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vol 82:闇の目
俺が今井の叔父として学校にのりこんだ。
職員室にいた大樹は目を丸くしてる。
慌てて立ち上がって俺の元へ。
「か、カン・・・何やってるの?!。」
「コンニチワ。織田先生。」
ニッコリ笑んで叔父らしくご挨拶。
ここまでの経緯。
朝、家の電話が鳴ったんや。
出てみると女の子で、大樹は居るかと問う。
勿論、大樹は学校に出た時間。
そう告げると俺の頭に、昨夜大樹から聞いた名前が出てきた。
「もしかして・・・今井?。」
彼女はハイと答えたんや。
俺は察知した。
今井は学校の悩みで電話してきた以外何もない。
お節介やと解ってても大樹が悩んでるリアルの事に、
関わりたかった。
今井の今の現状を聞く。
この時点で、俺も大樹も今井の話を信じてた。
今井の両親は共働きで、先生に相談してもなんのアクションもないという。
ただ2つのアクション。
それは・・・、
「ハァ?!お前に何も聞かんとクラスの連中に、
話したぁ?!。」
今井は今、休みがちになってた。
担任はその理由を本人に追及をせず、
クラスメイトに何かを告げたらしい。
何を告げられたのかは本人も解ってへんけど、
休んだ次の日に学校に行くと、クラスの男子が今井を見て、
なんかアイツ悩んでるらしいぞ、
そう言うたらしい。
俺がキレた理由。
担任が本人に何も聞かないまま、とった行動。
常識から考えて、まず本人に話を聞くやろう。
それをしなかった担任に腹が立った。
俺がムカついたのはそこだけ。
俺は今井にも言うた。
イジメられる方にも多少は原因があるんちゃうかって。
でも、今井にすれば自分も悪いところがあると感じて、
自分からクラスメイトに話かけたりもしたと言う。
学校には行きたい。
大学も行きたい。
でも、クラスには行けない。
そんな悩みを一人で抱えている彼女に、
俺に出来る事、
大樹に出来なくて俺に出来ることを考えた結果、
今井が努力してるんやから、後は周りのサポートやと考えた。
で、俺は今、今井の叔父として学校にいる。
「カン、何考えて、。」
「どうも、今井の担任の福島です。」
担任が現れると、大樹の声も途切れた。
「織田先生!久し振り~!。」
俺は昔この高校に実際に居た事で大樹と知り合いだという態度を見せた。
「あ、あー、うん、そだねー。」
大樹は冷や汗もので会話に合わせる。
「そうや、先生も一緒に話聞いてや。
俺の姪が今、大変やねん。先生も話聞いてるやろ?。」
大樹も場に入れようと俺の頭が働く。
「・・・福島先生、よろしいでしょうか?。」
大樹が担任に同意を求めると担任は承諾した。
そして連れられたのが、生徒指導室。
俺は確かにここの学校に通ってた。
中退したけど。
大樹、担任が座って、その前に俺と今井が座る。
今井は不安そうや。
まずは礼儀から、
「いやぁ、お忙しいのに時間とらせてすんません。」
「いえ、わざわざ足を運んでいただきまして。」
担任と叔父の会話が始まる。
「先生も知ってはる通り、姪が休みがちでして。
その理由がクラスにある言うんです。
手紙の件はご存じですか?。」
「はい。織田先生から話を聞きまして、
その後に本人とも話をしましたが、あれはもう解決していると・・・。」
解決?。
「手紙の件は相手の子が謝って今は普通に話してるって言ってたな?。」
担任は今井に話しかけた。
「えー、うん、まぁ。」
今井の返答に俺は不信感を覚える。
「その他に何かあったのか?。」
「・・・。」
今井はなかなか言葉を出さない。
「クラスメイトが無視する言うてたやん。」
俺が後押しする。
「無視?神田さんや竹内さんとか仲良いんじゃなかったのか?。」
「まぁ、話はするけど、話が続かないって感じで・・・、。」
担任と今井との話が続く。
俺は大樹に視線を向けた。
大樹も俺を見る。
今井の、俺も大樹も知らん話が飛び交った。
今井の現状はこうや。
元々3人でおった。
その内の一人が今井、その内の一人が手紙の主。
もう一人の子は家庭環境に問題を抱えた子で、
その子は登校拒否になり個別教室に来てる。
個別教室は、授業があるわけでもなく、
全学年が同じで自習。
教師は一人。
解らないところがあれば聞くシステムらしい。
朝は10時からで終わるのは他の生徒よりも早めに終わる。
今井はクラスメイトに無視状態だと俺に言うた。
でも実際は、話せる子もおる。
クラスの中にそりの合わない奴2名。
その二人が居るからクラスが嫌。
自分は一番話の合う友人の居る個別教室に行きたい。
そんな現状。
聞いてた事と違う。
俺が電話で聞いたのは、
クラスメイトが無視状態。
自分も変わろうと努力したけど無理で、
でも、クラスに戻れるなら戻りたい。
そう泣きながら今井は俺に話をした。
大樹が口を開く。
「今井、個別教室に行けばクラスにはもう戻れないよ?
