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勉強しながら聴いてます。独逸が誇る electro rock band、Tangerine Dream の 1975 年 live 盤。
"Phaedra" や "Rubycon" と言った彼らの Virgin years の名作は synthesizer 乱れ撃ちつつ何処か茫洋とした印象の残る仕上がりですが、この live 盤はこの時期の Tangerine Dream にしては輪郭のはっきりした音で聴かせてます。収録曲は 2 曲、tr.1 "Ricochet Part One" が 17 分、tr.2 "Ricochet Part Two" が 21 分。曲自体は長いんですが、minimal な phrase が緩やかに変化していく中で白玉 drawn が大らかな大陸風を演出するという如何にもな Tangerine Dream 風味であります。久々に聴き直すと思わず "Panzer Dragoon" の曲として使ってあげたくなるような感覚に捕らわれます……古くてごめん。drums が意外と元気な点も好印象。
勉強中に聴くと、うにゃうにゃした trance 感に包まれて時が経つのを忘れてしまう。こりゃいけてませんぜ。別の CD で出直そう。
勉強しながら聴いてます。jazz pianist、橋本一子による TV animation "Rahxephon" の original soundtrack、第二弾。2002 年発表。
いわゆる jazz 屋の soundtrack というと、そりゃ jazz でしょ、って思うのは自然な成り行きだとは思いますが、fusion 全盛の 70 年代ならともかく、21 世紀にもなって jazz 屋が soundtrack を手掛けること自体が珍しいことになってるような気がしますな。でもって jazz 屋の animation soundtrack ともなると更に希少な存在になりつつあるような……。とはいえ、大御所の大野雄二が健在なうちはその火が途絶えることはありますまい。頑張れルパン。
で、真性 jazz 屋でないところの今堀恒雄や大友良英の劇伴は、jazz 的 idiom を駆使しつつもそこから逸脱していくような音作りを志向しているってのが面白いんですな。それは jazz の form を外れるという意味でも、劇の方向を音でねじ曲げるという意味でも当てはまる。そうやって生まれる音は、その劇世界以外に属する場所のない音として鳴らされていく。TV のバラエティ番組にはおいそれと使えないような類の音になっていくわけです。劇伴の中に未開の音の荒野を見出そうとする、という姿勢が、辺境 jazz 屋による soundtrack の面白さと言えるかも知れませぬ。
そこにきて橋本一子のこの album。この人を真性 jazz 屋と思ってる人は多いでしょうが、この soundtrack から窺える雰囲気には jazz 屋の器では出し切れん魅力が横溢しておるわけです。勿論 jazz 的 jazz、今作で言えば tr.1 "runnin'" のような曲もありますが、orchestra を feature した曲もあれば drum 'n' bass 調もあり、流麗な solo piano を披露したかと思えば noisy な混沌 punk もある。そしてどの曲にも通底しているのが、一種の冷め切った視線、音から熱っぽい感情を抜き去り根底に潜む水面の静けさをかすかに窺わせるような sound production だったりする。この感覚、初期の combo piano を連想させますな。
jazz 屋としての過去は一旦脇に置いて、自らの語彙を再構成して吐き出してみれば、いつの間にか此処にしか居場所のない曲ばかり出来ていた、といった風情。3 年経っても未だに新しく刺激的な音ですなぁ。
あ、勉強しながら聴くには音が強力すぎるので集中力が speaker に向かってしまい勉強に身が入らなくなります。駄目じゃん。別の CD で出直そう。
勉強しながら聴いてます。detroit techno を語る上で外せない Underground Resistance の既発音源を中心にまとめられた CD 2 枚組の album、2005 年発表。
もう何というか、techno つーより urban soul で fusion ですな。disc 2 tr.8 "Momma's Basement" は新曲ですが首謀者 Mad Mike 自らが electric guitar を披露、これがまた上手い! 音も只の fusion ぽいが UR ぽくもある……って当然ですか。そういうところから入るなって? いやそりゃ UR つーと真面目に聴かなきゃいかんとは思いつつあまりに神格化されてしまった現代の UR 神話にゃ一歩引いてしまうわけで。まずは音そのものから入るのが小生の聴き方なんじゃよ。そうすると俄然新曲に耳が行くわけで。disc 2 tr.9 "Afro's Arps and Minimoogs" も新曲ですが、遊び心溢れる moog の響きには堅苦しさの欠片もありませんぜ。幸せ一杯の夢一杯ですかな Mad Mike さん。
