vol 49:ねこもち



昼休みが終わる頃、大樹と教室に向かう廊下を歩いてた。

「すごく美味しい餅の売ってる駄菓子屋を母さんが見つけたんだって。」

「へぇ。千代さんが。餅かぁ~・・・俺、アンコ苦手やねん。」

「大丈夫。その餅はタレらしいよ。」

「ふ~ん。」

「明日の休みに行ってみようよ。弥勒も連れて。」

「え~!あいつも?。」

「メールしとくから。じゃ、また夜にね。」




すっかり俺と大樹の関係も元のさやに戻り、
元というよりは、お互いの気持ちをまた深く解り合えた感じ。
弥勒は猛暑の中、行の辛さに黄泉の国に自然に戻りそうだと、
死にそう発言をメールでしとった。
餅の話には最近、神に餅を供えるのが減ったと言っていた。
弥勒が言うに、黄泉の国の神々は昔から供えられた餅が好物らしく、
誰かが供えられると皆で分けて食べてたらしい。

そういや、正月に餅供えるくらいで・・・。

みんな喜ぶんか・・・餅。

授業中ずっと考えてた。


夜になって、携帯で大樹と電話。

毎日、寝る前に大樹から電話かかってくるんや。

なんぼほど青春しとんねんな、俺ら。

『餅パーティー?。』

「せや。俺らも黄泉の国に行ってみんなで餅食うねん。」

『いいね、それ。でも、神に供える餅は白やヨモギなんかじゃないの?。』

その話には俺も知識ないし、でも、

「ええやん。昔から白やヨモギやったら神さんも飽きてるやろ。」

俺の発言が可笑しかったのか、大樹は笑って、

『あははは、そうかもしれないね。』

「決まりやな。どこでやる?。」

『そうだね。弥勒もいるし、うちやカンの部屋じゃ狭いから・・・、
そうだ!弥勒のお寺借りたらどうかな。
お礼に本堂の掃除をしようよ。』

「え~!暑いのに掃除~?しかも弥勒の寺クーラーないやん!。」

『文句言わない。お山だからここよりは涼しいよ。』

「はぁー。しゃーないなぁ。」

『カン、夏休みだけど、二人で旅行に行かないかな。』

「二人で?。弥勒はええん。」

『二人がいい。』

「・・・うん、ええよ。」

『そう、良かった。そろそろ寝よう。また明日。』

「うん。おやすみ大樹。」

『おやすみカン。』





「あれ、弥勒は?。」

餅屋が2時かららしく、2時に大樹んちに行くと弥勒がおらん。

「泊りに来るなら寺で待ってるって。
母さんっ、行ってくるからっ。」

玄関から奥の千代さんに挨拶し、織田家を出て店に向かう。
場所もそう遠くはなくて歩いて行く事にした。

ジリジリ照る太陽に空は真青で真白な雲。

「いい天気で良かった。」

「けど、暑すぎるで。こんなん服着て寝れんわ。」

すでに額に汗が滲み顔を顰めて言う俺に大樹は青褪め、

「だ、駄目!絶対駄目だよ、裸で寝るの!弥勒もいるんだから。」

弥勒は菩薩やし、お前みたいに俺の裸でムラムラはしませんから~。

「あそこがお店。」

大樹が指さす店を見ると、小さなログハウスのような建物で、

「ちゃいるどハウス?。」

大樹が店に入って行く。
俺も続いて入ると、店には懐かしい駄菓子が10円から置かれていて、
半分が駄菓子、半分が調理場になっている。

「すみません、ねこ餅を・・・カン、いくつしようか?。」

駄菓子を見てた俺に大樹が問い掛けた。
ねこ餅の値段を見ると70円。

「10本くらいでええんちゃうか。」

「そうだね。じゃあ・・・あ、みたらし団子もある。
ねこ餅とみたらし団子を10本ずつお願いします。」

「今から焼くから少し時間がかかるけどええかね?。」

「はい、待ってますから。」

おばちゃんと話す大樹の手を掴み、

「なぁ、大樹。なんか買うてもええ?。」

「ん?あぁ、いいよ。弥勒の分も買ってあげて。」

「薫っ、ねこ10とみたらし10焼いて。」

「・・・わかった。」

調理場と駄菓子の仕切りみたいに高めの棚があり、
その奥から女の声がすると座っていたのか声がして、
立ち上がって女の顔が見えた。

「か、カン・・・織田も。」

その女というのは、

「か、薫ちゃん!。」

俺の声に大樹が薫ちゃんの顔を見ると、

「五百崎・・・五百崎じゃないか。」

同級生で不良で霊がきっかけで友達になった五百崎 薫や。