もうクラスに戻る勇気がなくなってしまう。
ますます戻り辛くなってしまう。
解ってる?。」
今井は黙ったまま。
担任も言う。
「クラスに全く話す人もいない状況じゃないだろう。
もし、クラスにいないなら、隣のクラスに仲がいい子いるじゃないか。」
俺はじっと話を聞いてたけど、口を挟んだ。
「先生、クラスに今井の話をした言うのは?。」
担任は眉尻下げて説明をする。
「私が言ったのは人権の授業の時に・・・、
うちのクラスは家庭内の事情を抱えてる子が多くて。
ですので、隣の子の事をもっと考えるようにと話をしていただけなんです。」
大樹は眉尻下げて溜息混じりに吐息を吐きだした。
「なぁ、今井。
後何ヶ月かで卒業やん?
仲ええ子が個別教室とかそんなんはどうでもええねん。
お前は、それがベストやと思ってんの?
学校が嫌や言う話の中で選択肢は3つある。
学校に行かへん。
個別教室。
クラスに戻る。
自分にとってどれがえぇと思うねん。」
今井は口を開く。
「んー、まぁ、クラスに戻れるんなら戻る方がいいと思うけど、
たぶん私がもうこういう状況だから戻るのは無理、。」
「それは違うやろ。
クラスに戻る方法はあるで。
話せる友達にメールなり電話なりして、
今、わたし休みがちやん?クラスはどんな感じ?とか、
適当に言うて相手の出方を待つ。
その子が今井の現状にあんまり気づいてなかったら、
せやんなー、どないしたん?
って聞いてくるかもわからん。
そうなったら実はな、クラスに行き辛いねんって話せる。
でも、相手が別に興味ない言う態度やったら口調でわかるはずや。」
担任も大樹も大きく頷いた。
問題は必ず、どんな事でも起こる。
それに遭遇した時に逃げるのに枝別れは存在しない。
大概が2つくらいなもんや。
でも、前に進む方は枝別れが沢山存在する。
クラスに戻りたい気持ちがあるんやったら、
その枝別れの一つ、
話出来る子にメールする。
でも、やるのは本人。
俺ら大人はサポートしかできん。
これは大人になっても一緒や。
自分次第。
「どないするん?
