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Jean-Philippe Viret (b)、Edouard Ferlet (p)、Fabrice Moreau (ds) の trio による jazz 演奏、2008 年発表。
今作からは drums の人が変わっていますが、三位一体音楽大聖堂路線は変わらず。lyrical な Ferlet の piano、arco でも pizzicato でも隙あらば歌いにかかる Viret の bass は今回も強烈な存在感を示しております。これら魔人の相伴を仰せつかった Fabrice Moreau の drums は、あまり前に出ず jazz manner に則った控えめさで綺麗な納めかたをしております。まずは無難な馴染み方ということで、上手い立ち回り方と言えるのではないでしょうか。
tr.1 "Peine Perdue" や tr.2 "Les Arbres Sans Fin" のような、この trio ならではの叙情性と構成美が楽しめる track はやはり耳に心地良い。その一方で、tr.5 "7 A Voir" や tr.6 "Dans La Peau D'un Autre" のような abstract な sound もこの人たちの懐の深さを窺わせて面白い。これが jazz 王道、とは思いませんが、jazz と minimal を煮詰めた先に現れたこの音像は、理知的でありながら筋肉質、優等生が一肌脱いだらまっちょだった、という微妙な意外性に通じるものがあります。これがあにめだったら一発芸で終わってしまうところですが、日々の地道な鍛錬の積み重ねがその姿に現れていることを私たちは忘れてはいけない。何の話だかさっぱり解らなくなりましたがこの album も例によって名作であります。
ぴあのとろにか詩人、小瀬村晶の 2008 年作。
先日の東日本大震災の影響は今だ色濃く、連日の報道で目の当たりにする津波の惨状に心痛め、うちの宿り木でも関東圏の社員は出社見合わせとか各種行事取りやめとかで慌しく、その一方で密林に注文した品が普通に届いたりすることに驚愕したり、巡回している音系 artists の行動力や発言に感動して涙したり、翻って我が身を省みれば例によって連日残業だったり、しかし勤務中に携帯に地震警報が入ったときには真っ先に机の下に隠れたり、という感じでばたばたしております。小生の数少ない知人友人及びこれまた数少ないであろう当 site の読者諸氏の息災であることを祈っております。
こういう状況ではどうにも派出めな album には手が伸びず、じわりと沁みる作品ばかり最近は聴いております。小瀬村晶のこの album も、穏やかな日常の風景画を思わせる sound structure で、piano の minimal な refrain を中心に、electro な装飾と細やかな beats で静謐な空間を創出しております。tr.6 "Light dance" は美メロ師の会心の一打として今後も語り継がれることでしょうが、それ以外の tracks でも極端に走らず穏やかな心象風景を描いているところに、この人の構成力の確かさというか、減音と抑制の美学を窺い知ることができるでしょう。
piano 独奏での tr.14 "Smile"、この牧歌的な phrase が今はとても胸に痛い今日この頃。