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まだまだ健在な Irish hardcore band、Therapy? の 2012 年作。studio 盤としては 2009 年の "Crooked Timber" 以来ですかね。
まぁ 20 年以上も band やってる人たちですので、紆余曲折ありつつも音像はあらかた解ってしまうわけで、alternative で hardcore な人たちとはいえその存在が既に様式美な印象も少なからずありますが、それでも Therapy? 的 groove 感覚というのは彼ら独自の境地でありまして、今や絶滅危惧種の body music な beat 感と hardcore なゴリゴリした riff の mixture を泣きめろとまぜこぜにしつつ展開するという彼らの特色は今作でも十二分に発揮されております。なので、近年の Therapy? を面白がれる人には安心して聴ける album と言えるでしょう。
tr.1 "Living In The Shadow Of The Terrible Thing" の王道 Therapy? 節も良いですが、個人的には tr.3 "Marlow" の inst で minimal な展開にも魅かれるものがあります。
UK の techno producer、Dave Angel の 2011 年作。前作 "Globetrotting" は 1997 年作とのことで、14 年振りの復活作であります。
detroit techno followers の中でも pop で dancable な曲調が印象的だった天使様、今でも "This is Disco" とか聞くと身体が震える小生ですが、長い blank を経ての今作でも相変わらずの pure techno まっしぐらで、安心するやら呆れるやらで微妙な心境です。まぁ、techno も今では伝統芸能なので、その意味では listener の望んだ姿で表舞台に再登場するのは大いに結構なのでしょう。まぁ、昔のように天井なしにアゲアゲな曲はなくて、厚め薄め綺麗めの synth を melodic にまぶしつつ若干早めの四つ打ちでびしびし進んでいくという展開なので、album total ではかなり均整の取れた良作となってます。今後も constant に活動頂きたいものです。
Dave Angel の近作にも一曲参加していた日本の techno producer、Ken Ishii による 2012 年作。FICS2002。
"Future In Light"、"Sunriser" と pop techno 二部作を打ち出した後、過去遺産整理と dj mix 稼業に精を出しているように見えた Ken Ishii さんですが、いつの間にやら Tokyo Midtown の音響監督みたいな役回りを頂いていたようです。Tokyo Midtown ってどの辺なのかも小生は知らんのですが。関東には 10 年以上戻っとらんし。
空間演出を視野に入れての album 作りということで、自然 lounge で listening techno/house な曲調になっているわけで。緩い pad と減衰 minimal phrase な synth で雰囲気作って、女性 vocal や sax で都会で大人な雰囲気を演出、都会の真ん中におっ立っているおされ建物にでも流れているような音楽を連想させるような urban electro な album となっております。うんうん、こういう音は六本木や渋谷辺りでは受けるでしょうが梅田は微妙、名古屋では駄目だ(笑)。
Ken Ishii さんも R&S の頃には寧ろ rave の熱を感じさせない密室 techno な音作りだったので、こういう音も卒なく纏めているのは大いに結構なのですが、空間演出系大好きなとろにか屋の人が多い昨今では、この album ならではの特色があまり見えないような気もします。pure techno 路線にはもう戻らんのかなー。
日本の beat maker、Riow Arai の 2011 年作。rar-01。
Kindle と銀河が手元にあるおかげで、書籍についてはほぼ電子版で購入する状況な小生ですが、こと音周りでは未だに CD で買うことの方が多かったりするわけです。住居空間を圧迫しまくっておるにも関わらず。その根幹には電子 data は消え易く失い易しという昔ながらの不安があり、書籍であれば大半読み捨てなので消えてもどうということはないが、音に関しては repeat で聴く機会が多い分、有形で手元にあるとないとでの安心感の差がかなり大きい。そんなこんなで相変わらずの CD 主義です。つーても普段は vbr の mp3 で変換して聴いてますが。
さて Riow Arai さんの今作ですが、今回は脱力系でしょうか。base track の minimal loop を主軸に据え、鉈でざくざくぶった切ってるような beat をかましているのは正に Riow Arai な音、しかし上モノは薄く展開は平板、即ち従来の beat maestro な breakbeats 構造主義者 Riow Arai の姿を期待すると拍子抜けするような音になっております。練りこまれてないというか隙間が多いというか、とかくそういう音。
以前 "Electric Emerald" で techno 回帰を果たした時とはまた別の視線で、minimal loop と有機的な mixing を simple な構造の中で融和させようとする、そういう意思が見える音ではあります。その心意気が成功しているかどうかと言われれば正直微妙で、叙情派とろにか職人のように際立っためろを展開させるでもなく、かといって Autechre 的な experimental の極北に向かうでもなく、非常に置き場に困る、でもこの人にしか出せない味わいの breakbeats 音楽になっているという、何とも評価の難しい音像であります。とはいえこういう過渡期な音は得てしてその時代ならではの魅力があるのも確かで、genre は違えど Bill Evans の "Portrait in Jazz" 的な青い可能性を感じさせる album になっていると思います。
closing title の "graphication" は何気に名曲。