぬるま湯に使っていてこのままでいいのかのぅと密かに悩んでいた主人公が、ぬるま湯いいじゃんこのままでと開き直るお話とも取れる。なるほどねぇ。村上春樹の天才振りは、そのぬるま湯固定を主人公のためだけの世界として閉ざしてしまい、向後の憂いなく徹底的にあちらの世界に飛ばしてしまっている点にあるのかも知れません。moratorium の全面肯定小説。こういうの、好きな人はとことん好きなんでしょうな。
 嫌いな人はとことん嫌いだったりもするんだろうなぁ、って小生の事ですやっぱ嫌いだわ、済まんのぅ。

log modified: 2005/09/16 02:33:32 JST

2005.09.15 (Thu)

Cream / Live Cream

 Cream の 1968 年 live 音源。
 Mike Oldfield 好きと公言する仕事場の親方に「最近の廉価 CD は下手したら中古より安いっすよ Cream の live 盤も 1500 円でしたよ」と話をしてみたらば「Cream て何?」と真顔で返されてひっくりかえった小生であります。「Eric Clapton が 60 年代にやっとった 3 piece band ですよやだなぁもうすっとぼけちゃって」と畳み掛ければ「Clapton て誰?」ですよ全く信じらんねぇっす。
 何を隠そう Phil Collins から始まった小生洋楽史に照らして考えるに、US & UK rock は洋楽本流で、Mike Oldfield やら Tangerine Dream やら Klaus Schulze やらは酢いも甘いも吸いつくした洋楽廃人が辿り着く北端の岩清水の如きものと思っておったのですが、親方は岩清水から世界の全てを悟ったらしい。そういう人生もありですか。聞けば親方周辺はそういう人ばかりとのことで、親方周辺は日本じゃないような気がする (爆)。
 で Cream ってどうですか? まったりのっぺり? だって Cream ですから仕方ないよねぇ。酒飲みながら聴いてくだされ。

log modified: 2005/09/16 02:54:26 JST

2005.09.16 (Fri)

[movie] Charlie's Angels: Full Throttle

 McG 監督作品、2003 年。
 Natalie (Cameron Diaz)、Dylan (Drew Barrymore)、Alex (Lucy Liu) の天使隊が活躍する映画の第 2 弾。FBI が管理する重要証人保護 list の暗号解読に使われる 2 つの指輪が何者かに奪われる。証人たちが次々に消される中、天使隊は指輪を奪還すべく活動を始めるが、Dylan の元彼 Seamus O'Grady (Justin Theroux) や、元天使隊の Madison Lee (Demi Moore) がその行く手を阻む……。

 1 作めは相当なコスプレ映画でしたが、この続編もあれやこれやで衣装替えしまくりですねぇ。Pink Panther の theme に乗せて鞭しばいてくねくねするとこなんかは楽しいですな。M.C.Hammer の clip に乗せて dance するとこも良好。何気に 80's metal 寄りな選曲 (Dylan も AC/DC や Judas Priest の T-shirt 着てたり Bon Jovi の "Livin' on a Prayer" 熱唱してたりします) に retro な懐かしさも。
 しかし華の命は短いということを如実に現す映画でもあるわけで、三者三様に老けたのぅと思わずにはいられぬのじゃよ。流石の天使隊も歳には勝てぬ。そういや Natalie の引退話てのもこの 2 作めの function になっとるのですが、この series さっさと切り上げたいわという製作側の意向が滲み出とるような気がしないでもない。
 ええと、お話の方は例によってあってなきが如し。とにかく天使隊をコスプレさせるのに心血を注いだような展開です。action は CG 使いまくりで wire 使いまくりの過剰演出ですがここまで過剰だと安心して笑って見られます。まぁ暇潰しには良い映画でありました。

log modified: 2005/09/18 02:42:02 JST

2005.09.17 (Sat)

