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於地紘仁監督作品、全 25 話。
金髪天然ボケ少年が cello で Bach の無伴奏弾いて、主人公の姉ちゃんを泣かせる話。恐るべし鈍感力。って違うのか。
音楽無知姉ちゃんが魔法の violin を授かって神技を披露し、美男侍らせる身分に上り詰めるも、奮発しすぎて魔法が消えてしまい天国から地獄へ。しかし持ち前の健気さと looks を武器に、地べたから再び頂点を目指すというお話であります。いやこれも何か違うような気がするが。
romance ものとしては微妙な寸止め状態でずるずるのままですし、音楽ものとしても私頑張ってますぅな描写は多いものの演奏場面の演出が半ば止め絵だったりで、どうも煮えきらない出来栄えなのですよ。とはいえ魔法が解けてからの展開は王道少女漫画な自己再生話になっておって、それなりに見応えのあるお話でありました。
Tallinn Chamber Orchestra の演奏による、Estonia の作曲家 Heino Eller (1887-1970) の作品集。1999 年録音、2001 年発売。ECM New Series の 1745。
力強くかつ柔かい orchestration が心地よい album であります。Estonia は Balt 三国の中で北側に位置する国で、長らく USSR に属していた国。つーてもピンと来ませんが、この哀愁を帯びた叙情豊かな音を聴くとそういう国なのかと納得です……ってほんとかよ。寒い日に聴くとしみじみ泣ける逸品。CD の booklet には弟子筋にあたる Arvo Part が comment を寄せております。
ちくま文庫版で読了。classic の名曲百曲の紹介本。
1 作家 1 曲の縛りはなく、Beethoven や Mozart、Brahms に Tchaikovsky に Dvorak 辺りは頻度高めで登場。その一方、有名所では Mahler や Bruckner や Grieg は取り上げられず、小生気にするところの Busoni や Messiaen や Hindemith は影もなし。出版されたのが 1970 頃というのもあるんでしょうが、昔も今も名曲は名曲ですか。
名曲解説と言うよりは、それぞれの曲を元にしての音楽 essay といった趣で、曲を知らずに読んでも楽しめます。メンコンからの発想でドボコン、ブラコン、ベトコンと繋いでいく件は面白いですな。尤も、用語としては定着している節もありそうですが。Shostakovich との対談時の裏話や、ベト 9 での maestro 講釈も、洒脱な文章で語られていて印象的でありました。
Chris Delaporte & Pascal Pinon 監督作品、2003 年。
巨大な樹木で出来ているような星 Axis では、人々が樹液を神に捧げ、虫を食して生きていた。だが樹液は次第に採れなくなり、神の怒りが地震となって村人を恐れ慄かせる。活発な少女 Kaena はそんな神を敬うのに反発を覚え村を飛び出す。Kaena は夢の中で、この星が死にかけていること、青い光が自分を呼んでいることを知らされていた。やがて Kaena は、この Axis がかつて壊された巨大宇宙船で、その生き残りが帰郷準備を進めていることを知るが……。
France 産の 3DCG anime movie。宇宙に水に樹木と CG 映えする素材は揃ってますが、お話の方は壮大なようでいて実はへろへろなので観ていて退屈であります。落ちも何だよそりゃな展開だったし。駄作。
Christopher Nolan 監督作品、2005 年。
栄華を誇る大都市 Gotham City、しかしその一方で貧富格差は広がり、暗がりで悪が羽振り良くのさばっていた。大富豪の Thomas Wayne (Linus Roache) は街に monorail を敷いて低所得者の交通の便を良くしたりして、Gotham City の改善に乗り出していたが、志半ばで凶刃に倒れる。その息子 Bruce Wayne (Christian Bale) は、執事 Alfred (Michael Caine) や幼馴染の Rachel Dawes (Katie Holmes) に支えられながら生きていたが、正義の心から裏世界の顔役 Carmine Falcone (Tom Wilkinson) に一人戦いを挑み、自分の無力さを知る。刑務所で鬱屈していた Bruce に、Henri Ducard (Liam Neeson) と名乗る男が接近し、Bruce に正義を成すための道を示す。導師 Ra's Al Ghul (Ken Watanabe) の元で修行を積んだ Bruce は、やがて自分の心に潜む恐怖を乗り越えるべく、その恐怖と再び対峙する……。
Bruce Wayne が Batman になる過程を描いた映画であります。Gotham City は monorail が走るとはいえまだ普通の街で、まだまだ退廃と狂騒の街には程遠い。Bruce Wayne も正義とは何なのかと思い悩む普通の青年から始まり、いろいろ経験する中で自分の使命に気付いていくと。こういう自分探しな super hero ものって最近多いような気が。世間的に中東で揉めておる最中だから、Hollywood 的にはこういう内面探求な theme は取り上げやすいのかも知れん。ついでに haro ものの revival も目論めて一石二鳥……と、そうそう上手くは行きませんって。
Tim Burton 版 "Batman" は如何せん Gotham City の造型が凄すぎた。あの街あっての怪人、あの街あっての Batman、といった刷り込みがどうしても前景に出てきてしまい、"Begins" を観ているとその普通な情景に違和感がぞわぞわ湧いてくるのです。お話の軸になる正義の在り方についても、ある意味 Gotham City そのものを悪と取るか否かという問いになっていて、お子さまには解り難い大人向けな仕立てなので、観終わってみると何か燃焼しきれてない印象が残る。
