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先日の Yack.氏 column を祝して聴き直し。1996 年発表。
Taito 初の 3D 格闘 game、ってことで、印象は殆ど残ってません(爆)。とろとろ動きつつ連続 combo ?な遊び方だったような。置いてた店舗も少なかったし。大体、小生は格ゲ苦手なんじゃよ。それ言い出すと得意な game genre なんて無いけどさ。
しかし、改めて聴くと流石 Yack.氏と言うか何というか、格ゲとは思えぬ抑えた作りで唖然とします。特に album 後半の曲を聴いていると、これが格ゲの soundtrack だと言うことを思わず忘れてしまうほど ambient な音響で、こういう曲を BGM にして殴り合ったりはしないよねぇ……と思うこと暫し。でも殴り合ってたりするんだろうなぁ。そこはかとなく曲の中に物語を詰め込んでいるような作りも格ゲらしからぬ感じで、面白いです。
で、前半曲の方は個々の曲が自己主張しているような、quality の高い曲が揃ってます。打ち込み主体ではあるけれど、acoustic な音を塗した techno 〜 fusion な曲。かっこええ曲ばかりです。Yack.氏の pop な側面が押し出されている様子。効果的に織り込まれている SE や voice も良い味出してます。
というわけで、全体的に悪い印象は無いのですが、"Metal Black" ばりの強烈な世界観があるわけではないので、フツーに良い album という感じ。
John Badham 監督作品、1995 年。
会計士 Gene Watson (Johnny Depp) は、娘の Lynn (Courtney Chase) と共に仕事で LA にやってくる。しかし降り立った駅で、警官に偽装した Mr. Smith (Christopher Walken) と Ms. Jones (Roma Maffia) に Lynn が誘拐される。彼らは Gene に、「娘を助けてほしければ、13:30 までに州知事 Eleanor Grant (Marsha Mason) を撃ち殺せ」と命じ、遊説のため hotel に泊まっている Eleanor の行動予定表と銃を手渡す。何とか殺人を犯さずに娘を取り戻したい Gene、しかし行く先々に Mr. Smith が現れ、しかも銃器を持っているにもかかわらず body check を pass してしまったりと、やたらと都合良く進む。Gene は次第に暗殺計画の根深さを思い知ることになるが、靴磨き職人の Huey (Charles Dutton) に話を打ち明けて、暗殺計画を阻止しようと尽力する……。
時計が正午を告げるところから始まり、劇中時間と視聴時間が同期しながら進んでいくという、奇抜な構成の映画です。でも、それだけなんだよなぁ。何で普通の市民に過ぎない Gene に人殺しさせようとするかなぁ。例えば Mr. Smith が州知事を射殺して、Gene を下手人に仕立て上げるって方が確実やと思うし。劇中で誰か言ってたみたいに「遠くからライフルで射殺」って線もありだと思う。設定の必然性を疑いつつ映画に付き合うと、見てる方も疲れてくるんですけど。「じゃあ見るなよ」って? だって初めて見たんだもの最後まで見たいよ見せてよぶーぶー。
Johnny Depp が怪しさの欠片もない普通のお父さん役で、娘から「パパは hero」と言われてはにかむ場面なんかは妙に絵になる良い演技でありました。義足で Ms. Jones を殴り倒した Huey 役 Charles Dutton にも笑わせてもらったし、本性ワルなんだけど自分が品定めした道具である Gene を気にかけて止まない Mr. Smith 役 Christopher Walken も、難しい役を怖い顔しつつこなしていて好印象。あと、物語終盤、Mr. Smith との格闘で Gene の腕時計が階段に投げ出され、後にその時計を暗殺計画の黒幕が踏みつけて過ぎる場面は、この映画の趣向を上手く汲んでいる演出だと思いました。
総じて、細部は良く出来ている、idea もいい、なのに肝心なところが抜けてるという勿体ない映画でした。二度は見なくていいな。
Francois Girard 監督作品、1998 年。