「薫ちゃん、ここ薫ちゃんの店なん?。」

驚きを隠せない俺達に薫ちゃんはバツが悪そうな顔をして、

「あ、あぁ。」

そう返事をして餅を焼き始めた。

「へぇ、五百崎、店の手伝いしてたんだな。
それに、うちの近所だったのか。」

「う、うるさい。」

薫ちゃんは照れてます。

駄菓子をかごに入れていき、かご1個じゃ足りなくなると、
おばちゃんがかごを、もう1個用意してくれて、

「つーかさ、なんで織田と買い物なんだよ、カン。」

「へ?。」

背を向けてひたすら焼きながら問い掛けられ、
俺は禁断の関係がと焦りだした。
それを見て大樹が眉尻下げ、

「実は、カンのご両親と俺の両親が古くからの友人でね、
今日はみんなが集まるから買いに来たんだ。」

ナイスフォロー。

「へー、初耳。」

「聞かれたら言うけど、一応学校では教師と生徒だから。」

「禁断の関係みたいだな。」

俺も大樹も真赤になって駄菓子を物色しはじめた。

「カン、これくらいでいいんじゃない?。」

「せやな。おばちゃん、これ。」

「はいよ。」

おばちゃんにかごを渡して会計をしてもらうも、餅を焼くのに時間がかかり、
焼けた頃には、おばちゃんと世間話。

「カン、出来たぞ。」

「ありがとう、薫ちゃん。」

餅の袋を受け取って、

「また、学校でな。」

「あぁ。」

そう言って店を後にした。
織田家に向かい、車に乗って高野山へ。

「五百崎も家の手伝いする子だったんだね。学校での雰囲気が違った。」

「薫ちゃん、ええ子やで?怖がりやけど。」

「怖がり?。」

「うん。」

車内で駄菓子を食べながら2時間程走り弥勒の寺の駐車場に到着。

「来た来た。」

弥勒がお出迎え。トランクから荷物を取り出して境内に入り、

「今日は本堂で寝るから。」

「お師匠様は?。」

「寄り合いに出かけた。」

弥勒について本堂に上がり、大樹は立派な大日如来の仏像に両手を合わせる。
俺も両手を合わせるも袋を広げ、

「弥勒見てーや。駄菓子!。」

「菓子じゃねーか!でかしたカン。」

「駄目だよ。それも黄泉の国に持って行くんだから。」

「え~!。」

弥勒がだだをこねる。

「これはいいだろぉ。菓子なんか仏は食わねぇって。」

「水子たちのだよ。」

「むー。」

膨れる弥勒は床に寝そべる俺を見て、

「カン、大樹がいじめる。」

「あー、そういう奴やから。そいつ。」




弥勒が振る舞ってくれた精進料理を食べて風呂に一人ずつ入り、
俺は白のタンクトップにハーフパンツ姿。
大樹は白い浴衣に弥勒は紺色の浴衣姿。

「カンも浴衣着ればいいのに。」

「いらん。暑いもん。」

すっかり夜になった本堂に蚊避け網を立てて、その中に布団を3枚敷く。
皿に餅を盛り頭上に置いて大樹、俺、弥勒の順に寝て目を閉じ、
肉体から抜け出た。

肉体から出ると3人の姿は昔の姿になり、
俺は勿論女の姿。
今にも抱きつきそうな大樹を睨みながら黄泉の国に向かう。

黄泉の国の入口に沢山の神が集まっていた。

「俺が向こうに話しておいたんだ。」

弥勒が昨夜に神々に言うてたらしい。

「これは懐かしい。餅じゃ。」

「おお、餅じゃあ。」

神々は酒を煽りながら俺達の持ってきた餅を喜んで食べ宴が始まった。

「カンっ、カンっ。」

「おお、キツネやん。」

子狐達が俺に群がって甘えてきた。

「お菓子食うか?。」

「食う!食う!。」

俺は子狐や水子達と過ごす。

「弥勒よ、いつも私の体を拭いてくれてありがとう。」

「い、いえ。とんでもないです!。」

弥勒は大日如来や阿弥陀達と過ごしている。

「カン、俺、蛇の国に行って来る。」

「シロか?。」

「うん。お餅、食べさせてやりたいんだ。」

「・・・一緒に行く。」

俺と大樹は宴を抜けて蛇の国に餅を持って出かけた。

「シロの居場所解ってるん?。」

「あぁ。さっき大神に聞いたから。」

大きな湖の森の中に木にハンモックをぶらさげて、
そのハンモックで横になっているシロを見つけた。

「シロ。」

「・・・兄様。」

ハンモックから降りたシロの姿は真白な長い髪を2つに分けて耳横で、