気を取り直して UR です。今まで小生も "Depth Charge" series でしか聴けなかった UR の名曲群がずらりと並べられたこの album、techno に興味ある方は持っていて損はしません。techno 試験には必ず出ます。抜き打ち detroit dj 試験にもこの一枚があれば太刀打ちできます。いわば基本のキ。つまり聴いとけと。disc 1 tr.11 "Jupiter Jazz"、disc 1 tr.12 "Amazon"、disc 2 tr.1 "Hi-Tech Jazz" あたりは listening test の常連なので脳裏に刻んでおくように。さすれば期末の Movement でも狼狽えることはありますまい。
さて、じわりと本音を言えば音の引き出しは決して多くありません。UR の歴史は 10 年以上あるわけですが、この compilation 通して聴いても古いとか新しいとかいった判断は殆どできません。beat は木訥、synthe はもこもこ。しかしその変わらなさ故に男気溢れる soul を感じさせるんですな。見ている方向に揺るぎがない。時流に色目を使うことなく、ひたむきに soul 道を突き進んでいるというのが真っ直ぐに伝わってくる。そして溢れ出る pure な romanticism に胸を締め付けられる。音楽が人を変える、なんてことを真面目に信じている人にしかこういう音は作れないんじゃないか。安い音ながら、かくも力強い響きを獲得している UR 楽曲には、信じ迷わぬ人の成す作品故の輝きがある。そう、こういう音を聴いていると、まだまだ音楽ってのは捨てたもんじゃないと思わされるのであります。
勉強中に聴くと涙で text が見えなくなるので先に進めません。駄目じゃん。別の CD で出直そう。
勉強しながら聴いてます。静けさと戯れる piano 詩人、Harold Budd の 1991 年作品。
この人は Brian Eno と組んで "Ambient 2: The Plateaux of Mirror" や "The Pearl" 作った人として有名ですが、だからといって安易に ambient 界の住人とは決めつけられない個性を持った人であります。例えば Eno の ambient series 一作目 "Music For Airports" は、静けさの中にも偶発性や無調の phrase が隠れ潜んでいて、popular music との差異をひっそりと主張していましたが、Budd が組するとその手の揺らぎは丁寧に除去され、Budd の音という記名性が前面に押し出されてくる。その意味で Eno は artist と言うより producer であったのだろうし、Budd は Budd で職業音楽家としての妥協なき音作りに専念していたとも言えるでしょう。その後の彼らの歩み方からもそれは窺えますな。
さてこの album、Budd 自身による poetry reading や歌声が披露されているという点で有名な album なわけですが、小生的には生楽器多用の室内楽的世界を打ち出しているところが面白く聴けます。静寂と自然に交わる音を追求した果てに辿り着いた地平には、昔ながらの小編成弦楽があった、ということですかね。例によって弓なり arpeggio も随所に配置され、その上を間延びした phrase がふわーりふわーりと漂います。すると気分もふわーりふわーり、そして睡魔も胸の奥から溢れ出る、出る、出る……。
勉強中に聴くと脳内 massage が効きすぎてまどろみの海へ漕ぎ出すこと必至。寝るために聴いてどうするよ。やっぱ駄目じゃん。別の CD で出直そう。
「あんた、笑ってるぜ、カメロン」
イシュトヴァーンは薄笑いをうかべた。
「お前もだよ、イシュト」
「所詮、俺たちゃ、海賊の盗賊のごろつきの人殺しなんだな!」
「まぁ、それもいいさ」(page 251)
大分前に早川文庫版で読了。
トーラスに戻ったイシュトヴァーンは審問にかけられる。よれよれのフェルドリック公がイシュトヴァーンの過去を語り、彼が裏切り者であることを主張するが、イシュトヴァーンを弁護するカメロン将軍も負けてはいない。やがてカメロンは黒幕のサイデン宰相と舌戦を繰り広げるが、サイデンの口からアリの言葉が出てくるとイシュトは発狂、トーラスを囲んでいたイシュト配下のゴーラ軍も乱入、王にいちゃもんつけた連中は一掃された、と。
台詞の長い栗本節が延々と続きますなぁ。しかし死んだアリ公がサイデンに憑いて復活……したはいいがアリ公らしからぬ直球勝負で、亡霊になって頭が回らなくなった模様。もう少し考えてから出てくるべきですな。