[movie] Le Dernier combat

 Luc Besson 監督作品、1983 年。邦題「最後の戦い」。
 砂漠と廃墟が広がる荒廃した世界。男ばかりが生き残ったその世界では声帯の損傷により言葉が存在しない。とある男 (Pierre Jolivet) が頭領 (Fritz Wepper) の治める村の外れに一人で住み、古い部品を組み立てて軽飛行機を修理していた。だが村の備品を奪われたと知った村人は男の根城を襲撃、男は間一髪で軽飛行機で逃れた。しかし飛行機は故障して墜落。男は廃墟で再び一人暮しを始める。屈強な男 (Jean Reno) に襲われ傷を追った男は何とか逃げのびるが力尽きて倒れるが、医者 (Jean Bouise) に命を救われる。屈強な男は医者から食糧を奪おうと狙っていたが、医者の根城には三重の壁があるため、屈強な男は侵入できないでいた。手負の男と医者は共に暮らす内に互いを信頼するようになる。やがて医者は毎日の秘密行に男を連れていく。医者の行く先には女が居た……。

 Luc Besson の初期作品。台詞皆無の低予算映画で全編 monochrome の映像です。
 まぁ流石に言葉が無いのは辛いよねと。ただ、解かり難いとはいえ仕草や表情での交感は丁寧に (だがぶっきらぼうに) 描かれますし、sense のない音楽があからさまに状況を語ってくれるので理解不能とまでは行きません。ちなみに音楽は Eric Serra ですが、この人の音楽にはずっこけることが多いような……。
 話の方は追ったり追われたり、喜んだり戦ったりで石器時代かよという趣ですが、数少ない知識人らしい医者が良い味出してますな。死に方がアレでしたが。空から魚が降るなら土砂も降りますか。
 それにしても Jean Reno、serious な役回りのはずなのに愛嬌がありますなぁ。

get
  • Bobo Stenson / Goodbye
  • Charles Lloyd / Notes from Big Sur
  • Stephen King 『Wolves of The Calla』
  • Stephen King 『Song of Susannah』
  • George R.R. Martin and Lisa Tuttle 『Windhaven』
diary

 新しい財布を購入。10 年振りくらいで新しいのに替えることになりますか。前の財布から物を全て取り出してみると、流石にふにゃふにゃですな。新しい財布が馴染まなかったときのために、もうしばらく取っときますか……。

log modified: 2005/09/18 04:11:55 JST

2005.09.18 (Sun)

[movie] Kill Bill: Vol. 1

 Quentin Tarantino 監督作品、2003 年。
 Deadly Viper Assassination Squad の一員として多くの悪業に手を染めた女、Black Mambo こと The Bride (Uma Thurman) は、暗殺稼業から足を洗おうとし、結婚式を挙げようとした矢先にかつての仲間達に襲撃され痛めつけられた挙げ句、頭を撃ち抜かれる。だが九死に一生を得た彼女は事件の 4 年後に意識を取り戻す。元々身籠っていたものの子供は既に亡く、身内も失った。The Bride は、彼女から全てを奪った者達、即ち Cottonmouth こと O'Ren-Ishii (Lucy Liu)、California Mountain Snake こと Elle Driver (Daryl Hannah)、Copperhead こと Vernita Green (Vivica A. Fox)、Sidewinder こと Budd (Michael Madsen)、そして暗殺集団の頭領たる Bill (David Carradine) に復讐するため旅に出る……。

