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Martin Campbell 監督作品、2000 年。
Peter Garrett (Chris O'Donnell) と Annie Garrett (Robin Tunney) の兄妹は、父親と共に rock climbing していた際に別隊の事故に巻き込まれてしまい、父親は二人を助けるために Peter に命綱を切らせて自ら墜落死の道を選んだ。その後 Peter は父親の死に責任を感じて山に登らなくなったが、妹の Annie は登山家となり、富豪の登山家 Elliot Vaughn (Bill Paxton)、有名な登山家 Tom McLaren (Nicholas Lea) を含む attack team の一員として、標高 8000m の K2 山頂を目指すことになる。だが頂上を目前にして山を嵐が襲い、team は雪崩に巻き込まれる。Annie、Elliot、Tom の三人は山の裂け目に入って一命を取り留めたものの、裂け目は大きな岩で蓋をされてしまった。その状況を base camp で知った Peter は、近くの Pakistan 軍駐屯所から nitro を借り受け、爆破によって裂け目に穴を開けて救出する計画を立てる。救出隊は総勢 6 人、その中には登山家で医者見習いの Monique (Izabella Scorupco)、それに山で遭難した妻の遺体を捜し求めて K2 に留まり続けていた登山家 Montgomery Wick (Scott Glenn) も含まれていた。6 人は 3 隊に分かれて救助活動を開始する……。
とまぁ、全編山、山、山なお話です。流石に山と雪崩と断崖絶壁だけでは物足りなかったのか、nitro まで持ち出して爆発もあり。危機また危機の連続で tempo 良く進んでいくので entertainment 性も高いし。
しかし肝心のお話がねぇ……。3 人助けるために 6 人が山に向かい、生還したのは 3 人。しかも nitro 絡みでお亡くなりな人が 3 人もいらっしゃる。無駄に死にすぎてる感じがします。「nitro を日光に当てるな!」って、nitro 筒は日光遮断してねぇのか。筒から nitro 洩れてたりもしてますが、筒の口ってそんなにゆるゆるなのか。あの辺はかなり喜劇してます。裂け目に閉じ込められた 3 人が、少ない物資と体力低下でぎすぎすした関係になっていくのは面白かったし、Vaughn と Wick の確執も最後まで物語に緊張を与えていたけれど、如何せん主人公 Peter に魅力が無さ過ぎる。Wick と師弟関係みたいになるわけでもなく、Monique とらぶらぶになる訳でもなく(最後に取って付けたような kiss scene はあったけど)、妹が兄を許す process についても説明不足なので、結局妹助けるために一人見境無く爆走するバカにしか見えない。こんな男に付いていってお亡くなりになった面々は哀れの一言。なむぅ。
最近見た山岳ものとしては "Scream of Stone" があるけれど、あの映画は言葉数が少ない分だけ山の存在感がひしひしと伝わってくる映画だったなぁ。それに引き替え、"Vertical Limit" は饒舌で action も豊富だけれど、山は危機のための舞台装置としてしか機能していない。まぁ、そこが Hollywood 映画ってことで。
Bille August 監督作品、1998 年。
パンを盗んだ罪で 19 年の刑期を務めた Jean Valjean (Liam Neeson) だが、元囚人という身の上のため、どの宿でも泊まることを許されなかった。しかし教会の司教は彼を客人としてもてなし、食事と寝る場所を提供する。金に困っていた Valjean は夜中に銀の食器を盗み出して逃走する。翌日、捕らえられた Valjean が司教の前に連れてこられるが、司教は Valjean に食器を与えたのだと証言し、さらに高価な燭台まで与える。司教の親切心に打たれた Valjean は、慈悲の心に目覚めるのだった。9 年後、Vigo の人望ある市長に収まっていた Valjean の元に、新しい警察署長が訪れてくる。その男は Javert (Geoffrey Rush)、かつて囚人だっt Valjean を監督していた男だった。Javert は法に厳格な性格であり、囚人が改心することなどありえないとの信条を持っていた。彼は娼婦 Fantine (Uma Thurman) の処遇を巡って Valjean と対立するが、流石に市長の権限には逆らえず引き下がることに。元は煉瓦工場で働いていた Fantine の処遇に責任を感じた Valjean は、身体を患った Fantine の看病を申し出るが、もう Fantine の余命は僅かだった。