「おお――なんて、ふしぎなのだろう。なんと、ことばにつくせぬほど物語めいてひびくのだろう! ケイロニアの豹頭王グイン……とうとう、裸一貫でルードの森にあらわれた半人半獣の戦士が、世界最大の王国ケイロニアの王と呼ばれる身になったのだ……」
「そしてあなたは中原でもっとも伝統ある王国パロのアル・ジェニウス、聖王陛下となられるのですよ、ナリスさま!」
まるで叱りつけるようにヴァレリウスは云った。(page 130)
大分前に早川文庫版で読了。
グインは王になりシルヴィア姫も手に入れウハウハな筈だが豹頭なので顔に表情が出ません。パロでは療養中のアルド・ナリスによる謀反計画が着々と進行中。イシュトヴァーンはアムネリスに嫌われてむかついているところでフェルドリック公の娘アリサに目を付け舌なめずり、といった展開。
シルヴィア姫の「おひげがちくちくするわ」にゃやられましたよ。よくぞ言ってくれました、と。天然ボケ娘アリサも目立ってきてますし、微妙にキャラ売り路線へ向かっている様子であります。
試験日なので 6 時過ぎに起床。日曜日の小生にしてはあり得ない早起きです。しかし前日は早めに寝付いたので体調万全……とは行かず、少し下痢気味。これだから朝早いのは嫌なんだよぅ。
へこへこ試験会場へ赴き受験。9:30 から 16:30 まで。でもって例によって酷い肩凝りを持って帰る。内容も午後 I が……あ、もう忘れました。嫌なことは直ぐ忘れるに限る。
古本屋を覗くと買いそうな本があるわあるわ。でも買っても読む時間が捻出できん。仕事、当分楽にならんしなぁ。
一週間振りに vf4ft。CPU 相手に肩慣らししてたらば同段 Sarah に割り込まれる。うひゃ、こっちは崖っぷちなんだってば。しかし気合い入れて暴れたらば何とか勝利してぎりぎり safe。しかし地力で負けているので何度か対戦して相手昇段。まだまだですなぁ。
Gerard Krawczyk 監督作品、2003 年。
speed 狂の taxi driver である Daniel (Samy Naceri) は今日も愛車の整備に余念がないが、そんな Daniel に愛想が尽きた Lilly (Marion Cotillard) は荷物をまとめて実家に戻ってしまう。ドジで間抜けな警官 Emilien (Frederic Diefanthal) はサンタ装束の連続強盗犯を検挙すべく仕事に埋没し、恋人 Petra (Emma Sjoberg) の話も聞こうとしない。署内には雑誌特派員の中国美女 Qiu (Bai Ling) が Gibert 署長 (Bernard Farcy) に取り入り、署長の鼻の下は伸び放題。そして連続強盗犯も取り逃がし、警察の信用はがた落ちだった。そんな中、実は Lilly は妊娠の可能性ありで、Petra は既に妊娠 8 ヶ月に入っていると知った Daniel と Emilien は、これからは家庭を愛する男になろうと二人して決心するが、その時たまたまサンタ装束で scooter を走らせる怪しい男を目撃してしまう……。
前作もへっぽこな出来でしたが、本作は更に駄目さが増してるような気がしますねぇ……。car chase は少ない、笑いも少ない、これで何を面白がれと? Petra を妊婦で出したらあの脚線美が拝めんではないか、Qiu は化粧してない方が美人なのに毎度毎度けばく見せようとするのは何故だ、Lilly に至っては殆ど出番無しでわないか、これで何を面白がれと?
終盤の雪山 taxi も speed 感に乏しくて盛り上がらないし。まぁ、子供ができちゃったどうしよう、と慌てふためく Daniel と Emilien を笑ってあげればいい映画なのだとは思いつつ、どうにも路線を外しすぎた様子です。思い返してみれば、Sylvester Stallone ぽい男 (Sylvester Stallone) を乗せて Daniel が爆走する冒頭と、続く title role の 007 パクリが一番面白かったということになる。冒頭 10 分で客入れたら後は蛇足という寒い映画でした……。
晴明は、杯を唇に運び、ひと口酒を口に含んでから、何ともいえない表情をその口元に浮かべた。
困ったような、苦笑しているような表情が晴明の顔にある。
「珍しいな、晴明。おまえがそういう表情をするというのは――」
「実は、困っている」
「困っている? おまえがか」
「そうだ」(page 65)
少し前に文春文庫版で読了。全 5 篇の短篇集。
夢枕獏といえば短い文と改行多用で隙間の多い page 構成をする作風で有名ですが、この一連の陰陽師もの、涼しげな雰囲気がその作風と上手く合ってますな。長編はちと情念が勝ちすぎてましたが、短篇の方は相変わらずの雰囲気で楽しめます。
今回は賀茂保憲が初登場。やっと出たか、といった感じですが、道満のように積極的に晴明と絡んではこない様子。まぁ、そのうち何かやらかしてくれそうな人物ではあります。今後が楽しみ、と。
真面目な人達だと思ってたんですが…… disco で来おったよ(爆)。Teo Schulte と Heiko Laux の二人による jazz funk techno unit、Offshore Funk の 2nd。2005 年発表。
