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UK の trip pop な人たち、Portishead の 2nd album。1997 年発表。
Bristol どころか UK にも行ったことない小生ですが、The Pop Group を初めとして Tricky や Massive Attack を輩出して bristol sound なんて呼称まで頂戴した場所にはやっぱ相応の魔力が潜んでおるのでしょう。小生も一度は行ってみたいもんです。きっと暗くてじめじめして何も無い場所なんだろうなぁ気が重いなぁ。
Portishead もその bristol sound に連なる band と言われており、hip hop を基調として暗い怖いキモいを強調するその音の組み立て方は確かに bristol らしい陰影が窺えますが、しかしその本質は女の情念どろどろな vocal album な仕立てにあり、そこが Massive Attack や Tricky の beat 基調の hip hop 組とは決定的に異なる特徴となっております。Portishead というと Geoff Barrow の production に則って Beth Gibbons が延々と恨み節を聴かせる band、なわけで、hip hop な意匠が真新しく聞こえようが時代錯誤に聞こえようが、その内容は evergreen な oldtime pops の伝統に則っていると言えるでしょう。そんなわけでこの album も結構売れたそうです。downer な音って売れなさそうなのに結構需要あるんですね。そりゃまぁ小生も人生下り坂になって AKB に受かれるよりは downer な音でアヘアヘする方が性に合ってはおると思うのですが。
一作目の "Dummy" 程の結合力は認められないにせよ、相変わらず底なしの泥沼に引きずり込む sound production は顕在で、tr.1 "Cowboys" からしてこの band らしい倦怠感に包まれた track になっております。でもってこの暗い怖いキモいが 11 曲に渡って繰り広げられると。全くもって最高。小生の葬式には是非ともこういう album を流して頂きたいと思う次第であります。
小林義則監督作品、2007 年。
元警視庁刑事部捜査一課主任の雪平夏見 (篠原涼子) は、警視庁公安部に転属となり、上司の斉木 (江口洋介) と共に広域犯罪の取り締まりを受け持っていた。そんなある日、雪平の自家用車が爆発する事件が起こり、娘の未央 (向井地美音) が負傷して警察病院に入院する。だがその警察病院を terrorists が占拠する。terrorists の目的は入院していた警察庁長官を人質にしての身代金要求だったが、その金は警察が長年備蓄していた隠し金の総額だった。人質救出に及び腰な警察の態度に業をにやした雪平は、刑事時代の相棒だった鑑識の三上薫 (加藤雅也) と共に病院に乗り込む。一方、terrorists 達は leader である元 SAT 隊長の 後藤国明 (椎名桔平) を迎え入れ、病院に保管されている致死性充分な virus の確保に動いていたた。
TV Series は未見。映画だけ見るとうーむな感じ。話の仕立ては "The Rock" の劣悪版。雪平さんは tough な女刑事という役回りよりは一児の母な側面が強調されてますがそれってこの series 的にはありなんすかね。終盤に立て続けのどんでん返しがありますが何だか取って付けた風。単品映画として見れば凡作。
冒頭の篠原涼子と江口洋介の演技が棒読み君でその時点でかなり萎えましたが、椎名桔平はばっちり悪役やってて好印象でありました。
佐藤嗣麻子監督作品、2011 年。
北海道西紋別署刑事課に飛ばされた雪平夏見 (篠原涼子) は、同署課長の一条道孝 (佐藤浩市) の愛人に収まって日々よろしくやっていた。東京では Nail gun による連続殺人が発生しており、犯行現場の遺留品から重要参考人になっていた人物が次々死人になっていったことで捜査本部も混乱していた。そして次の重要参考人は雪平んの元夫の佐藤和夫 (香川照之) となっていた。その佐藤が北海道で雪平と接触する。警察の裏金に関する USB memory を雪平に返した佐藤は、自身は殺人に加担していないと言うが、ほとぼりが覚めるまで海外に行くつもりだと雪平に告げて去る。だがその翌日、雪平は佐藤殺しの重要参考人として検挙される。佐藤は東京の Nail gun 殺人と同様の手口で殺されたらしい。雪平の取り締まりは東京地検検察官の村上克明 (山田孝之) が担当するが、その村上を人質に取って雪平は逃亡する……。
