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石黒昇、河森正治監督作品、1984 年。
人類の作った巨大宇宙戦艦マクロスは、巨人種族ゼントラーディと戦いつつ、地球へ帰還すべく航行を続けていた。その最中、人気歌手ミンメイと軍の若い pilot である一条輝は恋仲になる。だがゼントラーディは男と女が共に生きる人間の生態に興味を持ち、ミンメイを人間のサンプルとして連れ去ってしまう。ミンメイがいない間に輝は上司の早瀬未沙と荒廃した惑星に不時着するが、そこは地球だった。輝と未沙は漂流生活を送るうちに良い仲になる。地球に残された遺跡から、ゼントラーディと人類は同じ祖先を持つことが解り、両者は和平を結ぶが……。
昔も今も劇中歌が鬱陶しい。しかも idol pops だし。こりゃ小生が嫌っても仕方ないわさ。
美樹本な美女はさておいても緻密なメカ描写にほえほえと関心してしまう次第。
音楽は羽田健太郎が担当。良い仕事してます。
たまにこういうのが転がっておるから中古盤漁りはやめられんのじゃよ。Suzukiski の 1999 年作。soup011CD。
日本脱力系 techno/house 界の重鎮たる鱸氏は 21 世紀に入ると持病の電気とろにか症の進行により横須賀四畳半的日常へ埋没してしまったのですが、現在は四つ打ち正常脈を取り戻し、復調の兆しを見せております。1999 年の本作品では鱸氏の四つ打ち魂炸裂の世紀末救世主 house が展開されているというほど大仰な装いではなく、とりもなおさず安機材で音すかすかな脱力 house に仕上っております。
しかしですな、同じく安機材でぺなぺなな Basic Channel が、その引き算美学の徹底により一種近寄り難い構築性を獲得したのに対して、Suzukiski の音はまるでその辺の野良猫が尻尾ふりふりしながら足元に首擦り寄せて、にゃあんと甘い声でおねだりしているような気安さと魅惑と官能と毒が漂っていて、油断していると思わず甘やかしてしまいそうになるのであります。いやいかんそれではいかんのです、甘えても餌はあげないのですちょっと可愛いからって何でも思うままに事が進むと思ったら大間違いなのです、と自らに厳しく言い聞かせながら鱸のお頭を彼奴の鼻先に突き付けて高い高いさせてあげるのが正しい道なのです。そんなこんなでやはり憎めない一枚。
新潮新書版で読了。
jazz の歴史を語るとなると人物伝の羅列になりそうなもんですが、この本の視野はもっと広めで、modern jazz の話は本の中盤以降に置かれてます。前半部ではめりけんの奴隷制度による西欧と阿弗利加の文化混交が jazz を生み出す下地を作り、金の動きや流行や radio や録音技術の進歩に左右されながら jazz の原型ができあがっていくまでの話になってます。この辺りの話は小生もろくに知らないことばかりで面白かったです。
中盤以降は Charlie Parker や Miles Davis、John Coltrane といった先人の功績にも触れつつ、やはり jazz をその当時の世相や文化的側面から捉え直す姿勢で臨んでいて、音そのものからは掴み難い背景の情報がどんどん注入される印象。Lennie Tristano が Hindemith 門下だったとは知らなかったですよ。
そして 60 年代末の modern jazz 神話の崩壊を語り、混迷の時代に入ると。大きな物語が終わってからは過去の語り直しに向かうか非 jazz に向かうか、というところで post modern な時代の jazz な話になってます。歴史としては語り難い時代なわけですが、その語り難さを解り易く語っているところがまた上手い。John Zorn や Derek Bailey への言及もあり。
新書なので駆け足なところはありますが、この分量で jazz 表裏を上手くまとめあげた良書でありました。で、この本では小さな物語としてばっさり切り捨てられている諸々の諸相、即ち北欧勢の影響や club jazz からの再解釈や post rock との関わりあい……といった視点からの語りは今後の宿題ということになるですかね。
今では jazz guitarist の大御所として有名人になってしまった Pat Metheny (g) の初 leader album、1975 年録音の全 8 曲。ECM 1073 ですが小生保有は邦盤 UCCU 5204。
20 歳そこそこの Pat Metheny が、盟友 Jaco Pastorious (b)、8 歳年長の Bob Moses (ds) の trio 編成で録音した album であります。tr.1 "Bright Size Life" の intro からして既に Metheny な音色に phrase で、爽やか涼風路線はこの 1 作めからできあがっておったのだなぁと。tr.8 "Round Trip / Broadway Blues" は Ornette Coleman 作ですが、他の曲は全て Pat Metheny の original となっております。
曲の途中から melody を奪ったり、solo で歌心ある表現を聴かせたりする Jaco Pastorious の bass も、この人ならではの個性が窺い知れますが、この album では超絶技巧で前に出すぎることもなく、落ち着いて leader の引立役を任じている様子。Bob Moses の drums も Pat の爽やかな play に逆らわない、疾走感溢れる叩きっぷりを見せております。