 でもって病院でエロ医者を殺し、真っ当な主婦している Vernita Green を娘の前で殺し、沖縄で服部半蔵 (Sonny Chiba) から日本刀を譲ってもらい、東京でやくざの頭領に収まっている O'Ren-Ishii とその手下を皆殺しにして次に続くのです。
 深作欣二に捧げられた作品とのことですが小生は深作映画観てないのでどの辺が respect なのかは解りませんがとにかく醤油味な映画なのですよ。無論 Tarantino なので醤油とはいえ本醸成とは行きませんが誤解と偏見に満ちた似非醤油なメリケン版日本映画に比べれば良くも悪くも醤油の味がするのです。日本刀でぶったぎられて手が飛ぶ足が飛ぶ首が飛ぶ、白刃が舞えば血飛沫がありえないくらい大量に放出され金屏風に血染の一閃が走るというこういう映画、なんつーか黒澤の "乱" みたいやなぁと。あれも血ぃ出過ぎですがこういうのを美学と取ったか笑いと取ったか Tarantino、日本映画即ち血飛沫 entertainment で情念で復讐でやくざで演歌であるとのその理解はまったくもって正しい。飛行機に日本刀持ち込むのも役者にへぼい日本語喋らせるのも日本だからありなのだ。ごめん言い過ぎた (爆)。あぁ、あの日本語は日本の観客を笑わせる為にやってるんでしょうなぁ。Gogo 夕張 (栗山千明) もロリコン好きな日本男児の為に持ち出してるようなもんだし、なかなか日本文化の深いところまで見抜いておるではないですか監督。
 Uma Thurman てぇ人は表情の起伏が少ない人やと思うんですが、この映画はそれが上手い具合に復讐一直線女の造型に役立ってるようです。Lucy Liu も若作りして天使隊の一員やっとるよりも本作での和服でやくざ姐御やっとる方が似合いますな。
 story 的には "Reservoir Dogs" や "Pulp Fiction" のような緻密さはなく剛腕直球な復讐劇に仕立てられてます。もうちょっと捻っても良いんじゃないのと思わなくもないですがその辺は続編に少しだけ期待しましょうか。

 音楽は RZA が担当。とはいえ Tarantino の映画なので引用参照膨大です。まぁ悪くはないっす。それにしても RZA、"Ghost Dog" といいこの映画といい、サムライ映画に縁がありますなぁ。

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  • 京極 夏彦 『百器徒然袋ー雨』
log modified: 2005/09/19 03:27:16 JST

2005.09.19 (Mon)

[movie] Nokto de la Galaksia Fervojo

 杉井ギサブロー監督作品、1985 年。邦題「銀河鉄道の夜」。
 村の少年ジョバンニは、漁に出たまま帰ってこない父親のことで学校の同級生からからかわれていた。幼馴染のカンパネルラだけはジョバンニを馬鹿にしないが、病気の母親を庇って学業の傍ら活版所で働いてもいるジョバンニはカンパネルラとゆっくり話も出来ないでいる。星祭りの日、学校と仕事を終え、パンと角砂糖を買って帰宅したジョバンニは家に牛乳が届いていないことを知り、牧場まで取りにいくが、担当の者がいないので後でまた来いと言われる。待つ間に星祭りの様子を観に行ったジョバンニは、ザネリを始めとする同級生たちにまた父親のことで馬鹿にされていたたまれなくなり、牧場のある丘まで戻って一人で天の川を見上げる。と、突然蒸気機関車がジョバンニの側に止まる。何時の間にか汽車に乗っていたジョバンニ、その傍らには雨に濡れた様子のカンパネルラが居た。幻想第四次と言われるその鉄道旅行で二人は星の海を渡り、様々な体験をする……。

 観るのはもう何回目になりますかねぇ。TV でやってる度についつい観てしまう作品であります。宮澤賢治原作、ますむらひろし原案、別役実脚本の anime 映画。
 感情表現の下手なジョバンニですが、その視線の先には彼の孤独な心が投射されている。言葉や過剰演出に頼りすぎず、視線や仕草で微細な感情の揺れを表現する。こういう見せ方の anime も珍しいですな。仲間に馬鹿にされて無表情に受け流すジョバンニと、カンパネルラと共に無表情に外の風景を眺めるジョバンニは、同じ無表情でも違うのですよ。でもって幻想行と南十字を経てカンパネルラと別れた際の涙がまた痛い。まぁ、happy end にならんというのはカンパネルラが汽車に乗っている時点で解ることではありますが……。透明な友情を描いた傑作であります。
 細野晴臣の音楽も秀逸。

diary

 遂に headphone が大破。元々が安物で、小生が地元に居た頃から使っていたものだからもう 10 年以上の付き合いとなってましたが、cover も破けてボロボロだったし。んで今回は speaker がぺろんと外れて一巻の終りであります。よく働いてくれたのぅ。
 次はどんなのにするかのぅ。