17 世紀 Itary は Cremona。violin 職人 Nicolo Bussotti (Carlo Cecchi) の妻 Anna (Irene Grazioli) は、老婆 Cesca (Anita Laurenzi) に自分の未来を占って貰う。そこで引いた 5 枚の cards は、後に Nicolo が生み出す完璧な violin が経巡る奇妙な運命を暗示していた……。18 世紀 Vienna では violin を手にした天才少年 Kaspar Weiss (Christoph Koncz) と彼に魅入られた音楽教師 Georges Poussin (Jean-Luc Bideau) の話、19 世紀 Oxford では作曲家 Frederick Pope とその愛人 Victoria Byrd (Greta Scacchi) の話、20 世紀の上海では文化大革命の中で violin を生き長らえさせようとする Xiang Pei (Sylvia Chang) の話。そして現代、Montreal で競売にかけられた violin。そこには楽器専門の鑑定士 Charles Morritz (Samuel L. Jackson) の熱い視線があった……。
赤い violin が繋ぐ 5 つの物語。個々の物語にはそれほど吸引力が無いのだけれど、一つの violin を軸に独立した物語を組み合わせているからそう思えるんだろうな。まぁ、時代も国も異なる話の組み合わせでは、violin 以外で話を関連づけるのは難しかろう。とはいえ、競売の場面ではそれまでの episode に縁のある人達が揃っていたりして面白いんですけどね。しかもその人たちは結局 violin を手に入れられないという……哀れ。
長く使っている道具には魂が宿ると言われるけれど、この映画ではそういった自然発生的な呪術性ではなくて、本当に violin に魂込めてるってところが凄いです。そりゃあ violin も赤くなりますわな。
予言によれば violin の旅は終わることになっているけれど、金や欲や思想といった外部の鎖から解き放たれて、普通の庶民に使われるってオチで良いですかね。
John Corigliano の音楽も秀逸。物悲しい violin の旋律が寂寥感を煽っていて良い感じでした。
Barry Levinson 監督作品、1998 年。
太平洋上に浮かぶ軍艦の群。その一つに心理学者 Norman (Dustin Hoffman) が連れてこられる。そこには生物学者 Beth (Sharon Stone)、数学者 Harry (Samuel L. Jackson)、宇宙物理学者 Ted (Liev Schreiber) らの顔もあった。彼らは、300 年前に深海に沈んだとされる「異星からの宇宙船」の調査部隊員として駆り出されてきたのだった。Barnes 大佐 (Peter Coyote) の指揮のもと、海底基地を拠点に調査を開始する一行。しかし、実は宇宙船は未来の地球で作られたものと判明、その驚きも冷めぬうちに一行は奇妙な巨大球体を発見する。しかも、それは生きているようだ。だが、その発見とともに一行の周囲で奇妙な事件が続発する……。
深海モノもよく出てきますなぁ。小生も "Deepstar Six"(邦題「ザ・デプス」)とか "The Abyss" とか "Leviathan" とか一度は見てる筈なのだけれど、共通して言えるのは「どれも内容忘れた」(爆)。だって忘れやすいんだよ印象的な場面とか無いし深海だし暗いしどれも似たような映像で密室で怖くて意図的に記憶を reset しちゃって海底基地から pod に乗って脱出しようとして与圧器が壊れてて pod の中で血がぶしゅうううっってのは何の映画でしたっけ……とまぁそんな感じです。
ええと "Sphere" です。グロい化け物とか出てこなくて、出てくるのはでっかいタマタマです。あ、タマは一度でいいそうです。デカタマ。デカイカも出てくるか。デカクラゲも。でも妄想なんですね。継ぎ目の全くないタマの中に入ったとされる方々は、一様にある力(*1)を手に入れます。でも当人たちはそれに気付かず、ひたすら暗い怖い助けて一人で出歩いちゃいかん彼奴が怪しいアンタも怪しい監禁してまえどうして信じてくれないのテメェら皆殺しだ!とドタバタを繰り広げます。最後は自殺願望がある Beth が仕掛けた時限爆弾、それに Harry の「300 年後に宇宙船が『未知との遭遇』するってことは、この発見をして生きて帰る人間はいないってことだ」説によりみんな死にかけるんですが、human drama の王道を突っ走る男 Dustin Hoffman 演じる Norman の、人生前向き宣言により窮地を脱出。この脱出劇はなかなか見もの。Dick 的な現実 / 非現実の境界崩しを雑多な映像の collage で表現してます。特に、ここで三人の学舎がタマの前で立ち竦んでいる映像を挟み込んでるのは良い効果をあげていると思います。徐々に明らかになっていった現実感の崩壊が一気に加速してて。結末の「全て忘れてしまおう」ってのもお気楽な解決ではありますがとりあえず納得。でもタマタマが宇宙に還るのは……(笑)。
