vol 258:戦死者の国







「オカン、ちょっと俺行ってくるわ。」

そう言って、俺は自分の部屋に行っては布団に横になる。

「じーさん、俺をじーさんの居る場所に連れてってくれへん?。」

(連れて行く?死ぬのか?。)

「いや。死なんでも、じーさんの世界に行けるんや。」

俺は、体から抜けた。

(行っても・・・悲惨な光景でしかない。)

「そんでもええよ。
このままじゃアカン。」

(お前を連れて行くことで、わしは・・・。
わしは上官に体罰を受ける。)

「・・・。」

どうやら、簡単な事ではないらしい。

「あ!せやけど、上官とか、
この世に帰ってるんちがうん?。」

(・・・そうだな。
残っているのは、この世に身よりのない者だけ。)

「そんなら大丈夫なんちがう?
上官以外は、みんな逆らわれへんから、
言うこと聞いてるんやろうし。」

じーさんは、ゆっくり頷いた。

じーさんと共に、あの世の、

戦死者の国へ。

俺は絶句した。

当時の軍服姿で、でも、ボロボロで。

肩を落として座りこみ、

顔はドロドロ。

足を怪我した者や、腕がない人に、

顔が焼きただれている人。

痛みもそのままで、

足を引きずって歩いていたり。

景色は、どっかの森の中。

指を血だらけにして、

硬い地面の土を掘って、

当時の食糧だった虫を探したり。

ドドーーーン!

ブゥゥゥゥン!

大きな爆音と、戦闘機の音がこだまする。

最悪の光景や。

(これが戦時中の兵隊の姿だ。)

じーさんは俯いて呟いた。

(織田!どうして戻って・・・。
その女子は誰じゃ?。)

まっ白い服の金色の髪。

(その髪!米国民か!。)

(敵じゃ!敵じゃ!。)

その場に居た、兵隊がみんな俺に向かって、

形相を変え、銃や刀を向けだした。

(織田!貴様、敵を連れて来たか!。)

(違う!違うんだ!この子は、。)

バキューーーン!

兵隊が俺に銃を撃った。

倒れもしない俺に何度も撃ち、

死なない俺に尻もちをついて脅えだす。

(な、なんで銃がきかんのじゃ!。)

「アンタらが死んでるからや。
それに、ここは死後の世界。
知ってるんやろ?。」

俺の問いかけに、兵隊たちは一気に俯いた。

「みんな、なんでや?
なんで、死んでまでこのままの状態を続けてるんや。」

(うるさい・・・お前らのせいだ。
お前らがわしらをこんな風にした。)

「違う。戦争がアンタらをこんな風にした。
殺さないと殺される。
アンタらも、米兵の命を幾度となく奪ったはず。」

(・・・。)

「それに・・・アタシは日本人や・・・。」

(は!そんな髪の色の日本人がいるものか!。)

「今の時代、髪の色も染めたり、
茶色の地毛の子もおる。
それに、この世界じゃ、自分がこんな色になりたい思ったら、
自由に肌の色も目の色も変えられる。
歳かって変えられる。
思いのままや。」

俺はその場で、犬や猫、黒髪や、

別人の人間に姿を変えて見せた。

(ば、化け物!。)

「いや・・・だから。
死んだ人や魂は、心の想いの世界やから、
誰でも出来るんやってば。」

(では、なぜ、我々はこのままなんだ!。)

ぴったりの質問。

「そこや。
その傷も、もう痛みも傷さえないのに。
そんだけ、アンタらの心の傷が深い。
悲惨な想いが強すぎて、
今の自分が見えてへんのや。」

(じゃあ、わしの傷も治るのか?!。)

「治るんやのーて、
もう傷なんかないねん。」

聞く耳を持ってもらえれば、

理解してもらうキッカケとなる。







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