その頃、Valjean が逮捕されたという話を聞きつけた Valjean は裁判所に向かい、別人が Valjean として断罪されようとしているのを知る。黙っていられなくなった Valjean は自分がその本人だと名乗り出て、再び逃走者として生きる道を選ぶ。今際の際の Fantine から一人娘を託された Valjean は、Fantine の最期を看取った後、Javert の追撃を交わしながら娘と共に Paris に潜入し、修道院の庭師を務めながら娘を育てていく。10 年後、年頃の娘に育った Cosette (Claire Danes) は、修道院の外に出たいと Valjean に申し出る。Valjean は渋々それを許可し、二人の新しい生活が始まる。街は革命への機運が高まっており、Cosette は街頭演説をしていた若き革命家 Marius (Hans Matheson) に引きつけられる。だがそこには、革命運動に目を光らせる Javert の姿があった……。
わお、文芸大作。原作未読ですが見てしまいましたよ。主軸は Valjean と Javert の確執。前半は改心した Valjean に次々と押し寄せる人生の選択にひたすら涙々の展開。Valjean は有徳の人として、Javert は法に忠実な男として、何れも真っ直ぐな信念を貫いている様が描かれている。後半は Cosette が色気づくのを心配そうに見守る Valjean の様子が何ともはや。人格者とはいえ一児の父親には違いない。Cosette が革命家と付き合っていると知ったときの狼狽えた様子が良いです。でもって Valjean と Javert の対決は最後までもつれ込み、原作知らずの小生はどう決着付くのか解らず結構緊張しました。いやぁ、良い映画でしたよ。町並みや衣装へのこだわりも感じさせて、細かいところまで気配りが効いている感じ。
それにしても Liam Neeson、個人的に嫌いな役者ではないのだけれど、彼の出てる映画って何故か地味な印象が残るな。まぁ、そこが良かったりもするんですが。地味ってのは庶民派っぽい、ということで好意的に考えてください。Javert 役の Geoffrey Rush も好演。悪役っぽく描かれてますが、彼もまた信念に生きた男。自らの罪ですら許すことのできない愚直な人物ということで、信念に魂を捧げ狂気寸前まで到達している様を無表情な仮面で表現してました。その冷たい演技があってこそ、あの last scene が生きてくる。舞台も近代ってことで、retro な役者さんを選んだって解釈も可能。この二人で「逃亡者」は流石にやれないし。良い配役だったと思いますよ。
ぼちぼち勉強始めてます。とか言いながら今日の式神 II、玄乃丈で 5-1。晋さん最終段階で、ちと走りすぎました。反省。
サム零が稼動してますな。相変わらず大味そうな game に見えました。小生は真サム以降はやってないので当分様子見、です。
Psyvariar II は 10/29、らしいです。
Alfred Hitchcock 監督作品、1954 年。
cameraman の Jeff (James Stewart) は、仕事中の事故が元で足を骨折してしまい、重たい gips で足を固められ、自宅で車椅子生活を送る羽目になっていた。彼は退屈しのぎに裏窓から apartment の住人たちの生活を眺めていたが、ある日、住人の一人である Thorwald (Raymond Burr) の行動を不審に思う。夜中に外出したり、包丁や鋸を新聞で隠したり。そして病気療養中だった Thorwald の妻は姿を見せない。そこに殺人の臭いを嗅ぎつけた Jeff は、恋人の Lisa (Grace Kelly)、看護人の Stella (Thelma Ritter)、そして友人で刑事の Doyle (Wendell Corey) らの協力を仰いで犯行の証拠を掴もうとする……。
予備知識なしで見たわけですが、armchair detective ものを映像でやってしまってたとは。主人公がろくに身動きできないという条件があるので、映し出される映像は Jeff の自室と裏庭から望む apartment の風景くらい。この制限のなかで drama が生まれ、飽きずに見続けてしまうという不思議。ここでも Hitchcock の視線は冴えてます。