個別か、クラスか学校行かへんか。」
今井が決断したのは、クラスやった。
大樹も担任も俺も安堵して、俺は担任に今後のサポートをお願いした。
今井は笑顔で家に帰る。
俺も気持ち良く家に帰った。
「カン。」
「おぅ。おかえり。飯出来とるで?。」
夜に帰ってきた大樹の表情は曇ってる。
「なんや、どないしたん。」
俺が問うと大樹は苦痛そうに話を始めた。
「学校に今井の母親から連絡が入ったんだ。
今井は個別教室を選んだよ。」
「は?。」
俺は耳を疑った。
「な、なんでや。メールしたん?。」
「母親に今日の出来事を説明したけど、
メールもしてなくて、今井の腹の内は決まってたって話。
母親も反対したけど、泣いてどうにも話が進まないらしくて。
母親が承諾したなら俺達はそれ以上踏み込めない。」
学校で話終わってから何時間かの間に何が起こったのか。
せやけど、あの今井の言葉はなんやったんや?。
個別教室に行きたいって決まってるんやったら、
あの場所で言うたらよかったのに。
俺がムカついたんは、周りに期待させるような行動をしたことや。
そんな気もないんやったら、
クラスに戻るように努力するなんか言わんかったええ話やん。
「カン・・・。」
「ふーん。ま、ええんちゃう。
今後、クラスに戻る努力よりも辛い目に合うやろう。
せやけど自分が決めた事やし、
個別教室がこんなんやと思わんかったぁ~、
なんか言うても通らん話や。
俺は別にどうでもええよ。
やることやったんやし。
俺も大樹も。」
今回の行動には俺自身、早まったかと思う。
もっとじっくり話聞いて・・・、
(それはいっしょの結果だよ、カン。)
「さ、サタン!。」
大樹が俺より先に気づいた。
でも、大樹はサタンの会話は聞こえへん。
「どういう事や、サタン。
お前が関わってたんちゃうやろな。」
俺はサタンを睨み付けた。
サタンは相変わらずの笑み。
(んー、ピンポン!
でも、その子に手を出したわけじゃないよ。
僕の手下がねぇ、その子の友人、
ほら、個別教室に行ってる子と契約を交わしてるんだ。
で、その子の希望の一つが、
今井を自分の側においておきたいって言う事。
僕はこんなオママゴトに手出しなんて・・・暇じゃないんだし。
でも、カンと別れてからの数時間でね、
気変わりさせるのは簡単さ。
契約の子を体から抜け出させてさぁ、
今井にどっぷり甘い蜜を与えたわけ。
親に反抗する力をねぇ。
こうやって、僕たちの手は若い子供をネズミ式に落していく。
契約した1匹のネズミさえいれば、
後は超簡単。)
「サタン、えぇ度胸やなぁ~。
俺まで巻き込んだ?。」
(フフフ。まさか。たまたまだよ。
それに、巻き込んだんじゃなくて自分で関わったんだよ?
それを僕のせいにされてもねぇ。)
笑顔で、答えるサタン。
サタンの言う分もその通りや。
俺が勝手に関わった。
「で?俺になんのようや?。」
(顔を見にね。
後、ごあいさつ。)
「挨拶?。」
(僕も、人間と契約結んでねぇ、
人間で今暮らしてるんだ。
カン、君が大きく発展したら、きっと出会う。
ううん、出会うように僕も協力する。
君に逢わないと。同じ土俵で。)
俺は口端吊り上げて笑みを浮かべ、
「そうか。
そりゃ楽しみやなぁ。
めちゃくちゃ楽しみや。」
(そちらの蛇君にも伝えておいて。
君の身近にも、僕たちの手は伸びているって。)
「あぁ、ちゃんと伝えとく。」
サタンは姿を消した。
「サタン・・・なんの用だって。」
「今回の件、今井の友人が闇と契約しよった。
今井の友人は望みの一つとして、
今井を自分の手元に置くように言うたらしい。
大樹・・・サタンが降りた。」
「降りた?降りたってっ、。」
「そうだ、サタンは降りた。
この世界に人間の子として。」
「弥勒。」
帰ってきたんも気付かんかった。
「弥勒、それどういう事?!。」
大樹は弥勒に詰め寄る。
「俺達と同じ場所に居るって事だ。
もう指示をする側ではなく、
自分で行動出来る存在になったんだ。
カン、お前の道も決まった。」
「俺の道?。」
「あぁ。お前は世に出て救いを求める子供の手助けをする。
そして、行く先、同じ場所でサタンと出会う。」
救いを求める子供の手助け。
同じ場所でサタンと・・・出会う?。
「ハァ・・・俺にはさっぱり理解できないよ。」
大樹はつぶやく。
大樹、お前だけやない。
俺もまだ理解出来てへんねや。
「飯~飯~、おー!今日は鍋だぁ。」
弥勒は・・・理解出来てるようやな。

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