とはいえ、山での修行を終えて Gotham City に戻ってきてから Bruce が地道に Batman として確立していく様は観ていて楽しかったり。研究所の Lucius Fox (Morgan Freeman) とつるんで Bat な item を揃えたり、刑事 Jim Gordon (Gary Oldman) に正義の志があると見て取ると事件に巻き込んで協力させたり。正義だけど外見も心も黒い Bruce Wayne、そういうところはやっぱ Batman ですなぁ。
豪華な cast 陣で皆さん楽しんで演技している様が伺えますが、小生的には Alfred 役 Michael Caine が、Bruce Wayne に向ける微笑みに心打たれたのであります。こりゃ孫にモテる type の爺さんですな。
「艦長、出航準備完了したそうです」
凍り付いていたハウザーがはっと我に返る。
「オルクス発進せよ」
ブリッジ内の奇妙な沈黙に、反射的に答えたハウザーはミスに気づいた。咳払いして続ける。
「もとい、ルキフェラス、出航せよ」(page 86)
長年の慣習はなかなか捨てられんもんですな。ソノラマ文庫版で読了。ARIEL 番外編であります。
地球でのどたばたを終えて核恒星系に戻ったハウザー達は、ぼろぼろになった戦艦オルクスの代替艦を探していたが、そんな彼らに親会社のダイアナは大企業ゲルニクスの新造艦の monitor を申し出る。それを受けたハウザー達だったが、新造艦に情報工作の expert であるシンシアも乗ると聞いて恐れ慄く。かくして新型艦の test 航行は、銀河の半分を敵に回しての模擬戦争へと雪崩込む……というお話。
例によって情報戦に御執心な様子。しかしいくらシンシアと新造艦の能力が高いからといって、帝国がいいように扱われておるのは帝国株を安売りしとるような気もしますな。ARIEL 本編でもそうでしたが、この世界の帝国ってあまり威圧感が無いんですよね。
まぁ、どたばたしつつもハウザー艦長は忙しい状況を楽しんでおったようで何よりです。第三艦隊に追われながらも律義に test 項目を消化していくところが如何にも現場な人なのでありました。
New York の house DJ、Joe Claussell の本人曰く 1st album。2007 年発表、CD 2 枚組。
いや前世紀末に発表された "Language" も傑作でしたが、あれは project でやったものだから 1st album ではないそうな。そういうところにこだわりますか。
で、この本人曰く 1st album の方はというと、大地と宇宙がぐるぐると渦成す spiritual な dance music なのであります。この人らしい tribal な house も多く収録されてますが、non beat な ambient ものや reverb かけまくりの piano や strings による new age な音、生演で 70 年代 fusion を彷彿とさせる音なども随所に織り込まれていて、scale のでかい spiritual music を展開しております。いやもうこのひたむきな spiritual さは一線越えすぎてて、思わず一歩引いてしまいかねんとこまで行ってますが、現代の祝祭司として floor に君臨する大御所らしい堂々たる作品には違いないのです。何度も聴いてるとじわじわ来る一枚であります。
detroit techno follower の新人としては近年最も成功した人の一人に挙げられるであろう、Joris Voorn の 2nd album であります。2007 年発表。
1st album の "Future History" は迷い無き疾走感と colorful な synth で押しまくった青春ど真中 techno でしたが、この 2nd では若干 listening techno 寄りな作りで、大人な成長ぶりが窺えます。
synth な上物の美味さは相変わらずですが、album 通しての印象はまだ薄味で、この路線の先駆者である Technasia や Slam の域にはまだ及ばない様子。いや、良く出来てはいるんですけどね。地道に頑張って頂きたいと思っておりまする。
SF 対戦弾幕 action shooting game、「旋光の輪舞」の soundtarcks 第二弾。Rev.X での使用曲とのこと。2007 年発表。作曲は Yack. こと渡部恭久氏。全 23 曲。SRIN-1030。
まぁ何つか小生この game 未だにやった事なくて申し訳ないのですが Xbox360 も明るい家族計画には入っていませんのでますますセンコロとは縁がないのです。
ということで、この CD 聴いて目の前に 2 次元な情景が想起されることもないわけで、その意味では素直に音に耳傾けられるのでありますが、character 偏重な音世界らしいので知識無しに聴くことに若干の後ろめたさが無いわけでもない。という裏事情はさておき。
近年の無国籍 fusion 志向と激甘少女愛的 romanticism を一層押し進めた Yack. 世界が繰り広げられる一大音楽絵巻であります。しかしやはり独特の掴所のなさがあって一筋縄では行かない。音ネタは似たり寄ったりなものが多く、それが世界観の統一に貢献しつつ、しかし過剰な arrange により曲の印象も同工異曲に聴こえてしまうという pattern か。tr.23 "Last Stand" 辺りは曲展開の増幅が極端なのでいい感じに聴けますが、こういう曲は使いどころが難しいでしょうなぁ。
ちなみに Carpe Diem とは、深夜げーまー族への愛の讃歌という意味であります……って、本気にしないように。