Noisy Days in August, 2012

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2012.08.29 (Wed)

Koenji Hyakkei / Nivraym - Remix

 高円寺百景、第八期(?) の member による 3rd album。2001 年発表の album ですが、これは第 15 期(?) member による remix とのこと。もう何が何やら。
 四小説毎に変わる minimal phrase、全編に漲る変拍子への偏愛、それでいて hard drivin な展開と、絵に描いたような高円寺百景の図であります。prog rock の trance 解釈もここまで来れば立派な dance music。どのへんが remix なのかは解りませんが人力 trance の行き着く果てにこの band が屹立していることは間違いありますまい。ここまで技量の溢れる人たちならば free improvisation に向かってもおかしくないわけですが、あえてその一線を越えずバカテク ensemble で groovy な空間に止まるというその entertainments 振りを賞賛せずにはいられない。これもまた pops の一奇形であります。

log modified: 2012/08/30 02:31:02 JST

2012.08.30 (Thu)

吉川 英治 『私本太平記』

 講談社電子文庫版で先日読了。全 13 巻。ちなみに紙出しの文庫版だと全 8 巻ですが、電子版は帖ごとに出してるから 13 巻分になるんだそうな。どうなんでしょねこういうの。端から見ればぼったじゃねーのと思われても仕方ない level。ほんと勘弁してほしいです。
 太平記はちゃんと読んだことなくて、北方謙三が時代小説に転向したときに書いてたものを何作か読んだ程度。『破軍の星』は名作でしたね。いずれは北方太平記も改めて追いかけていきたいところですが電子版がろくに出てない現状では如何ともしがたい。北方謙三の電子書籍なんて official では『水滸伝』くらいしか出てないんですよ現状。出版社の営業努力が切に望まれます。自炊潰すのにやっきになる以前にやることあるんじゃねーのかと。おっと今のはおふれこで。
 で、吉川版太平記。若かりし頃の足利高氏が京を物見遊山するところからお話が始まります。北条一門の堕落した施政、各地に溢れる尊皇の気運、地方の豪族は天下の旗色を伺いながら幕府派か倒幕派に付くかを虎視眈々を窺っている。高氏は佐々木道誉の言に惑わされたりしつつ、田楽座の藤夜叉を見初めて過ちをやらかし一子を儲ける。帰郷した高氏は先祖の遺文を見て倒幕の意志を固めるが、時期を窺って北条に阿りつつ遺恨のある新田勢と密かに通じる。やがて後醍醐帝が兵を挙げるが高氏は幕府派として参戦、後醍醐帝は敗れ隠岐に流され、持明院統の光厳天皇が新たに擁立される。この頃の天皇家は持明院統と大覚寺統という二つの血脈が交互に天皇の座を取っていたのですな。この仕組みが既に南北朝を用意していたと言われても仕方ないと思われます。やがて隠岐を脱出する後醍醐帝、鎮西に向かった高氏は幕府に謀反、鎌倉近辺にいた新田義貞は鎌倉を攻めて北条一門は瓦解。後醍醐帝による建武の新政が始まり、高氏も天皇から尊氏の名を与えられ感激するが、王政復古を目論む余り世情とかけ離れた政策を繰り出す新政権に世間は幻滅、武家の総大将たる尊氏の元に人が集まりだし、やがて南北朝の争乱が沸き起こる……。

 とりあえず感想としては藤夜叉の扱いが不憫すぎる。尊氏が庶子の不知哉丸、後の足利直冬をあまり可愛がらなかったのは確かなようですが、母子ともに里におきっぱなしで、たまりかねた藤夜叉が目通り願っても捨て置くとか、武家の体面はあるにせよ扱いが酷すぎる。こりゃ恨まれても文句は言えません。尊氏の正妻の登子も出生は立派な北条方の赤橋家で、彼女の実家一門も鎌倉幕府が倒れた際に潰されたわけで、やっぱり不憫極まりない。吉川英治の作品で女性が描かれることはあまりないように思いますが、いざ舞台に出るとなると誰もかれも酷い扱いを受けるのはこれどうしたものか。『神州天馬侠』の咲耶子も最後は放置 end でしたし。まぁ、昔の小説だとこういう展開は多いのかも知れません。あ、後醍醐帝の姉女房な位置づけの阿野廉子については大いに結構な描かれ方であったと思います。後醍醐帝の置き脱出のどさくさに紛れて後妻を海に突き落とすとか、怖い女振りを発揮していました。
 南北朝時代てのは群雄割拠というほどではないですが状況的には内乱また内乱で、北条方の残党の蜂起とか倒幕派の京への進軍とかで北も南もてんやわんやな状況だったようです。そういう状況を巧みに利用する佐々木道誉の暗躍、後醍醐帝への忠誠が逆に帝から遠ざけられる羽目になる楠木正成、そんな楠木の忠心を真に理解しながらも敵対せざるを得ない尊氏、と、この辺の男たちの葛藤は流石に吉川英治らしい dramatic な筆運びで堪能させていただきました。赤松円心や北畠顕家といった南北朝時代の顔役は若干見所が少なかったような気もしますが、作者晩年の作ということもあり、書き急いだ印象は否めません。が、とりあえず通しの太平記として指標になる一作とは言えるかと思います。

log modified: 2012/08/31 03:44:01 JST

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