深海モノの image を損なわない程度に horror で suspenseful。閉ざされた空間で、想像力が人を苦しめるって idea も悪くない。しかし、怖さを具体化させるとデカイカやウミヘビになっちゃうってのは何だか安直だよな。"Jerry" が "Harry" って解釈も、他の Jerry との会話で矛盾しそうだし。細部を突っ込むと安っぽさが浮き彫りになりそう。Norman、Beth、Harry の三人だけになってからの展開は面白かったんですけどね。全体的には普通の映画って印象です。
「子供は大人になるかならないか迷う。迷うと迷路から出られず、大人になれない。間野も心が迷えば、診療所の椅子と机の間でも迷うだろう?」
「それは観念的な意味か?」
「『観念』と『現実』をラウツカでは区別しない。それを間野の言葉では説明できない」
「そう言わずに、なんとか説明できないかな?」
ターパートゥニはしばらく黙り込んだ。
「……例えば世界は水のようなものだ。そして言葉はその容器だ。水は容器次第で形を変える。また容器に罅が入ると、知らぬまに空になったり、どこからか流れ込んで一杯になったりする」(page 83)
読了。この人の話を読んだのは初めてですが、いやはや、こんな話を書く人だったとはね。
産婦人科の医者である間野が volunteer として派遣されたのは、africa の小国ブンジファの奥地にある村だった。そこで幻の民と言われるラウツカ族に何故か目をかけられた間野は、そこで様々な神秘的体験をすることになる。日本に帰ってきた間野は平和な家庭人としての自分を取り戻すが、謎の女に付きまとわれていることに気付く。その女はラウツカの儀式で出会った女のようでもあり、間野が若い頃に関係していた理沙という少女のようでもあった。謎の女の手引きにより娘を失い妻を失った間野。彼の現実感は次第に失われ、自ら封印していた過去の記憶が彼を蝕み始める……。
始めの内は手堅い作品のように見えるんですが、だんだんと常軌を逸していく間野の現実観に「あれれっ?」と思っていたら既に現実 / 非現実の境界を飛び越えてました。あー、なんか最近、狙ってないのにこういう展開になるお話と付き合う機会が多いような(笑)。この作品では間野の崩壊ぶりに恐怖しつつも、彼が崩壊する過程を生物学や脳生理学、情報処理学などの側面から理知的に解釈して安定化させてしまおうとしているところが面白いです。Dick 的というよりは "serial experiments lain" 的な面白さというか。む、自分でもよく解らない表現だ。間野は lain のように神と戦ったりはしないんですけどね。
"ラウツカ" にも例の解読法があてはまりそう……とすると、間野は福音によってラウツカの一員になったってことなのかも知れないなぁ。
何と Why Sheep? の album です。2003 年発売の 2nd。いやはや驚き。しかも 1st も再発されてて、思わず両方買ってしまった小生であります。wool 地の CD holder という特殊ジャケ仕様。うひゃあ。収納しにくい(爆)。
この 2nd の方は、1st よりも beat が利いた曲が多くて踊りやすいかも。それでもこの人らしい tribal 風味、そして独特の chill out な雰囲気も健在です。とりあえず tr.2 "Clouds #757 (Ver. Ei-1)" 聴いて泣いてください。synthe voice と strings が軽やかにもつれあう中、風のように舞い上がる effect に心奪われ、繊細に弾かれる piano の音に取り込まれます。この音。紛れもなく Why Sheep? の音だ。
それにしても、改めて Sublime records の compilation "Sublime the Adolescence" と、Ze-koo の compilation "Nowhere Rain" の影響って大きかったんだなぁと思った次第。これらの CD 買った頃はまだ techno 聴き始めの頃で、良く解らないけど何だか良い感じ、って印象だったように記憶している。Why Sheep? はこの二枚ともに参加していて、やっぱり Why Sheep? な浮遊感溢れる track を提供していた。つか、"Sublime the Adolescence" も "Nowhere Rain" も、今考えてみればおっそろしく conceptual な album でしたね。個々の artists の個性よりは、album total での清涼感の方が際だっていたような。まぁそういうわけで、Rei Harakami も Woodman も Enitokwa も Calm も Why Sheep? も Susumu Yokota も、未だに何処かで共鳴しあっているような感じがするのかも知れない。