それにしても Pat Metheny てえ人は、変拍子で捻くれた展開の曲であっても持ち前の爽やか filter で清涼化してしまう、まるで空気清浄機のような人なのですな。天然 guitar 小僧の純真さに打たれる一枚であります。
「なぜそんなことをするのです?」
「くたびれたケツを留置所の外に置いておこうと思って」
「それだけの価値があることを祈るんですな」彼は言った。「そして、実際に効き目があることを」
「ま、いまのところめんどうごとの種にはなっていない」
「めんどうごとと言えば、このところ何をしているのですか?」
「酒を飲み、素手で殴り合い、必要経費を使いまくっている」私は告げた。(page 275)
早川文庫版で読了。小鷹信光訳。
前作で獣医のベティと良い仲になったミロは、Texas で彼女の元に留まっていたが、5 年が経過しベティともうまくいかなくなりつつあった。ある日ミロは酒場での殺人事件に出くわす。やがて魅惑的な美女モリーと良い仲になったミロは、彼女の復讐計画に手を貸そうとするが、逆にミロが罠にはめられる……。
ミロもこの作品で還暦を迎える爺さまと成り果てておるのですが、ヤクは手放さないわ 3P やらかすわ暴力沙汰に次々出くわすわで、元気な暴走爺さま振りにはますます磨きが掛かっておる様子です。Texas のような暑いところでは鶏達のけたたましさも割が増すってもんですよ。細かい episode が錯綜しながら進んでいく語り口は前作譲りで、読みやすい本ではないのですが、ミロの暴走と余談を許さぬ展開に飲まれてしまうと、ついつい面白がって読んでしまえるのです。登場人物も個性的で癖ありまくり。ううむ、やはり尋常でない書き手さんであります。
日本の dub 職人、Blast Head の 5 年振りな new album。2007 年発表。LACD-0113。
technology の進歩により自主盤でさえハイレゾな音が横行している昨今でありますが、この人達は地下醸造産らしい濃厚まったり節な album を届けてくれましたよ。基本路線は従来通りの tribal 風味 dub でありますが、熱帯の噎せるような空気と色彩が目の前に広がっていくような、真夏の夜の dub な趣向が一層鮮明に打ち出されております。title の "Outdoor" は伊達じゃねぇぜという感じ。
そこそこ beat は効いてますが、印象としては細野晴臣の "Naga" に近いか。あまり聴き慣れない類の音ではありますが、意外と入り込みやすい音であります。それでいて地方の地酒みたいな一見際物な面白さもあって聴き飽きない。暑い日に beer がば飲みしながら聴きたい一枚であります。
ふじもとよしたか監督作品、全 13 話。
女性の乗組員だけが搭乗している民間の護衛艦 Pascal Magi に、民間の技術者である凪宮漂介が派遣され、漂介のはーれむらいふが展開されるというお話……と思っておりました。
で今頃になって通して観たわけですが、只のはーれむあにめで片付けるのは勿体ない、意外と堅実な作りの作品なのでありました。黒幕が混沌の制御を目論むほにゃららな人達なので、種死なアレを連想させる story になっておりますが、ずっこけ連発だった種死に比べれば話がまとまっておる分だけ良好かと。
搭乗員が女性ばかりということで蔑視の対象にされたり、軍の失策隠蔽の片棒を担がされそうになったり、戦闘で死者が出たりもするので、はーれむはーれむと浮かれてばかりもいられん severe な世界観になっている点も個人的に高評価。
終盤は流石に大鉈振るって終わらせた感じもありますが、延々はーれむするよりは潔い切り方かも知れません。
護衛艦での戦闘も駆け引き充分で、かの迷作 "Tide-Line Blue" に失望した諸兄はこっち観るよろしであります。
David Lean 監督作品、1965 年。
Russia 革命前。前途有望な医者にして詩人の Yuri Zhivago (Omar Sharif) は、財界に顔の効く弁護士 Viktor Komarovsky (Rod Steiger) が、仕立屋の娘 Lara Antipova (Julie Christie) に懸想していることを知る。Lara は革命の闘士 Pasha (Tom Courtenay) を愛していたため、ある日 Lara は Komarovsky を銃で撃って関係を終わらせようとするが、Komarovsky はしぶとく生き残る。Yuri は育て親の娘 Tonya Gromeko (Geraldine Chaplin) と結婚し、第一次大戦に軍医として従軍。途中、看護婦を名乗り出た Lara と一緒に Yuri は仕事をし、二人の気持ちは近付くが、共に世帯持ちであるため一線を越えられない。戦争が終わり Lara と別れた Yuri は Tonya の元に戻るが、革命の余波により苦しい生活を強いられることになる。その頃、Yuri は革命軍の leader 格に収まっている義兄 Yevgraf Zhivago (Alec Guinness) と出会い、彼の勧めで暫く田舎に引っ込むことにするが、その先でまた Lara と再会する……。
革命の時代を背景とした恋愛大作。こういう話は苦手じゃよ。数奇な運命に弄ばれておるのは解るんですが、話があまり盛り上がらんのが辛い。手堅い作りは流石に David Lean 監督作品でありますが、あまりに大人な作りなので観る人を選ぶ作品でありましょう。