vol 260:プロジェクト






「阿弥陀の考えも解るけど、ほんならどないしたらええんや。」

阿弥陀の言うことは、それこそ理想そのもの。

でも、如何にそれが難しい事なのが現実で。

話を聞いていたみんなも暗くなった。

(カンよ、私にこの戦死者の国の件で、
力を貸してくれますか。)

「え?そらー、全然かまへんけど・・・。
どないするんや?。」

(我々の話に聞く耳を持つ者が増えれば、
皆、力も増すでしょう。
今、居ない者の中にも同じ想いの方は居ます。
来年のこの日。
ここに居る皆で、その者をカンの元へ連れ出してもらうのです。
そして、お前はこの者たちに話た事を教え伝え、
ここに戻った時、
また私が来て話をしましょう。)

「なるほど。そんなら、興味持たすって事やな?。」

阿弥陀は頷いた。

(もうひとつ。
お前の先祖の墓地には、戦死者の墓地もありますね?。)

「うん。」

階級によって、墓石のでかさの違う戦死者の墓地。

俺はどうも、それが嫌いや。

(皆、何が食べたい?。)

阿弥陀は戦死者に問いかけた。

阿弥陀の問いに誰も答えようとしない。

暫くして、ひーじいさんが声を上げた。

(わしは・・・あべかわ餅が食いたい。)

他の戦死者たちが顔を上げて、じーさんを見る。

(お、俺・・・ミカン。)

(俺は!俺は・・・饅頭。)

ポツリポツリとみんなも声を上げた。

阿弥陀は、ひーじいさんに笑みを見せて、

小さく頷いてみせた。

(カン、墓参りのとき、饅頭にミカン、餅を買って、
戦死者の墓地に供えていただきたい。
あと、煙草を1箱と、その1本に火をつけてふかし、
線香と共に線香立てに挿すのです。
煙草は戦時中の者にとって、
唯一の安定剤でした。
皆がよろこびます。)

「ん、わかった。」

今居るみんなには、この事は内緒の約束をして、

俺は肉体に戻り、

この出来事を大樹に電話で話した。

オカンにも話すと、

「そうかいな。ほんなら、花も戦死者用に増やすわな。」

「おー。それもえぇな。」

「今から買いに行こか。」

オカンと一緒に花や饅頭にミカン、餅を買いに行く。

「オカン!あべかわ餅、ラスト1個あった!。
5個しか入ってへんけど、
食っても食ってもなくならへんて説明したらえぇか。」

栗饅頭とミカン、あべかわ餅を購入。

「盆の花って、安いのはちゃっちぃし、
豪華なのはボッタクリか!ってほど高いよなぁ。」

「せやねん。うちは、先祖の墓に、お父さんたちの墓と、
ばぁちゃんの墓に、近所の供養塔にも花2個ずつ買うさかい、
ばかにならんのや・・・。」

その時、1件の花屋の墓参り用の花束に目がいく。

「これ・・・こんな綺麗やのにこの値段て。」

オカンは花の豪華さと値段に驚いた。

「やっぱり、気になります?。」

店員のおっさんが声をかけてくる。

「綺麗ですねぇ。でも、こんな値段って。」

おっさんは花束を持って、

「これ、うちの嫁が自分で植えて作ったんです。
父親が亡くなったので、その気持ちで作ったとか。」

「おー。」

「あぁ、せやけど、あと1個足らんわ・・・。」

オカンは残念そうに言うた。

「あぁ!待ってください!。」

おっさんは奥に入って行って、

同じ花束を1個持って来た。

「これで最後なんですよ。どうぞ買ってやってください。」

心のこもった花束に、

残り1個だったあべかわ餅。

「・・・阿弥陀の使いか?。」

俺は小さく呟いた。

そこには白い衣を頭からかぶった女がいる。

(そうとも言います。はじめまして、カン。)

「アンタは?。」

(私は白衣観音。阿弥陀如来の妻。)

「えぇええええええ!。」

阿弥陀・・・お前結婚してたんかい!。

「なんやの!おっきい声だして!。」

「いった!。」

いきなり声を上げた俺の頭をオカンが叩いた。

「どなたかわかりませんが、ありがとうございます。」

オカンは感じて話は出来るんやけど、

自分の体に取り込まな会話はできへん。

「白衣観音やって。阿弥陀の嫁らしい。」

「そうですか。ほんまにありがとうございます。」

白衣はニッコリ微笑んだ。





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