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日本の beat maker、Riow Arai の 2006 年作。
余人の追随を許さぬ鋼の breakbeats が信条な Riow Arai、この "Survival Seven" でも強靭な beat と bass が突っ走り、acid taste 溢れる上物がぴゅんぴゅん飛び交う Riow Arai な世界になっております。とはいえ前作に比べれば melody が立ってて synth もそこそこ豊かで、若干 funky & jazzy な緩さもあり。tough なだけでは生きていけない 7 枚めの漢な album。
にしても、この career にして underground なヤバヤバ感を未だ失わない Riow Arai は凄いのぅと思うこと暫し。
Kanzleramt の番長、Heiko Laux の 2006 年作。case には片仮名で「ハイコ・ラオックス」と書かれてますが歴とした EU 輸入盤。この極東では電器屋に間違われないかと心配です。いくら spell が違うとはいえ片仮名だとなぁ。
それはさておきこの人も release 速度が早くて、ここ数年は年 1 作以上は album ぶつけてくる男盛りで techno 盛りな人なのです。初期は detroit 寄りの hard minimalist として鳴らした Heiko Laux ですが、諸々の異種格闘技戦や Offshore Funk での活動を経て投下された今回の album では、german な太い kick を相変わらず聴かせてはいるものの、緩めの beat や情緒的な synth の上物などから、electro な house 路線と言っても良いような、耳に優しい techno に仕上げております。
がつがつせっつかずにゆるゆる高揚させる大人な技ですな。まぁ、歳とって熟成し始めてるのかも知れぬ。Diego や Alexander Kowalski に Kanzleramt の bright side を担わせておいて、党首はやや地味ながらも玄人好みな渋味親父路線を追求するの図。いや、良い positioning ではないかと。末永く活動して下され。
二人の船頭はそれきり黙って舟を出した。佐渡の二郎は北へこぐ。宮崎の三郎は南へこぐ。「あれあれ」と呼びかわす親子主従は、ただ遠ざかりゆくばかりである。
母親は物狂おしげに舷に手を掛けて伸び上がった。「もうしかたがない。これが別れだよ。安寿は守り本尊の地蔵様をたいせつにおし。厨子王はおとう様のくださった守り刀をたいせつにおし。どうぞ二人が離れぬように。」安寿は姉娘、厨子王は弟の名である。
子供はただ「おかあ様、おかあ様」と呼ぶばかりである。(page 18)
やがて安寿がげーむ依存症に、厨子王が妖怪おたくになろうとは想像だに出来なかった頃の一幕であった……というのは別の話。岩波文庫版で読了。
小生は鴎外が苦手でして、最初に読んだのが「舞姫」だったというのが実にいただけないのです。子供には解らん世界ですし。しかしよくよく振り返ってみるに、あれを除けば悪い印象はなかったりも。格別良い印象も無いんですがそれはやっぱ短篇だからかのぅ。
この短編集では鴎外の時代物がまとめられていて、「山椒大夫」「魚玄機」「最後の一句」の各編で見られる女性像に鴎外の才女好みというかつんでれ嗜好が伺えます。流石に文豪様、解ってらっしゃる様子。
Scotland の techno producer、Vince Watson の 2006 年作。Delsin からの release。
この人は detroit follower の中でも original detroit な香り漂う独特の作風で知られてますが、元々 Transmat 向けに作られていた track を中心にまとめられたこの album は、この人の career 中でも屈指の detroit techno 振りを発揮しております。かつての "Moments in Time" や、Aril Brikha の "Deepature in Time" を連想させる音であります。まろやかな synth がただひたすらに美味。
Luchino Visconti 監督作品、1942 年。邦題「郵便配達は二度ベルを鳴らす」。
田舎の restaurant に流れてきた宿無しの若者 Gino Costa (Massimo Girotti) は、そこで店の料理を出している若い人妻 Giovanna Bragana (Clara Calamai) と知り合う。Giovanna の夫 Giuseppe (Juan de Landa) は初老で、Giovanna は結婚生活に飽き飽きしていた。Giuseppe の店の手伝いに雇われた Gino は Giovanna と恋仲になり、二人で駆け落ちしようとするが、宿無しの生活を恐れる Giovanna は途中で引き返し、Geno は傷心を抱えて一人去り、途中で知り合った即売士 Lo spagnolo (Elio Marcuzzo) の商売を手伝う。しかし Geno が港町で商売しているところを、そこを訪れていた Giuseppe と Giovanna が発見し、Geno は Giuseppe の誘いで再び彼の店に戻ることに。その帰り道、三人の乗る車が事故を起こし、Giuseppe は亡くなるものの Geno と Giovanna は生き残る……。
まぁ筋は既に知っている話なんで別に驚きゃしませんが、全編これ愛だ恋だの応酬なので観ていて非常に疲れます。Italy の日差しは小生にはきついらしい。白黒映画だけど。
気が付けば 2006 年も大詰めでありますゆえ、ぼちぼち今年を振り返ってみるのです。とはいえ新譜にあまり心動かず中古と廉価の旧譜ばかり買い漁っておったのは例年通り。何故か今年は classical music に目が向き、先年来の Box Set 症候群にも悩まされ、心労のあまり虫歯にも掛かったというのは昔の話ではなくつい最近でした。泣かぬなら泣かされてみようとほほのほ。阿呆か。
それにしても某紙の best album 特集は総体的に最近の album ばかりが目立っておって真面目に年間総括しようって心意気が感じられんのは如何なものか。小生の愛聴盤との乖離は年々大きく広くなりつつあり、いよいよもって自分の耳を当てにして余生を送っていくしかないかのぅと思う今日この頃。おかしいねぇ、major な album ばかり買ってるはずなのに世間との温度差が広がっていくなんて。
それはともかく Therapy? の 2006 年作。孤高の泣きめろ hardcore band として登場し、長い試行錯誤の低迷期を経て、迷いなしの直球爆音 3 piece band としての style を確立した今の Therapy? はとにかく音に絶対の自信が漲っておって裏切られることがありませぬ。中年親父と化してなお不良魂の衰えぬ Andy Cairns ですが、今回は曲も何気に pop で良好、album の流れも基本 punk な hardcore で一気に聴けます。もうね、いらんことはしなくていいからこの調子でがんがん行ってほしいのです。
New York の重低音な人達、Helmet の再結成後 2 枚めの album。2006 年発表。
めたらーだった頃は典型的な重低音 hardcore もさんざん聴いたものですが、今になってみれば Helmet と Therapy? があればいいやと。どちらの band も今年は揃って album release してくれて有り難いことです。
Helmet と言えば大鉈でぶった切るような riff と変拍子が特徴ですが、まんねり化して久しいその style に固執し更なる重低音化を目指す Helmet は漢の中の漢な人達なのです。歳取ってふにゃふにゃになるあれやこれやとは大違いですな。この調子でめげずに頑張って頂きたいのです。
New York の post rock band、Battles の EP collection album。2006 年発表ですがねた元は旧譜の EP をまとめたもの。
そういえば Battles をまともに聴いたのも今年が始めてなのでした。ex-Helmet の John Stanier の drums で、Tortoise の hard-boiled 路線の曲をやらかしたらこんなんになっちゃいました風の minimal な hardcore であります。人力 electronica と言ってもいいですが、地が minimal なので聴きやすいです。音が音なだけに発展途上なのか完成形なのか俄に判じ難いという点はあるものの、これはこれで先が気になる人達であります。2007 年春頃に新譜準備中だそうな。