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崎元仁作曲による、STG 「蒼穹紅蓮隊」の soundtrack。1996 年発売、MEM Records の VOCR-5018。
基本めろとその変奏により世界観を固定するという映画音楽的な手法を STG にも適用し、曲想の貧困さは arrange 力でいくらでも cover できるのじゃ、その方が発想 cost は抑えられるし game の色も統一できるしで良い事尽くめでしょでしょ、ということで従来の面単位曲構成型 STG とは異なる視点から出てきた楽曲となっております。なので逆火山サイコーとか仰る方々にはお勧めしかねるブツであることは言うまでもありませぬ。
と書いていると小生がこの album 嫌っておるように受け取られるかも知れませんが決して断じてそんなことはなく、やたらと強調される四つ打ち基本の beat に重低音 drone、そこに金属的な上物がざくざく入ってきて天翔る鋼鉄騎士の戦場に鳴り響く様は、戦争音楽らしい重厚さを感じさせるものとなっております。album としての統一感も見事。久々に聴き直しても燃えますなぁ。
崎元仁作曲による、STG 「Radiant Silvergun」の soundtrack。1998 年発表。小生保有の CD は 2004 年再版盤の ABCA-5043。
銀銃といえば小生は数回しか play したことがありませぬ。何が起こったのか解らんままに即被弾終了だったような。Treasure の STG との相性の悪さは昔から、ってところですな。とはいえ凄い game やという認識はあるんですけどね。
さて音の方は、「蒼穹紅蓮隊」が動の印象ならこちらは静。theme を通した classical arrange の楽曲構成という点では両者共通ですが、銀銃では percussive な展開は抑えめ、theme は三拍子、そして鐘系の音を特徴的に使うことで個性を出しております。この頃の崎元仁の充実ぶりが伺える album でありました。
崎元仁作曲による、STG 「Gradius V」の soundtrack。2004 年発表。KOLA081。
かつての Konami STG の看板だった Gradius series でありますが、V は Treasure 製作、音は崎元仁ということで、過去作を respect しつつも新しさを追求した作品なのであります。しかし小生は Gradius series って苦手なのです。power up の仕方には未だに違和感が……。
音の方は、過去作の phrase も随所に盛り込みつつ、崎元仁らしい symphonic な arrange を施し、trance の影響を感じさせる digital な上物を乗っけて、勢いと壮大感を強調した作りになっております。めろの弱さを雰囲気で補った、という印象もありますが、original 楽曲と真っ向勝負して自滅するよりは、こういう approach の方が無難ではありましょう。まぁ、その分印象薄だったりもしますが。
TV animation "Romeo x Juliet" の original soundtrack。音楽担当は崎元仁。2008 年発表、COCX-34784。
game 畑での仕事が長い崎元仁ですが、遂にようやくやっとこさ劇伴仕事にありついたということで、今回は気合充分であります。電子音への浮気は極力抑え、Eminence Symphony Orchestra による classical な音を主軸とした陣立で、大風呂敷な音世界を展開。若干甘めの曲調が多いのは作品に合わせた結果か。その肝心の anime の方は、えすからすの婆様が出しゃばりすぎたおかげで普通に英雄 RPG と化してしまいましたが、崎元氏にしてはむしろ仕事がやりやすかったのではないですかね。
次は anime 版 Druaga ですか。また RPG な話になりそうですが、愛憎どろどろ精神 drama での崎元節もそのうち聴いてみたいものであります。
Darren Lynn Bousman 監督作品、2006 年。
何者かに拉致された女医の Lynn Denlon (Bahar Soomekh) が目覚めたとき、目の前には瀕死の Jigsaw (Tobin Bell) が横たわっていた。Jigsaw の助手 Amanda (Shawnee Smith) に首枷を嵌められた Lynn は、そこで Jigsaw から、とある game が終わるまで Jigsaw を生き延びさせれば命を保証すると言われる。Lynn の首枷には、Jigsaw の命が絶えたとき爆発する仕掛けが施されていた。Lynn はたった一人で Jigsaw の延命手術を施すことになる。一方、Jigsaw の仕掛けた game に捕らわれた Jeff (Angus Macfadyen) は、与えられた課題を越えていくことで、かつて Jeff の息子の命を奪った者に復讐する機会が得られると知らされ、game を続けていくことになる……。