おっと脱線。Why Sheep? は清涼系のキレイキレイな音ばかり作る人なのかと思っていたら、実は雑食性であることが判明。"The Myth and I" にも、disco あり free jazz あり ambient ありの雑多な音が詰め込まれている。にも関わらず全体的には統一感があって、結局どの track にも熱帯雨林の噎せるような毒気と清涼感とが混在しているから、大きくはみ出してるとは思えなくなるわけだ。Calm や Chari Chari の音には自制と理性が感じられるけれど、Woodman や Why Sheep? は天然で快楽欲求に貪欲、といったところか。まぁ、難しく考えるのは止めましょう。tr.12 "Author Unknown - Prelude" の波の音も気持ちええなぁ……。
GSM 端末ということで、日本ではお目にかかる機会は少ないでしょう。
でも、この size で touch screen とはね……。仕様もあった。MP3 player、Bluetooth、digital camera、USB port と機能盛り沢山。これでさくさく動くんかいな。
また柄にもなく rock な album を聴いてしまってます。Primal Scream の 1997 年作。同名映画に影響受けて作ったそうな。映画の方は未見です。
UK 産にしては音太くて良い感じではないですか。今まで軽く見ててゴメン。Bobby Gillespie のやる気なさげな vocal が聞こえてくると tension 下がりますが、まぁこの人あっての Primal Scream ですから。dub を基調とした重い sound texture もいかがわしくて結構。粘着質の bass、サイケな effect、とりとめが無いようでいて実は隅々まで覚醒しきっている。Gary "Mani" Mounfield (ex. Stone Roses) の加入で迷いを吹っ切ったということか。
空っぽの rock をひたすら擬装し続ける Primal Scream。もう走り続けるしか生きる術はない。突き抜けてしまえば、踊る者も踊らされる者も結局同じ。どんどん行っちゃってください。
元 Japan 組 3 人による作品で、1994 年発表で 7 曲入り。
Japan も album 聴いたことない小生ですが、何故か Japan 人脈では幾つか耳にしてるものがあったりします。electro な人たちと相性がいいんでしょうね。
この album でも、冒頭の tr.1 "Beginning to Melt" でいきなり ambient な音響を聞かせてます。朝靄に包まれた森の中を彷徨っているような夢幻的 sound。既に 1 曲目から方向性は決まっていて、後続の track にも透徹した coolness が感じられます。tr.2 "The Wilderness" は Suzanne J. Barbieri の vocal を feature した pop な仕上がりだったりしますけどね。instrumental な曲が半分以上を占めるので、全体的には地味な印象。曲調も free form だし。
しっかし、この地味渋な雰囲気が秋に差し掛かりつつある今の気候にぴったりなんですわ。仄かに微睡みながらゆるゆると聞きましょう。
John Woo 監督作品、1986 年。邦題「男たちの挽歌」。
香港裏組織の幹部 Ho (Lung Ti) は、相棒 Mark (Yun-Fat Chow) と組んで修羅場を潜ってきた。しかし弟 Kit (Leslie Cheung) が刑事への道を歩み始めたことを知り、台湾での仕事を最後に足を洗う決心をする。だが台湾での取引は何者かの裏切りにより破綻し銃撃戦となる。そこに警察まで介入してきたため、Ho は組織の幹部候補 Shing (Waise Lee) を逃がして自らは投降する。Ho が口を割らないための保険として、組織は Ho の父親を人質に取ろうとするが、父親は抵抗してあえなく凶刃に倒れる。Mark は仁義を果たすべく敵の本拠地に一人乗り込み、銃撃戦の果てに敵を壊滅させるが、その代償として片足を失う。3 年後、刑期を終えた Ho は香港に戻ってくるが、既に刑事となった弟の Kit には父親を殺された恨みをぶつけられ、親友 Mark が義足を引きずりながら落ちぶれた生活を送っていることを知り涙することになる。Ho は真っ当な仕事に就くが、そこに今や組織の顔役となった Shing が近付いてきて再び Ho を組織に取り込もうとする。しかし Ho にその気はなかった。Shing が Kit を始末しようとしていることを知った Ho は、Kit に注意するよう忠告するが、Kit は聴く耳持たず、まんまと Shing の罠にはまり重傷を負う……。
