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vol 57:涙
クソ・・・主にエネルギーを貰ったとはいえ、
この体の重み・・・呪の影響か。
あれから彼女は誰とも会おうとはしない。
僕に対しても罪悪感を感じているよう。
みんな悪魔は汚くて醜くて、人を殺して楽しんでると思っているだろう?。
彼女は違う。
自分の心をコントロール出来ないだけ。
嫉妬があるだけなんだ。
今、地獄は荒れている。
天の子が来た事で、悪魔達の僕達への忠誠が乱れ始めた。
「サタン様!。」
「何・・・騒々しいねぇ。」
僕の部屋に中級の悪魔が入ってきた。
やけに困った顔をしている。
「下の奴等が集会を。中に混ざって少し聞いておりましたが・・・。」
「が・・・何?。」
「ハッ、サタン様は悪魔ではないと。」
笑わせる。
「まだ、皆は集まっているのかい?。」
「はい。」
鏡に映る僕の顔。
左頬から首にかけてが鱗で灰色になっている。
彼女の嫉妬心が少しずつ流れ込んでいるのがよく解る。
皆が集まっている場所に案内させて扉を開けた。
その場所は臭い、ゴミ箱の様な場所。
僕が現れると、皆は沈黙した。
中には僕の顔を見てヒソヒソと噂を流す奴もいる。
「おい、あの鱗は天の子にやられたんだぞ。」
彼女の存在を知っているのは数人の悪魔だけだから。
「これはこれは、サタン様。何か御用で?。」
「いやぁね、楽しい集会をやってるって聞いたものだから。」
ニッコリ笑む僕に、話しかけてきた奴は怯えている。
「で?この地獄は誰の支配下にあると思う?。」
「そ、それは、勿論サタン様でございます。」
「そうだ!そうだ!。」
都合の良い。さすが、下級。
「だったらいいんだけど。
まさか、僕が天の子に現を委ねてるとかぁ~、
僕が天の子にやられたとか・・・そういう話なんか、
まさか、可愛い君たちがしてるわけないよね。」
満面の笑みを浮かべた。
皆は沈黙。
「め、めっそうもない。
・・・しかし、そのお顔はいかがなされたのです?。」
どうしたものかな。
「これかい?これはね、神への怒りの表れとでも言えばいいかなぁ。
天の子を、なぜこの僕が招き入れたと思う?。」
脳のない奴等。
「天の子さえ、この地獄に引きずり降ろせば神は身動きがとれなくなる。
そうなれば、人間共は我々地獄の支配下。」
「そんな計画が・・・。」
場内が騒ぎ始めた。
「僕はねぇ、悲しいよ。
僕の気持ちをお前達が一番理解してくれていると思っていたけど。」
偽りの悲しみ溢れた表情を見せて近くにいた悪魔の胸へ指を触れさせる。
そして、ゆっくり爪を硬い皮膚に埋め込んでいき心臓を掴み握り潰した。
「ギェエエエエエ!。」
痛々しい悲鳴を上げて床に崩れ落ちて行く。
場内はシンっと静まり皆の顔が青ざめた。
「僕はムカつくけど、神と同じ力を持つ。
お前達全員を散りにする事も容易いんだよ。」
イライラする。
「くだらない事やってないで・・・さっさと一人でも多くの人間を、
地獄の仲間にしてこいよっ!。」
鋭く睨み、声を上げる。
悪魔達は一斉に立ちあがり怯えるようにその場を去って行った。
正直、地獄に興味はない。
興味があるのは天の子。
僕の居場所は地獄で、その地獄にカンを連れて来たいのは本心。
そして、神を悲しませたいのも事実。
彼女の部屋に向かった。
ますます重くなったドアを開けて中に入ると、
ヘラはベッドで蹲って泣いている。
「ヘラ・・・。」
「うぅ・・・サタン・・出て行って・・・。」
僕はベッドに近付いて腰を下して彼女のベッドに這う綺麗な髪に触れた。
「ヘラ、もう泣くのはおよしよ。」