今度は "Red Dragon" か "Se7en" を連想させる psycho thriller 仕立て。前作よりは話がころころ転がる分だけ面白いような気がしますが、一条さんの出方があからさまに怪しい (地方署の刑事課長がしれっと東京に出向いて現場に出向いたりしとるし) し、殺人犯に捕まって絶体絶命の筈の雪平が道歩いてて保護されたりするのは裏の仕込みが見え見えで、無理やり unfair 感を出そうとしているようで、映画を面白く見せるのは難しいなーと思わされたりします。まぁ前作よりは雪平さんがデキる女刑事ぽく描かれてる分だけ評価はできますが、最後の USB memory trap は流石にないわーと思ったり。USB memory に入れてる時点で closed な情報だったのは知れてる筈なのに、なんでそれを open network で転送可能にするかねぇ。しかも着信音で爆発とか、そりゃ USB memory 自体に仕込み入れないと無理っしょ。そこまでザルいと日本の検察が馬鹿にされかねん level だと思うんですけどね。
まぁ小生は、雪平さんが胸元どぱっと開けて long coat 羽織ってるのは作為的過ぎると思ってる人間なので、今作のようにきっちり胸元締めて羽織ってる方が普通に見えて安心出来ます。まぁ、篠原涼子にお色気を求める人には物足りんかもしれませんが。
Sean O'Hagan 率いる UK の pop rock band、The High Llamas の 1999 年作。
幼い頃の小生にとって The Beatles の "Let It Be" は小便ちびる系の horror song だったという話は既に何度かしている (してたっけ?) と思いますが、それ程ではないにせよ、どう聴いても pop song なのに何だか薄ら寒い気分にさせられる音楽というのはあるもので、The Beatles の "Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band" とか New Order の諸作とか XTC の諸作とか、UK の連中が studio に篭ってうーとかにゃーとか言いながら作る album は見かけ明るいくせに裏は陰気で毒があっていかん、というのが昔からの小生の持論でありますが、20 世紀末の post rock な空気の中でその負の遺伝子を受け継いで小生を肝胆寒からしめたのが Stereolab と The High Llamas でありました。
この The High Llamas の 1999 年作にしても、organ やら木管やらで温かい装飾を施して、bossa nova よろしく ennui な雰囲気を醸しつつ午後の木漏れ日的な pops を展開していますが、延々聴いてると happy になるどころか鬱々としてしまって壁とか蹴りだしかねんようになってしまうわけで。こりゃあれかいね、めたらーが純 pops 聴いてると発狂するとかいうあれですかね。『下北沢フォービート・ソルジャー』にも、普段 jazz 漬けのくせに city pops とか聴いて病んじゃう話があったような気がします。そんな話はどうでもよろしい。
The Beach Boys 命の Sean O'Hagan らしい密室 pops が際限なく繰り出されるこの album、久方振りに聴き直してもやっぱり螺旋が飛んでるというか、pops 道に邁進するあまり鬼気迫っちゃう的な、真顔で笑い顔作ってますな緊張感があって中々に怖い仕立てとなっているわけです。でもまぁ、こういう魔に魅入られた人の作品に異様な磁力が宿っているのも確かなので、踏み絵のつもりで聞いてみるのも一興かと。
Alex Paterson と Thomas Fehlmann による UK の ambient techno unit、The Orb の 1992 年作。
The Orb といえば Recofan で餌箱にいつも放り込まれてる存在、という印象があって、小生の数少ない知り合いに伺っても大塚愛に一生付いていきますと公言する若人はいても The Orb に命捧げますと公言する人は居ない感じであります。まぁ小生の周辺には techno も house も「変な音楽」と認識する人が大半なので、The Orb は minority 中の minority な存在なのかもしれません。その割には Recofan での餌箱率は高かったように記憶しておるのですが。悪いが関東は離れて久しいので今の Recofan にも The Orb の album が転がっておるかどうかは定かではありません。この際だから言っておくと Recofan 大森店には大変お世話になりました。Dan Curtin の "The Web of Life" を 500 円くらいで入手した恩は一生忘れないつもりであります。