兄弟愛、友情、信念……在るべき未来のために男たちは体を張り、傷つき血塗れになりながらも戦い続ける。John Woo らしい slow motion と銃弾の嵐はここでも健在でした。
それにしても、がむしゃらと言っていいほどの因果と仁義のお話だよなぁ。冒頭、肩組んで笑い合う Ho と Mark の場面とか、戯けて小突き合う Ho と Kit の場面とか、過剰なほどに上手く行っている世界を見せつけているだけに、その秩序が壊れてからの展開が痛々しく写る。Kit に「弟と呼ぶな、刑事さんと呼べ!」と怒鳴られる Ho の寂しげな横顔。落ちぶれた生活の中でも矜持を失わず、再び Ho と組んで羽振りの良い時代を甦らせようとする Mark。「真っ当になった自分を弟に認めてもらいたいんだ」と漏らす Ho。見ている方向がそれぞれ違っているために、家族や友情といった線で結ばれながらも、彼らは葛藤し、互いに苦しみ苦しめられる。そして、そのような状況に pressure をかけて、結果として Mark を爆走させ Ho に拳銃を握らせてしまう Shing もまた、先輩である Ho の手法を見習って成長した男なのだから、全くもって因果なもんである。
終盤、Mark は Ho と再び組んで戦い、Kit は自分の職務よりも Ho の意思を信じて彼に銃を渡す。それもまた一瞬の夢。
植木鉢に銃突っ込んでいく場面をようやく拝めました。ねえちゃんと一緒に踊りながら、ってのも凄い演出で、その後の大立ち回りとの落差に唖然となります。こういう見せ方には痺れるなぁ。
これまた元 Japan 絡みで。Steve Jansen、Richard Barbieri の元 Japan 組二人と、竹村延和との collaboration。1997 年発表。
半野と Karn の競演作には荒っぽい摩擦が感じられて、交わりきらない緊張感みたいなものが全編を支配していたけれど、この竹村延和らの album では見事に溶け合ってしまっている。細かく聞いてみれば竹村延和らしい繊細な minimal phrase や、Jansen & Barbieri らしい tribal な beat と残響を豊かに響かせる音響処理とがが其処此処に感じられるのだけれど、そこに摩擦を感じることはなくて、在るべき音が自然に寄り添って成り立っているような印象を残す。
竹村延和の solo album ではその密室性がついつい気になってしまうけれど、Jansen と Barbieri がそこを上手く捌いて、大きな空間演出で広がりを持たせているのが良い効果を上げている。結果として、お互いの利点を汲み取った上での夢幻的な sound に昇華させてるわけで、これはこれで個々の仕事では出てこないような独特の味わいが感じられます。良い collaboration だったんじゃないかな。
でもまぁ、ambient 寄りの down tempo な track ばかりなので、普通の人にはお勧めしません(笑)。癒されたい人向け。
Tom Tykwer 監督作品、1998 年。邦題「ラン・ローラ・ラン」。
Lola (Franka Potente) の元に、恋人の Manni (Moritz Bleibtreu) から電話がかかってくる。組織の下っ端である Manni は、取引で得た 10 万マルクを地下鉄に置き忘れてしまったのだ。ボスが金の受け取りに来るのは正午、今の時間は 11 時 40 分。あと 20 分で金を工面できなければ Manni は殺される。この際 supermarket で強盗やらかすことまで考え始めた Manni に向かって Lola は「何とかする!」と断言し、Manni を助けるため街中を奔走する。
いやこの際お話はどうでもよくて、techno な音がズンドコ鳴り響く中を Lola がひたすらひたすら走りまくるという映画です。うひょお。techno だよ techno。ここまで techno ばかり流してる映画ってのも類が無いです。しかも独逸です german ですパキパキです堅いです metal です(違う)。だから疾走イケイケ hard minimal、90 年代以降でしか有り得ない映画ということであっさり masterpiece に認定します(笑)。
さらに multi ending です reset 押せます。まるで game だと思った貴方は全く持って正しい。同じ場面を 3 回撮れば cost も軽減で lucky てなもんだ。何せ現代人は忙しい。合理化で効率上げようとするその精神こそ独逸人気質。付いてく方の身にもなってくれよ。三度も同じ建物見てると飽きるぜ。でも微妙にお話は変わってるのです。通りすがりの人たちですら、走る Lola に出くわすことによって極楽へ行けたり地獄へ堕ちたりします。これもバタフライ効果の一例と言えましょう(言えません)。ちょこっと行動が変わるだけで後々の展開にまで影響を及ぼしてしまう、というのが multi ending によって明らかになる……って作り方は新鮮でした。いや game としてはありふれた手法だけど、映画でやっちゃってるところが。