裏窓から見た Thorwald の様子から Jeff や Lisa がいろいろ推論を組み立てていくわけですが、Jeff の言うことはなかなか人に信用されない。特に Doyle は流石に刑事だけあって、状況証拠だけでは直ぐに家宅捜索はできんと突っぱねまくるので、うかうかしてる間に Thorwald が証拠を隠滅しようと動くのではないかと Jeff は気になって仕方がない。だからといって自ら動くことも出来ず、Lisa といい雰囲気になっていても目は窓の外に向けられている。Jeff の感じるもどかしさは、我々観客が映画の進行に対して無力であることと繋がっていて、自然と観客は Jeff の視点を自らのそれと重ね合わせて裏窓の向こう側を覗こうとする。粋な魔法じゃないですか。というわけで小生も、Lisa が一人で Thorwald の部屋に忍び込む様を見てやめとけバカとか言ったり、Jeff の部屋に Thorwald が入ってきたときに恐れ戦いたりしたわけです。
最後の Jeff の姿にも笑ったなぁ。映画冒頭で Stella がいろいろ予言していたことが真実になった、ってことで、オチの付け方も素晴らしい。映画原作は William Irish の短篇だそうですが、これって原作通りなのかなぁ。それはともかく楽しめました。派手さはないですが美味しい映画です。
相変わらず detroit 周辺の club music が気になる今日この頃。というわけで detroit の producer、John Arnold が Ubiquity から出した 1st album をば。2003 年発表。
でもってこれも最近の detroit らしく latin で jazz で……という感じではないです。寧ろあからさまに 70's soul だったり funk だったり。特に前半の曲では soulful な男性 vocal を feature した track が多くて、そこに乗っかる楽器も fender rhodes だったり electric bass だったりするので、retro で懐かしい印象があります。tr.3 "Inside" なんてもろに Stevie Wonder してる感じだし。
かと思えば tr.6 "Fabric" では hip hop 寄りの打ち込みな beat を組み立ててたり、tr.8 "Anaconda" は speedy なノリで retro な雰囲気の breakbeats だったり。古い道具を新しい手法で鳴らしているので、新しいやら古いやらで何だか不思議な気分になってきます。last track "Neighborhood Science" は打ち込みではなくて生 band での演奏で、guitar や kora が organic な響きを醸し出していて圧巻。いいっすね、こういうの。
全体的にはすごく統一感があって、地味だけど背伸びしてない作りに好感が持てます。Recloose の 1st みたいな起爆性はないかも知れないけれど、これまた奥深くて黒い album ってことで、秋の夜長に聴くにはもってこいの佳作です。
今日は朝から小雨が降っていて、体調も今一つよくない様子。通勤電車の中では足に力が入らず、仕事中は微熱にまとわりつかれ、どうにも集中できなくて。
こういう気怠い日にはゆるゆるな音、ということで、こだま和文の 2001 年作。映画「ピストルオペラ」の outtake 集らしいです。ちなみに映画は未見。
いやもう、ゆるゆるです。ゆるゆるだけど何気に爽やか。おぼろな風景の中で刻まれる乾いた beat に身を委ねていると、雨の中に自分が溶け込んでしまうような怖さを感じてしまう。歌ものの tr.4 "Noraneko no Theme" も laid back した昭和歌謡の怪しさに満ちているし。どうにも内に内に籠もっていくような音です。album 全編に広がる dub な音処理がそれに拍車をかける。
こういう音を聴いていると、残響の美しさに聞き惚れてしまいます。ぼーっとしながら聴くのがよいかと。
singer songwriter ものへの愛着ってのはあまり無い小生ですが、こういう album は嫌いじゃないです。ex. Gastr del Sol の David Grubbs、solo 名義作で 2002 年発表。
minimal な phrase を積み上げつつ、木訥とした歌を聴かせる。drums に John McEntire、guitar に Noel Akchote を迎えての band sound が主軸で、track によっては Matmos による電子音の collage が被さるけれど、冷たさよりも人肌の暖かさを感じさせる作りになってます。とはいえ、激 pop というわけではないし音はスカスカだし歌は下手だし(失礼)と、普通に聴けば良いとこなしのへたれな album になりそうなもんですが、でも nostalgic な melody の美しさにひたすら項垂れて聴き入ってしまうのですよ。
残業続きで荒みきった心には、痛いくらいに直ぐ染み込んで涙腺を緩ませてしまうという、哀しく耽美で罪作りな album。お勧め。
