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文庫本で読了。船戸の作品は大抵 hard cover で読んで、文庫化されたらそれも読むという感じになっている。今回もその type。
『蝕みの果実』は短編集で、「舞台はアメリカ、登場人物はスポーツに関わっている」というのが共通点。もちろんそれだけで終わる船戸作品ではなく、民族意識の摩擦をその身に染み込ませた人間や、国家の思惑や経済の流れに翻弄される人間など、船戸作品ではお馴染みの背景を背負った人物達が躍動する。が、その theme があまり前面に出てこないのは短編の性か。sports の件も、船戸自らが冒頭で述べるように、「格別の意味があるわけではない」。
にしても、そこから照射される日本人の sports 観と現実世界でのそれとの齟齬は「セレクション・ブルウ」や「ミセス・ジョーンズの死」などから窺い知れる。sports を民族意識の上に倒置するならば、それは政治的・経済的な意味合いを帯びざるを得ない。すなわち sports での英雄は他国に対する自国の優越を示し、従って経済的な援助や将来への保証にもつながる、と。rule が厳密であるが故の明確な優越性、そしてそれを勝ち取ることが意味する大きな価値。「ミセス・ジョーンズの死」は、sports を人身売買として見なすミスタ・ジョーンズの経済観、sports を将来の経済的な豊かさをもたらす打ち出の小槌と見なすダリル、そして sports をただの game としてしか見ていなかった日系人の「ぼく」という三者の立場を浮き彫りにして、その三者の思惑が思いもしなかった事態により悲劇を生むという展開を見せる。うーむ、如何にも船戸な展開だな。
story 重視な小生の楽しみ方としては、「からっ風の街」の沢本得治は船戸巡業作品群(勝手に命名)には欠かせない charactor だよなぁ……とか、「梟の流れ」は後の船戸長編(う、題名忘れた)の短編版だなぁとか思いながら読んだ。
総評? うーむ、短編集なら『新宿・夏の死』や『カルナヴァル戦記』の方がオススメです。でも発表時期がバラバラなのにこの統一感、いや船戸はすばらしい(笑)。
読了。いや、まさか完結していたとは……。
小生は「カイン」推しなヒトなので、『天禁』は長くてついていけんわと思いつつ 10 巻くらいでリアルタイム追っかけをやめていたのである。が、20 巻まで出たなら……と思って読んでみたら、あうあう、何で追っかけなかったんだぁ!(泣) うーむ見事に話まとめましたねぇ。
てゆーか終盤はロープレ的に話が急上昇してしもうて小生としては「をいをい由貴さんらしくねーぞ」と思ったりもしたが、SF 的な天使創造 system とか出てきて面白かったですわ。でもさすがに OVA や CD drama までは追っかけられん。だいたいキャラ多すぎ(笑)。でも稀代の story teller たる由貴香織里の energy にはほとほと感服します。いやマジで。
音数の少ない世界を自分の色で染めるために、素材を厳選し熟慮を込めて組み合わせる。それを本能の呼び声に応じて軽々とやってしまう人もいれば、長い労苦の報いとして身につける人もいる。Herbert はどっちだろうな。
あふれる jazz fravor の中にも、techno 〜 house の残響が木霊する。free improvisation の香りを漂わせつつ、melody の軸が一筋、真っ直ぐに通っている。Dani Siciliano の whisper voice が示す希薄な存在感はまるで幽霊のようで、夜の闇に溶け込んで消えてゆく儚いネオンライトを思わせる。大人のための lullaby か。