でもまぁ、idea 一発で底が浅い映画ではあります。底が浅くても強烈であれば記憶に残りやすいもの。やっちまったぜ畜生、という感じで小生は楽しめました。
ここ数日は元 Japan 組のプチ特集になってましたが、最後は David Sylvian の作品で。1999 年に発表されたものですが、録音は 1990 年と 1994 年で、全 3 曲。installation の為の音楽、だそうな。
全編 instrumental で冗長で ambient。melody は殆ど無く、持続音と点描と仄かな noise effect が延々と続く。しかし ambient をお手軽な癒し系 sound と思っている人には重たい音に聞こえるでしょう。冷たくて、無機質で、強い意志の感じられる音。
観念の谷間で見えざる者との対話を繰り返す David Sylvian。聞いていると、意識が研ぎ澄まされていくような気分になる。こういう祈り方があってもいい。
Thomas Jahn 監督作品、1997 年。
脳腫瘍の Martin (Til Schweiger) と、骨肉腫の Rudi (Jan Josef Liefers)。二人とも余命僅かと宣告され、病院の末期病棟で同じ部屋を割り当てられる。偶然見つけた酒を飲みながら「天国に行くとみんな海の話をする」と Martin が言うが、Rudi は海を見たことがない。そこで二人は病院の駐車場から車を盗んで旅に出る。当座の金は gas station や銀行を襲って入手。しかし実は盗んだ車は maffia のもので、その trunk には 100 万マルクもの大金が入っていた。金を奪い返そうとする maffia の一味や、Rudi は人質に取られていると勘違いして Martin たちを追う警察も、Martin たちの旅に介入してくる。そんな中、Martin と Rudi は金を方々にばらまきながら、お互いに夢を語り合い、それを実現させながら、海を目指して走り続ける。
Bob Dylan の有名曲 "Knockin' On Heaven's Door" を否応なしに連想させる title ですが、映画の最後でちゃんと使ってました。流れてきて安心したよ俺(笑)。
とぼけた雰囲気の road movie。主役の二人組は Martin が強気で粗野なワル、Rudi が内気な好青年という役回りですが、見ているとまるで兄弟のよう。彼らを追う maffia の Henk (Thierry Van Werveke) と Abdul (Moritz Bleibtreu) は凸凹コンビだし、そういえばいつも不機嫌な刑事といつもニヤけているその部下の組み合わせも妙に笑いを誘う。どの pair も映画的にはありふれているけれど、Hollywood 映画の parody という意図もあったのでしょう。こういう面々だからして serious には進まない。銃撃戦でも人は死なない。それはそれで良いんだよ。お迎えが来るのを待っている二人は半分天使なんだから、その旅路に死体が転がるはずがない。100 万マルクも彼らには無用の長物。会う人にはほいほいばらまいて、強盗で奪った金はちゃんと返して、maffia が Martin と Rudi をとっつかまえた時には既に無一文。そこで出てきた maffia の大ボス Curtiz (Rutger Hauer)、タマ取る代わりに「早く海を見に行かないと時間がないぞ」の一言。うひゃあ。美味しすぎです Rutger Hauer。昔より太ってて一瞬誰かと思った……ってのは内緒です。
まぁ、どうってことはない映画だと思いますが、こういう雰囲気の映画は嫌いではないです。Martin と Rudi の旅は危うさに満ちていたけれど、どこかほのぼのとしていて、何だか安心して見ていられる。rock で crime な大人の夢物語。
Barry Levinson 監督作品、1996 年。