新譜が 9/18 から 10/22 に発売延期になっているとも知らず、方々探してしまいましたよ。仕方がないので 2001 年発表のこの album 聴いて復習しときます。
今や post rock なんて言い方も目新しいものでは無くなってしまいましたが、Buffalo Daughter は rock してても post rock です。heavy な guitar が鳴っても disco な beat が鳴っても、特定の genre に填らないふわふわした感覚が付きまとっている。それでいて筋の通った rock な雰囲気も持ち合わせていて、何がしたいのか解らないけれど音鳴らしてがーっと行ってぱーっと弾けるって感じか。良く解らないな。自分でも良く解ってないよ。
久々に聴いても何だか焦点の合ってない album だなぁと思いつつ、微妙に暗くて heavy な響きに引き込まれてしまって。テキトー感に溢れているけれどいろいろ作り込んでもいるような。その曖昧さが、listener をも考え込ませてしまうという……。次はどういう展開になってるんだろう。
Bernardo Bertolucci 監督作品、1981 年。邦題「ある愚か者の悲劇」。
Italy の片田舎で大きな cheese 工場を経営している Primo Spaggiari (Ugo Tognazzi) は、誕生日祝いに息子から送られた双眼鏡で外を眺めているときに、その息子が何者かに車で誘拐されるところを目撃してしまう。Primo の妻 Barbara (Anouk Aimee) は、身代金が要求されることを恐れて金の工面を画策し、Primo に経営不振の cheese 工場を手放すよう詰め寄る。息子の恋人と称する Laura (Laura Morante) は、さらわれた息子の様子を知っているように振る舞って Primo を当惑させる。家には消印のない手紙が届き、そこには息子の筆跡で 10 億リラ用意するよう書かれていた。そして息子を誘拐した犯人と繋がりがあると思われる Adelfo (Victor Cavallo) から、Primo は息子が殺されたと知らされる。邸宅を売り払って金を作ろうとしている妻に、Primo はなかなか息子の死を話せない。やがて Primo は、身代金となる金で cheese 工場を再建させるという計画を思いつく……。
優柔不断な中年男が息子の誘拐に振り回されるというお話。誘拐された側の視点は全くなくて、人生にも状況にも疲れ切っている Primo の monologue がぽつぽつと挿入されてます。私小説風、と言ってもいいでしょう。とはいえ、人生投げ遣りなオジサンの言うことなのでさほど面白みはないです。それよか息子を助ける一心で動き回る Barbara と、Primo を小悪魔的に魅惑する Laura の美しさにひたすら惚れ惚れしませう。絶妙な光の当て方によって、お二人の美しさも一際映えてる感じ。
Bertolucci 監督の作品って、小生は今一つ面白みを感じないのだけれど、舞台の見せ方への拘りには時々感動させられます。とはいえ、plot は弱すぎですねぇ。結局、誘拐事件が息子の狂言だったのか、息子が左翼運動家というのは本当か、Laura や Adelfo の思わせぶりな言動は何だったのか、そのあたりに何の解決も示さないまま、推測と妄想が延々と続いて最後は良く解らないままにオチが付く。最後の dance hall での shot で、Primo が除け者にされた状態で happy end してるという情景が描かれるけれど、あの場面での Laura と Barbara の視線も意味ありげだが実は意味なんてないのかも。そんなこんなで、ずっと肩透かしを喰わされたまま終わったような気がします。まぁ、それが愚か者の視点だと言うのなら、それはそれで監督の思惑通りってことなんでしょう。見終わると疲れだけが残る映画でした。
Kenny Drew (p)、Paul Chambers (b)、Philly Joe Jones (dr) の trio で、1956 年録音の Riverside 盤。
つか、Kenny Drew に Riverside 盤があるってことすら知りませんでしたよ。Riverside と言えば Thelonious Monk や Bill Evans しか思いつかない小生は所詮後追い世代。
でもまぁ、Kenny Drew らしい軽やかさはこの debut album でも遺憾なく発揮されてます。この人、若い頃からこんな音だったんですねぇ。洗練されているけれど嫌みじゃない。Paul Chambers も Philly Joe Jones もいつも通りの好演。tr.8 "It's only a Paper Moon" 聴いてて、楽しい jazz ってのはこういう音のことかも知れんなぁと思ったりしました。