vol 16 : それぞれの自分



石段に座り水の神の昔話を聞いてた。
もう、夜になったんちゃうかってくらいに時間が経った気がしたのに、
時計見たら何分かの出来事で、話を聞いている間は映画を見ているかの様に、
映像が目の前に映し出されてたんや。

俺が・・・地球を守る神の子?
俺が・・・女?

確かに共通点はなんぼかある。
動物が好きなこと。
好奇心多盛。
顔とか・・・。

せやけど、俗に言う前世の話か?
解らん事だらけや。自分の事やのに。

隣の大樹は思い詰めた顔しとる。
声をかけようか迷った。

「カン。」

大樹から声をかけられ、そこは大人やん。
とか関心しながらも、なんや気まずい雰囲気や。

「なん?」

「俺さ、嘘だとか、そんなこと思おうとか思わない。」

いや・・・思おうや。大樹。

「ねぇ、この続きは教えてくれないのかい?」

俺にじゃなく、目に見えない水の神に問い掛けるも何故か返事はない。

「・・・」

大樹は俺の方を向いて、頬に手を触れてきた。
俺は一瞬、大樹が髪の長い着物を着たチビ神に見えたんや。

「カンが天の子なら、俺の気持ちがやっと解った気がする。」

切なげに俺を見つめる大樹に俺は固まったまま。

「おい・・・」

俺らの後から低い声がした。振り返ると松吉が眉間に皺寄せて見とる。

「う、うわぁあ!」

俺は真赤になって手足をバタバタさせた。

「気分は良くなったのか?心配して来たら・・・。
二人で見つめあって、何しとるんだ。」

松吉の言葉に頭が真っ白になり、つい・・・。

「な、何も!蚊ぁや!蚊ぁがほっぺたに止まってたさかいに!」

俺が弁解している間に大樹は立ち上がって、

「水、汲んだの?父さん。」

冷静に松吉に問いかけて、まだやって返事に先に水汲み場に行きよった。

結局、その後は水汲んで織田家に行って夕飯食って帰った。
大樹となんの話もせんままに。

オカンに聞こか迷ったけど、大樹からメールが届いた。

『今日はお疲れ様。美輪で起こった事、カンはどう思ってる?
俺はまだ理解しきれてない事もあるけど、忘れてた事を思い出した気分。
最近考えていたんだ。自分がなんなのか。
いつも、カンが気になって心配してたり、カンに何かあった時に、
なぜカンばかり、俺もカンの力になりたいって。
途中で終わった感じで、自分がなんなのか良く分からないけど、
この先は自分で思い出さなきゃいけない気がする。
でも、カンが女の子だったら、俺は間違いなくカンに惚れてたよ。
おやすみ。』

惚れてたって。
俺は返事を送った。

『俺は男デス』

布団の上で天井を見つめて考えた。
もし、俺が天の子やったら、あの後、父親に黄泉の国の事、
ちゃんと言えたんやろか?。

俺は諦めんと言えたんやろか。

(えぇ、そなたは諦めませんでしたよ。天の子よ。)

声が聞こえたけど、姿を見ようとはせんかった。

(あの後、どないなったん?)

(それはすぐ解ります。)

(前世の話やろ?)

(いいえ。前世ではありません。少し前の過去の事。)

その声は俺が問う事しか答えてくれへん。
全部教えてくれたらええのに。
俺はなん?
俺は普通の人間やん。
天の子やったら怖いとか、悲しいとか、腹立つとかそんなん思わんやろ。

(いいえ。天の子であろうと神であろうと、何ら変わりはないのですよ。
日々悩み、苦しみを感じています。
ただ、それを見せないだけ。雲の糸の釈迦如来を見たでしょう。
いくら守っていても、全ての者を救う事が出来ない、
そんな悲しみでいっぱいなのです。)

(せやけど、そんなん罪人やねんから自業自得や。)

(そうでしょうか。始めから、罪人はいませんよ。)

それを理解できへん俺が天の子っちゅーんか?
俺なんかより大樹の方が純粋でええ奴や。
俺のオカンへの反発した態度。
霊に対しても、痛みや苦痛で来られたら我慢できんくて、
逆切れしてるような俺が。
どないしたらええん?
どないしたら。

何をどないしたらええんかも解らん。
何をどないしたいんかも解らん。

まるで、真っ暗闇に落ちた気分や。
小さく小さく蹲って。

(黄泉の国でも、天界でも、同じ。
そなたの自分探しは今幕を開けたのです。
我が小さな子も同じ。
なぜ生まれ生きている意味を感じなさい。
なぜ生き物がいる意味を知りなさい。
なぜ我々がいるのかを心で解りなさい。
それぞれに意味があるのです。)

暗闇に聞こえる声に俺は頭を上げるんが怖かった。
弱い弱い人間。

(人がなぜ落ちるのか。それは這い上がることを学ぶ為。
現実から逃げても、現実は消えません。
自分から逃げても、そなたは存在するのです。
今やるべき事を見つけ、
勇気を出して1歩前に進むのです。
生きるもの全てに一人はありません。
我々が居ます。
我々がいるのですよ?)