 Roger Zelazny の『地獄のハイウェイ』って、映画化されてたんですねぇ。知らなかった……って、あんな大陸横断で爆走するだけのお話で映画になるんか、という素朴な疑問もあるんですが。

log modified: 2005/09/20 01:36:22 JST

2005.09.20 (Tue)

The Dave Brubeck Quartet / Time Out

 Dave Brubeck (p)、Paul Desmond (as)、Gene Wright (b)、Joe Morello (ds) による 1959 年録音作。
 仕事帰りでへろへろな脳味噌の中ではあれやこれやの曲が浮かんでは消えていくわけですが、"The Sidewinder" や "Five Spot After Dark" はすぐ浮かんでくるのに何故か "Take Five" が思い出せんときがあります。5 拍子やってことは判るんですが、rhythm だけとって phrase が自然に浮かんでくるのを待っていると、うぎゃぎゃぎゃうぉんぶおおぉ〜んすきゅきゅるるると Terry Riley 風 minimal free jazz が脳裏で渦巻きあれぇ "Take Five" ってこんなんだっけ全然違いますああ畜生腹が立つひじょーに腹が立ってきたぞ帰ったら聴き直してやると久々に押入から取り出して jacket 見た途端に全てを思い出し、しまったシワちゃんゴメン (謎) と平伏する小生なのでした。
 小生の嫌いな easy listening 風 smooth jazz で耳当たりが良くて聴いていると腹が立ってくる album であります。まぁその辺が Dave Brubeck と Paul Desmond の味なのでそれを否定しちゃあおしまいじゃよ助さんやと古老が仰るのも解りますが小生未だ若輩の身ゆえ只の甘党 jazz としか聴こえませなんだ。あまり聴きやすすぎるとこいつら実は怒るとすげぇ恐いんじゃないか、tr.3 "Take Five" だって耳にすぅっと入ってぽわっと消えてく音ですが、実は裏 take でうぎゃぎゃぎゃうぉんぶおおぉ〜んすきゅきゅるるるみたいな Derek Bailey 風無調永劫 improvisation が繰り広げられたんではないかと恐ろしくなりますというのはもちろん嘘ですが、まぁこういう jazz があったお蔭で free jazz が counter として出てきたという見方はできるんじゃないでしょうか、ってできねぇよ (爆)。
 とりあえず当初の目的は果たしたのでまた封印するべ。

Lewis Carroll 『Alice's Adventures in Wonderland』
'Have some wine,' the Match Hare said in an encouraging tone.
Alice looked all round the table, but there was nothing on it but tea. 'I don't see any wine,' she remarked.
'There isn't any,' said the Match Hare.
'Then it wasn't very civil of you to offer it,' said Alice angrily.
'It wasn't very civil of you to sit down without being invited,' said the Match Hare. (page 69)

 少し前に読了。Puffin Books 版。
 暇を持て余している少女 Alice が、たまたま見掛けた喋る兎を追いかけて穴にすとん。落ちたところは nonsense に満ちた世界で、Alice はでっかくなったり小さくなったり、喋る動物達の騒動に巻き込まれたりしててんてこまいになる、というお話。
 平易な英語ですが、珍騒動の連続ですし謎かけや言葉遊びも満載なので、こりゃあ難しいっすよ。Alice も苛ついたりびくびくしたりし通しで、そりゃこんな目にあったら不安にもなるわいなと。子供にしか見ることのできない世界を大人が夢想して構築した、という風情。まぁ、難しいことは考えずに Hatter の捻くれた論法や Queen の hysteria を笑えば良いんでしょう。疲れますが面白い読物でした。

log modified: 2005/09/22 01:08:24 JST

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