それはさておき "U.F.Orb"。ambient と dub と house を同列に並べて桃源郷へ let's go な The Orb の姿勢は今作でも揺るぎなく、ぽやーんとした音像と house な beat 感が同居した track が延々と続いていきます。小生は ambient 即ち beatless という認識の人間、即ち重力に縛られた old type な人間ですので、この album のように beatless もあれば reggae beat も house beat もあるよ、な album だと方々に色目使いすぎじゃね、と思ったりもします。と何だかんだ言ってますが album 通して聞いてみればその音圧の薄さが固有の印象固定を妨げてしまい、ついつい何度も repeat させられてしまう、そういう druggy な魅力のある album でもあるわけで。いやはや、こういう音にはあまり深入りしたくないなぁ。
という訳で The Orb はヤバい、深入りするべからず、というのが小生の The Orb 評であります。
UK の IDM な人たち、Autechre の 1999 年作。Warp から。
刈谷のとある中古盤屋で入手したこの CD、1999 年作とのことですので release 後即売られた系と思われます。あの日は雨でしたね。Underworld の "Second Toughest in the Infants" と一緒に買ったんじゃなかったっけ。
Warp のとろにか組の中でも極北をひた走ってるのが Autechre でありますが、小生には全くその音楽性が理解出来ず、この album も数回聴いただけでお蔵入りにしていたという経緯があります。んで久々に聞き直しているわけですが、意外と聴き易くて吃驚。小生の耳もそれなりに耐性が出来てきたってことでしょうか。
いかにも IDM な glitch 音が横溢する album で、基本は hip hop な beat 感の track 多め。ですが中にはどりるんもあれば屋内系 ambient もありで、それなりに幅広い曲想で進行しており、そういう多彩な展開が聴き易さを助長していると。それでもやはり奇妙奇天烈さは拭えず。computer の random remix で適当に作った疑惑の残るような IDM sound が炸裂しております。こういう無機質な音像の中に humanic な groove を注入したのが oval の諸作と思いますが、Autechre は正直何考えてるのか解りません。まぁ、その匿名性がむしろ Autechre ぽいと言えなくもないです。名作とは思いませんが、IDM の一つの試金石になるような album とは言えるのではないかと。
San Francisco の電子音楽家にして programmer、Kit Clayton の 1999 年作。~scape からの release。
Autechre 同様に、昔はこの album も暗い怖いキモい系の electronica と思ってましたが、聴き直してみればそれほど聴き難い作品ではなかったです。まぁ、前半に暗い怖いキモい系の音響 ambient とか glitch noise な electronica を配置しているのでそういう印象になったのかも知れぬ。plug-in 製作者としてはやはり音響の限界値をぐりぐり攻めたくなるのは止むを得ない所か。とりあえず我慢して tr.4 "Aspoket" 辺りまで聴けば electro dub house な Kit Clayton 節にご対面と相成りますので頑張って聴いて下さい。
まぁそう follow してみたは良いが electro dub house の記名性など小生に判別できるものでもなく、Kit Clayton ならではの特徴は何かと問われても「electro dub house 的な何か」としかい言いようがなかったりもするわけです。とかく当時は IDM で house やれるんだぜーへへーん、な安直さが横溢していた時代でありますので、こういう音が出せれば万客おーるおっけーな風潮ではありました。現在は沈黙を保っている風の Kit Clayton さんですが、ここらで IDM の進化ぶりを披露して頂きたいものであります。