"Saw"、"Saw II" に続く三作め。今回も痛い描写てんこ盛りではありますが、前二作に比べると単純に痛いだけの演出になっておるような気がしますな。story も直線的で、謎解き要素が少なくなった分だけ面白みも半減。まぁ、痛さが売りの映画ってのは解りますが、もう一捻り欲しいですな。
Sam Peckinpah 監督作品、1973 年。邦題「ビリー・ザ・キッド/21才の生涯」。
西部の無法者 Billy the Kid (Kris Kristofferson) の前に、旧友 Pat Garrett (James Coburn) が姿を見せる。Pat はこれから保安官になるため、Billy に逃亡の機会を与えようとしたのだった。しかし Billy は土地を去らなかったため、Pat の指示により Billy は捕らえられ留置所に入れられる。Billy は Pat の留守中、保安官代理を撃ち殺して逃亡。Billy は逃避行の中で Alias (Bob Dylan) と名乗る若者と知り合う。一方、Pat は再び Billy を追う……。
Sam Peckinpah らしい滅びの美学が伺える映画であります。"The Wild Bunch" に比べれば確かに violence 色は薄めですし、意味のなさそうな cut も多いので名作とは言えませんが、とにかく死んでいく者たちの犬死に感が何とも Peckinpah 的。その死のあっけなさは Billy も Pat も例外ではないところにこの映画の凄みがあります。Alias 役の Bob Dylan は存在感薄くてこれまた嗚呼無情。
Helenus de Rijke, Johan Dorrestein, Olga Fransen という三人の guitarists から成る Amsterdam Guitar Trio が、J.S.Bach の Brandenburg Concerto を演奏した album であります。と言っても全曲ではなくて、No.2、No.3、No.5、No.6 の 4 曲分ですが。No.5 には Tini Mathot の harpsichord も加わります。流石にあの harpsichord solo は guitar では辛いか。1985 年録音、BMG の 74321 427422。
小生の Bach 体験の礎は恐らく Brandenburg Concerto の No.5 で、中学時代の掃除の音楽だったと思います。game music を覚えては口遊むのが当時の暇潰しであった小生ですが、このめくるめく対位法狂乱舞曲を耳にしてからというもの、世の中が二重三重に見えて大いに困った……というのも今では懐かしいことよ。
Brandenburg Concertos については、とりあえずどこぞで入手した出自の解らぬ超格安廉価版 CD は持っているものの、もすこしちゃんとした音源が欲しいとは思っておったのです。しかしつい浮気して Transcription ものに手を出してしまったのは変わり物スキーな小生の性でありましょう。しかしこうして聴いてみると、主副の境なく押し寄せる guitar の音色が、対位法ふぇちであるところの Bach 像をより一層際立たせておるように聞こえなくもない。各声部の音色が近いと個々の声部の独立性が薄れる分、渾然かつ整然な音響として目の前に現れてくる。その有様は厳密で制度的な minimal music に近い感触を与えてくれたりもする。いやはや面白い一品でありました。
英国の lute 弾き、Nigel North による、Bach 作曲の Sonatas & Partitas for Solo Violin の第一集で、No.1、2、4 を収録。1993 年録音。Bach On The Lute の 4 枚組 box set の一枚。CKD 300。
難しい phrase もさらりと弾き流すのが Nigel North 流。元が Violin 曲なだけに細かい refrain もあちこちに出てきますが、この人の手にかかると柔らかい lute の音色そのままにするりするりと曲が流れていきます。上手いのぅ。あまりに自然すぎて眠くなるのも宜なるかな。Violin 版は主張の強烈な album が多いと思いますが、その中にあってこの柔らかさと優しさはかなり独特の味わいで、ちと驚かされます。安眠用にどうぞ。