赤い紐でおさげに結び、白い着物の背の高い男の姿。

「シロ・・・大丈夫かい?。」

シロは眉尻下げて笑み、

「あぁ、もう大丈夫。」

その姿に見惚れていた俺にシロが気付き、

「カン、我の姿が兄様より気に入ったか?。」

からかうように言うシロに俺は真赤になり顔をしかめ、

「はっ!ぜーんぜんや。」

大樹は俺の顔を目を細めて見て、

「・・・駄目だよ。」

冷やかに言う。

今日こいつに駄目言われた回数・・・。

「シロ、お餅持ってきたんだ。一緒に食べよう。」

「ほぅ。人間の作った餅は久しいな。」

草の上に腰を下ろし3人でねこ餅を頬張った。

「これは美味い。」

少し米の食感があるも、モチモチしたもち米の邪魔をしない。
タレは程良く甘く辛みもない。

「阿弥陀や普賢菩薩達はみたらしに感激してたよ。」

「あたしはこっちのがいぃ~。」

黄泉の国に来たせいか、俺は女に言葉も戻ってた。

あの頃より成長してるから、クルンクルンの髪は肩下まで伸び、
ウェーブヘアーになっている。

「カン、タレがついている。」

シロが俺の口端についた垂れを蛇の長い舌で舐め取った。
シロもまた、下界で蛇の姿で居過ぎた為に今の容姿を忘れてたんや。

「んっ。」

「ちょっと、シロ!。」

嫉妬した大樹がシロに駄目だ駄目だと怒る。
シロはハッと自分のした行為に気づいて眉尻下げ大樹に謝っている。

食べ終えると俺は腹がいっぱいになって草に寝転び、
大樹とシロが話しをしている横で寝てもうた。


「カン・・・起きてよ。」

少し眠ったんかな。

大樹の声に目を覚ます。シロの姿がない。

「ん~・・・シロはぁ?。」

「シロは宴に参加しに行ったよ。」

大樹は上に覆い被さって俺を見つめてる。

静かな黄泉の国。空気も澄んでいて、心地良い風が時折吹く。

幾度か唇を重ね、ボーっとする。

服を脱がされ、大樹も服を乱して体を舐めるように触れていく。

「は・・ぁ・・。」

熱い吐息を吐く俺に大樹の体は重なり、
初めて男と女として体を繋げた。

全裸の姿で抱き合い、終えれば大樹の体に抱きしめられる。

「下界の事なんか忘れてしまいそうや。」

俺の言葉に大樹は言う。

「ここに居れば、見ようとしなければ人間の争いや、
地球の悲鳴も解らないからね。」

黄泉の国と天界の違い。

「天界やったら、いつも悲鳴が聞こえとう。
聖戦言うて神の為に戦争を起こして神の名を叫ぶ声。
女子供の悲鳴。
地球の悲鳴。」

俺は泣けてきた。

人間は愛し合うっていう究極の行為すらも、

性欲となり、抱き合う行為すらも、恥ずかしさに躊躇う。

男は女を犯し、女は子供を殺す。

「アカン・・・嫌なことばっかり浮かぶ。」

泣きじゃくる俺。

「それを解らせる為に俺達が見本になるんだろう?。
性別も関係なく、人として大事な事を皆に教え、導く為に。
まだ、俺達が何をすればいいのか解らないけど、
まだ、俺達の時が来てないからだよ。
今、災害で人々の命は奪われている。
これが・・・人々が人々によって命を奪い合う時に変わる。
闇がそうさせる前に俺達で止めないと。
君の兄さんのように・・・俺達の命を犠牲にしてでも。」


大樹はちゃんと来るべき事を解ってた。

俺らや神々がこんな思いでいる事も、人間は気づいてない。

それを気付いて欲しい。

一人でも多くの人間に。

一人でも多くの闇の住人に。



「大樹・・・もう1回しよ?。」

「うん。喜んで。何回でも・・・。」





「おやまぁ。だから僕が広めてあげてるじゃない。
君達みたいな愛ではなく、軽い今だけの先のない愛を。
クフフ・・・みんな愛に目覚めて、ヤリまくってるよ。
いろんな男と、いろんな女と。
【愛】と言う闇の愛で。
一時の快楽と、一時の愛に生まれる死。

あはははは!いやぁ~、実に幸せな殺略だねぇ。

天の子、死をもって教えても、

人間は学やしない。

セックスは快楽でしかないし、愛で人は救えやしない。

無駄死にだけは、しないように・・・僕からのアドバイス。」














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