jazz と techno の融合ってのが Offshore Funk の結成動機だったように思いますが、1st は crossover scene なんぞそこのけの minimal かつ tribal な作風で、緻密ではあるがどこか歪な groove が渦巻いている怪作でした。で、この 2 作目……というか Offshore Funk 名義では 1 作目ですか、こいつは dark さを煌びやかな horn や strings や disco beat で払拭しつつ、土台にはしっかりと german minimal 魂が根付いているという、entertainment 路線に shift した Offshore Funk なのでした。当然聴きやすく乗りやすく、total な快楽度は前作より上でしょう。とはいえ遊びすぎない超安定志向の音とも言えますので、蓋開けて吃驚な展開にはなりません。まぁ、そこが職人芸だったりもするんでしょう。
時間を選ばずまったり聴ける、ええ湯加減の album でありました。
Jeff Beck、1975 年発表の instrumental album。
何はともあれ tr.6 "Cause We've Ended As Lovers" でしょう。この 1 曲のために一家一枚持ってても罰は当たらんでしょう。Jeff Beck の泣き泣き guitar が負け犬根性丸出しでキューンキューンと噎び泣く、Jeff Beck 一世一代の有名曲ですから。これ 1 曲聴いて「ええ album やったなぁ」と嘆息する貴方に祝福を。
しかし album 全体の構成から見ると、Jeff Beck は rock 視点からの funk 狙い撃ちを試みておったのでしょうなぁ。プリプリ言ってる bass が、ぽやや〜んと sepia 色に響く electric piano が如何にも 70 年代。こういう音が小生は苦手です(爆)。しかし最近は珍しく耳が 70 年代の音を求めておるので、昔聴いたときよりも抵抗なく聴けてます。tr.7 "Thelonius" なんて、そのまま Stevie Wonder が歌い出しても違和感ないような展開やし。つか歌えよ Jeff!
とはいえ全体的に大人しい感触の album で、fusion ぽくはあるが jazz ぽくはない。曲も compact に纏まってるので聴きやすいが毒がない。嗚呼、BB&A 聴き直したい……。
高見沢はアンジェラの気を引くために、シェリー酒を贈った。
ウェイターからシェリー酒を受け取ったアンジェラは高見沢を見つめた。高見沢はアンジェラを見つめたままシェリー酒を持ち上げ、飲み干した。アンジェラの固い表情が緩んで、口元に笑みがこぼれた。澄ましている顔よりも笑顔の方が美しい女だ。高見沢はウェイターを呼びつけ、百ドル札を一枚手渡して頼みこんだ。
「ピアノ・トリオの連中にもう一曲演奏してもらってくれないか。あのご婦人のために」(page 111)
臆面もなくこういう台詞を吐いてしまうのが大藪印の heroism なのですよ多分。角川文庫版で読了。
F1 driver として有名な高見沢優が日本に帰国し、二週間のお忍び休暇を楽しもうとするが、謎の金髪美女ナターシャが高見沢に絡み、二人で朝霧高原の高級 hotel でお楽しみ。高見沢が目覚めてみれば何故か hotel の地下で囚われの身。そして高見沢の前に旧知の男、杉原が現れる。高見沢は F1 driver として活躍する一方、その高い戦闘能力で様々な極秘任務をこなしてきた闇の仕事人でもあった。だが杉原の依頼した仕事を最後に、高見沢は闇世界から足を洗ったのである。その杉原が再び高見沢に仕事を依頼する。かつての共産国家ローマニアの隠し財宝の強奪、それが仕事だった。しぶしぶその仕事を請け負った高見沢は、隠し財宝のある南米はモザンビア共和国へ向かう。強奪の機会は宝が銀行から空港に搬出される僅かの時間のみ。高見沢は着々と準備を進める……。
「アスファルトの虎」series の番外編らしいんですが元を知らなくても全然問題ないです。完璧な男の高見沢は目を付けた姉ちゃんは押し倒し、姉ちゃんに目を付けられたら押し倒されて取っ組み合いを楽しむ。そして良く食い良く排泄しケツは「リンスキン L」で常に清潔。これぞ Mr.Perfect。
雑魚は利用するだけ利用してあっさり射殺、政府高官も軍事将校も高見沢の手に掛かればただの負け犬。南米で狩りを楽しみ、困難な mission も難なく仕遂げ、裏切り者には徹底的に報復する。気が付けば隠し財宝は手の内にありながら傷一つ負うこともなく休暇も残っている。それこそ「何事もなかったかのように」日常へ舞い戻る高見沢。
あまりにも高見沢が強すぎて世の中ツマンネ、なお話でありました。強すぎるのも困ったもんです。まぁ、強い存在を力強く描写する大藪の筆致は淀みが無くて痛快だったので良しとしましょうか。