New York の Hell's Kitchen で暮らす仲良し悪ガキ四人組が、ある日の悪ふざけが元で他人に重傷を負わせてしまい、少年院に送られる。そこでは Nokes (Kevin Bacon) を始めとする監察官が、少年達に容赦ない虐待を加えていた。床に散らばった食物を這い蹲って食うよう命令されたり、暴行された上で狭苦しい独房に放り込まれたり、挙げ句の果ては性的虐待まで……。四人組は成長して、それぞれの道を歩んでいたが、ワルになっていた John (Ron Eldard) と Tommy (Billy Crudup) の二人がある日、街の restaurant で Nokes を見かけ、衝動的に銃で撃ち殺してしまう。四人組の一人である検察官の Michael (Brad Pitt) は、同じく四人組の一人である新聞記者 Shakes (Joseph Perrino) と組んで、John と Tommy の裁判を契機に少年院での非道を明るみに出そうとする。Hell's Kitchen には彼らに手を貸してくれる住民もいる。裏の世界で力を持つ老人 King Benny (Vittorio Gassman)、飲んだくれ弁護士 Danny (Dustin Hoffman)、そして昔から四人組の成長を見守ってきた神父 Bobby (Robert De Niro)。かくして法廷の幕が開く……。
なんだか今月は Barry Levinson 監督作品にぽこぽこ出くわしてるような気がするな。"Wag The Dog"、"Sphere" に続き三作目か。しかもどれも Dustin Hoffman 出てるし。しかし、この "Sleepers" では Dustin 度は一番低いです(笑)。ダメ弁護士ってことで、ブラピに操られる手駒という役回り。まぁ、こういう凡庸な役もこなせてしまうのが Dustin Hoffman の良いところってことで。
それにしてもこの映画、あまり後味良くないな。少年院での虐待は悪だとしても、殺人を白としてしまうのも良くないわけで。そこを「友情の厚い絆がそうさせたのだっ!」と言い切るには彼らの友情を感じさせるような描写が薄すぎる。また、John と Tommy の無罪判決が下された場合、Nokes を殺したのは誰かってことが話題にならない筈はないと思うのだけれど、その辺の言及は全くなし。結果、御都合主義的にお話をまとめてしまった感じが残る。というわけで、豪華な cast なのに不完全燃焼。勿体ないのぅ。原作は未読なんですが、やっぱりこんな感じなんでしょうかね……。
良かった点としては、ワル振りを視線や口元でも遺憾なく表現した Kevin Bacon や、下町神父という癖のある役回りをこなした Robert De Niro はなかなかの好演。四人組の少年時代に King Benny の復讐話を置いたのも、この映画全体の俯瞰から見れば効果的な演出で、後の四人組の復讐に King Benny が荷担することも納得が行きました。
「では、これで真実がわかった」
「これが真実なのか?」
アルは言った。「そうさ。明らかに」
「それにしてもひでえ話だな。トイレの壁から知らされるとは」ジョーは、ほかのなによりも、苦い反撥を感じた。
「落書きとはそんなものさ――単刀直入なんだ。テレビを見たり、映話を聞いたり、新聞を読んだりするぐらいじゃ、何カ月かかっても――いや、ひょっとしたら永遠に――真実はわからないだろう。こんなふうに、ぐさりと核心を衝かれないと」(page 180)
超能力者と、その超能力者の能力を無効化する不活性者との戦いを描くと見せかけて、Dick ならではの現実崩壊感覚に溢れた作品になってました。不活性者を数多く雇っているランシター合作社の有能社員達が、大口の顧客の依頼で月に飛ぶが、それは超能力者団体ホリスの仕掛けた罠だった。社長のグレン・ランシターは重傷を負うが、生き残った不活性者達は彼を何とか地球に連れ戻し、半生命体処置を施す。半生命体処置とは、死にかけた人間を冷凍状態にして延命させる措置である。だが、不活性者達の周囲で奇怪な現象が多発する。時間が経つにつれ昔の時代に逆戻りしているのだ。かと思えば、その逆行する力に抵抗しているものもある。TV や便所の落書きなどからは、半生命体処置を受けているはずのランシターからの message が届く。そして、不活性者達は一人ずつ姿を消していく。ランシターの message によれば、ユービックを使えばこの状況を変えられるとの事だが……。
久々に Dick の本読んだわけですが、まぁ相変わらず「現実って現実かのぅ」と悩みまくってるわけです。時間逆行の謎を突き止めるべく奔走するジョー・チップ、頑張ってますが貧乏です。自分の部屋に入るための chip さえろくに持ってません。彼を惑わせる美女パット・コンリー。やな女です。時間遡行してジョーと結婚したことにしてしまったり、死にかけて苦しんでるジョーを sadistic に虐めたり。でもまぁこういう存在は貴重です。特に Dick 小説では。そういう意味では華のあるお話だったかも。エラ・ランシター女史も実は強大な力を持ってたし。
結論。女は強い、子供は理解不能。大人は翻弄され、ユービックは偏在する。
Dick 作品の中でも、idea と drama の結びつきが強い作品と思います。ちょっと端正すぎって気もしますが、普通の人が読む分には面白いんではないでしょうか。