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german power metal (って今でもあるんですかね) な band、Rage の 1988 年発表作。"Execution Guaranteed" の次に出た 3rd album。邦盤 VICP-23071。
サビに被さるおっさん harmony に high tone vocal、でもって定番 guitar solo に昔ながらの西欧 metal な melody と、まだまだ普通の metal band な頃の Rage であります。とはいえ今作から trio 編成になり、良い意味での吹っ切れが出てきているようにも思います。今後に期待な band ですねぇ、ってもう 20 年前のブツですが。
german prog band、Popol Vuh の 1979 年作。Werner Herzog 監督による同名映画の soundtrack らしい。映画未見。Herzog 作品って TV でやってくれないのですよ。
一重に prog rock と言いましても german のそれは大いなる勘違いから生まれております故、実は progressive ならぬ regressive な vector に向かってたりもするのです。Neu! の hammer beat しかり、Tangeline Dream の minimalism しかり、Cluster の ambient しかり。誰もこんな音楽聴いてねーだろという点では確かに先進的なのかも知れませんが、既に廃れてしまったが故に未知の音楽と化してしまったという歴史性の圧倒的な欠如が、70 年代 german prog rock の特徴なのであります。まぁ、classical music で雁字搦めの状況下で突破口を見出すには、出自が classical な UK prog rock を参照しても駄目じゃろう、という認識があったのかも知れませんが。
さて Popol Vuh のこの album ですが、exotic な sitar の響きを feature して、似非中東室内楽をほにゃーんはにゃーんと鳴らし続けるという、これまた我々の期待を裏切らぬ堂々たる勘違い音楽となっております。もはや行き着くとこまで行って、これは rock か否かと問われて悶々と悩んだり、classical music の棚にちょこんと置かれているとメタボなおじさまが買ってしまいかねない類の音楽であります。安眠用に使えそうな album ということで不眠症の方にお勧めな一枚。
新譜 "Time Stand Still" の amazon 予約が始まってますよ。ということで The Hooters 復習、1985 年 release の major debut album。Columbia の CK39912。
後々に顕著になる民族音楽趣味はここではまだ控えめ、とはいえ希代の melody maker であるところの Eric Bazilian & Rob Hyman による楽曲はどれも粒揃いで良好。80 年代半ばの album だけに、ベタな electronics の導入や厚化粧な mix という時代の特徴はあるものの、pop album としての仕立ては彼等の歴史の中でも随一の出来栄えではないですかね。tr.1 "And We Danced"、tr.2 "Day By Day" と、冒頭 2 曲で即死こんぼの伝統は既にここから始まっていたんですなぁ。名作。
Dennis Hopper 監督作品、1969 年。
ヤクの密輸で大金を得た Captain America こと Wyatt (Peter Fonda) と、その相棒 Billy (Dennis Hopper)。二人は大型の bike を買い、めりけん横断の旅に出る。途中で hippie の community に立ち寄った二人は、しかし自由の体現者であるが故に煙たがれ、再び旅を続ける。別の町で二人は飲んだくれ弁護士 George Hanson (Jack Nicholson) と知り合い、共に旅を続けるが、人々の彼等に向ける目は冷たい……。
流石にこの映画は倍速では観られませんな。Steppenwolf の "Born To Be Wild" が取り上げられていることで有名ですが、他にも The Band、The Byrds、Jimi Hendrix 等の楽曲が聴けます。こういう音と破滅型の story はよく似合います。
自由を体現することが自由の国 America の敵になるという皮肉な構図を描いた映画ですが、その theme に注力したという風でもなく、淡々と映画は進んでいきます。まぁ、映画としては退屈な部類。とはいえ、寡黙な Captain America が時折見せる茫洋とした表情には何ともいえぬ諦念が滲んでおるようで、観ていて泣けます。結末のあっけなさも哀愁漂いますな。とりあえず名画扱い。
Joon-ho Bong 監督映画、2006 年。邦題「グエムル/漢江の怪物」。
Seoul の中心を流れる漢江、その川縁で小物売りをしている Park Gang-Du (Kang-ho Song) は、川から巨大な爬虫類様の怪物がのし上ってくるのを見て驚愕する。怪物は観光客らを追い回して暴れ、Gang-Du の娘 Hyun-seo (Ah-sung Ko) を連れ去って川に飛び込み行方をくらます。悲嘆に暮れる Gang-Du だったが、政府は怪物を目撃した Gang-Du らを病院に隔離し、漢江も立入禁止にする。怪物が未知の virus の host である可能性があったためだ。Gang-Du は病院で Hyun-seo からの電話を受ける。死んだと思われていた Hyun-seo は、怪物によって漢江近くの巨大な下水道に閉じ込められているらしい。Gang-Du は、父 Hie-bong (Hie-bong Byeon)、弟 Nam-il (Hae-il Park)、妹 Nam-Joo (Du-na Bae) と計らって病院を抜けだし、Hyun-seo 救出に向かう……。
怪物を前にして駄目親父が奮起する、ということで Spielberg 版 "War of the worlds" と同じような趣向でありますが、B 級 taste はこっちの方が上ですな。とはいえ全体的に杜撰な作りなのも確かで、絆映画としても panic 映画としても中途半端な印象は拭えず。まぁ、頑張りましたということで。
菊地成孔 (ts)、類家心平 (tp)、坪口昌恭 (p)、鈴木正人 (b)、本田珠也 (ds)、パードン木村 (dub) の面々による jazz album。2007 年発表、EWCD 0141。
DCPRG での jazz 脱構築の旅を終えた菊地成孔、今回は orthodox な mode jazz 路線。本人も tenor ぶいぶい吹いてます。菊地在籍時の ONJQ は好印象な小生ですので、今作も印象良好。dub 処理も入ってますがそれが前面に出すぎることもなく、60 年代 Miles 風味に現代ぽい accent を付けるといった塩梅になっております。
free jazz への流れに傾いていった 60 年代の jazz album というのは今の耳で聴いても新鮮であることは確かで、構造と非構造の隙間でじたばたしている様がいかにもナマ物の jazz だったのであります。時を経て 2007 年、その戦場へ時代外れの介入を行ったこの project は、まだ構築側に片足突っ込んでいるところが菊地成孔らしい端正さ/煮えきらなさでもあるのですが、充分面白い試みと思いますな。なかなかの力作と思います。
角川文庫版で読了。
元教師の鈴木は妻を殺した男に復讐すべく、その男の父親が経営する闇会社に就職。だが狙いの男は鈴木の見ている中で何者かに背中を押されて事故死。復讐を横取りしたその「押し屋」を鈴木は追うが、行き着いた先は平凡な家族だった……。目の前の相手を自殺させるという特技を持つ殺し屋の鯨、良心を何処かに置き忘れたナイフ使いの殺し屋の蝉、その二人もそれぞれの思惑の元に押し屋を追う……。
いやはや不覚にも面白かったよ。時間が止まったように風景が流れるときに人は現実と幻想の狭間にいる……という説明が文中に現れますが、その仕立てに従えば初めも終わりも幻想の内にあるものねぇ。どこか浮世離れした飄々とした展開ながら、鈴木、鯨、蝉といった視点人物は個性的に描かれていて、彼等が交わる時に何が起こるかと興味津々でありました。ちょっとした記述が後の展開への伏線になっていく点も功名。上手い作家さんでありました。
中公文庫版で読了。『ダウン・ツ・ヘヴン』の続編。キルドレの戦闘機乗りクリタの物語。
ますます私小説化が進んでいて、まるで空気を読んでいるかのよう。印象薄。