俺はそのまま深い眠りに入っていった。
そんな俺の頭を撫でるニコニコさんがおる。

(カンよ。これからもっと忙しくなるぞ?
ワシはお前が天界の子だと初めて知ったわ。
ワシはのぅ、カン。
天界の子であろうとなんであろうとお前が好きじゃ。
悩むお前も、怒るお前も、泣くお前も。
そうじゃな~。もっとわがままを言うて欲しいのぉ。
ワシを困らすくらいのわがままを言うてみぃ?
他の神は知らんが、ワシはお前のワガママが欲しいんじゃ。
ワシと出会ってから1度も自分のワガママを言うた事がないじゃろぅて。
霊の話を聞いてやってくれ。
それしかお前はワシに言わんじゃろぅて。
知っとるぞ?
ワシには自分の事で迷惑かけるわけにはいかんと思うとることも。
お前が暗闇に落ちた時は、
1番にワシの手を掴め。
1番にワシを思い出すんじゃ。
そしたら、暗闇であろうと目が見えなかろうと、
ワシの手を掴むことができる。
ただ・・・悲しきや、お前が思わない限り、
ワシが思うだけでは手が見えんという事じゃよ。
ワシもまだまだ修行の身。
永遠に授業の身。
ワシも頑張らねば!)

深い眠りの中、夢を見た。

真っ暗闇の中、俺は小さく蹲ってる。
両膝抱えて青褪めた顔して怯えて蹲っとる。

ふと隣を見たら、隣で誰かも蹲ってる。
大樹や。
その隣で松吉も蹲ってる。
千代さんも・・・オカンも・・・薫ちゃんも・・・
たくさんの人が蹲ってる。
その人達には沢山のそれぞれの手がさし出されてる。
せやけど、みんな見えてへんみたいで、俯いてる。
青褪めた顔して自分を追い込んだ顔して。

俺が隣の大樹の腕を叩いても、大樹は全く変わりなく蹲ってる。
薫ちゃんやオカンにしても同じや。
俺もまた、蹲る。
自分はなんなんやろか。
答えもでん事を永遠と思い、もう何もかも投げ出したいと思ってる。
俺は一人ぼっち。
周りの奴らにさし出されてる手は見えるのに、
俺にさし出されてる手は見えへん。
俺は一人やから。
でもなんや、その気になれば何とかなる気がする。
怖い。
また頑張るんか?
解ってもらえへんのに頑張るんか?
 
ゆっくり重い頭を持ち上げて上を見上げた。
そしたら、満面の笑みで手をさし出すニコニコさん。
俺はそれが見えた時、
ニコニコさんの手を掴んだ。
周りを見たら、大樹も薫ちゃんも松吉も、みんな手を掴んで立ちあがってる。
これはけして簡単な事ではない。
頭を上げる事は簡単な事やない。

でも、俺達は一人と違う。
それぞれの自分に俺ら以上に考えて、なかなか見ようとせん俺らを、
辛抱強く見て手をさし述べてる何かがいる。

夢の中で学ぶ事。
それは起きたときに憶えとかなあかん。

目が覚めた時、棚に置いてあるニコニコさんにすぐ目がいった。

「ニコニコさん・・・。」

まだ解らん事だらけで胸がいっぱいやけど、
俺はニコニコさんに言うた。

「今日も1日、自分なりに頑張るで!」

よく人は言う。
自分が出来てもないのに人に言うなって。

自分が出来てなくても、そいつより出来てること、
出来てなくても頭で解ってることはあるはずや。
出来てへんかったら一緒にやればいい。
お前も出来てへんやんけって言う前に、
助言をしてくれたって言う事に対しての気持ち持とうや。

自分が出来てへんのに、人に言うのもな~。
そう思ってる人?
それやったら、俺も出来てへんけど、きっとこうしたらええと思うから、
一緒にやってみようや。
これでええんちゃうん?

人からしたら、ちっちゃい事でウジウジしやがって。
そう思われてるんちゃうかな~?
そんなん、そいつにしたらそうなだけで、
そいつの悩み聞いたら同じ事思うかもしれへんで?
悩みの大きさは人それぞれ。

とにかく、一人じゃない。
目に見えん人達がちゃんとおるんよ。

まずはそこから俺も始めよう。








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