「サタン・・・どうして私は、
感情を抑えられなくなってしまったのかしら・・・。」
彼女の髪はキラキラとしている。
僕の髪は同じ金色でも質が違う。
「自分でよく知っているじゃない。
僕等は神に悲しませる為に地獄を創った。
もう、後には引けない。」
なぜ、こんな言葉が出るのか。
それは、僕の気持ちの変化。
「ヘラ、昔を思い出して気持ちを落ち着かす練習をしようか。」
「思い出す?・・・思い出したくないわ?。」
「思い出せば女神の姿を保てるし、君は奇麗なまま。
まずはそこから始めようよ。」
僕は・・・ヘラに昔に戻って欲しいと思う。
彼女はただ、純粋に愛しただけで、こんな罰を与えられたからだ。
罰を与えた?。
誰が?。
神?。
違う。神はただ、出て行けと彼女に言っただけだ。
僕みたいに追放されたわけじゃない。
泣いていた彼女に地獄へと誘ったのは・・・この僕だ。
人間を殺しているのも、彼女は何もしていない。
この・・・僕だ。
大樹も帰って、夜の病室で一人。
外は雨。激しい雨と違ってポツポツ降ってる。
カーテン開けて窓の外見てたけど、
なんや悲しなってきた。
また・・・ヘラが泣いてるんやろか。
カーテンを閉めてベッドに戻ろうとしたら、
ベッドにサタンが座ってた。
「さ、サタン・・・。」
驚くも・・・なんや空気が違う。
「やっぱり、呪が残ったみたいだねぇ。」
眉尻下げて笑む顔は寂しさで溢れてた。
「お前・・・その顔。」
鱗で灰色になった頬や首は色白いからすぐ解るし目立つ。
「僕も、残った。」
伏せ目がちなサタンは弱弱しくて、こいつらしくない。
「・・・どないしたん?。」
俺はサタンの前に丸椅子に腰かけた。
「う~ん。君のせいで僕が崩れそうなんだよねぇ。」
ニッコリ笑って冗談っぽく言う。
「お、俺のせいでか?。」
俺は反対に眉間に皺寄せた。
それを見たサタンは俺の頭に手を置いて、
「アハハ、じょーだんだよ。冗談・・・。」
冗談の空気には思えん。
どないしたったら・・・。
「それ、綺麗やなぁ。」
目の前でサタンの胸元で揺れるネックレスに目が奪われた。
綺麗な透き通った青い涙型のネックレス。
「ルシファーよ、お前はいつも一生懸命だ。
そんなに一生懸命だと疲れるぞ?。」
「いいえ!僕は神様の少しでも力になりたいんです。」
「その気持ちはありがたいが・・・おぉ、そうだ。」
「?。」
「これをお前にやろう。私の涙で作った雫だ。」
「神様の・・・涙?。」
「そうだ。涙はな、すごく大切な感情の一つなんだぞ?。
私の大切な涙を大切なお前にやろう。」
「神様の大切な・・・あ、ありがとうございますっ!。」
「サタン?。」
「あ、あぁ。貰ったんだ。コレ。子供の頃に。」
「へー。何で出来てるん?石か?。」
「さぁ、知らない。石かもね。」
元気のないサタンと会話が続かへん。
暫く沈黙してたけど、サタンが口を開いた。
「カン。」
「なん?。」
「これから僕は地球を滅ぼす。
滅ぼす為に人間を殺し、この地球を地獄にする。」
俺の顔は固まった。
「僕はその為に今まで人を唆し、殺してきた。
僕は・・・君が好きらしいけど、君の命を狙う。」
「サタンっ。」
「だからっ!・・・だから、逃げて。」
サタンは真顔で俺に話す。
警告する。
「い、嫌や!なんで?お前、ほんまはそんな奴違うやろ?。」
サタンは笑った。
「っふ・・・僕の何を君が知ってるって言うのさ。」
「知ってる!お前は、ほんまは俺らと同じや。
ほんまのお前は優しい、ええ奴や。」
「っ!。」
「さ、・・・サタン?。」
サタンの目から赤い雫がポロポロと頬を伝いだした。
サタンも自分で驚きを隠せないようで、
両手で自分の落ちた雫を見つめ、
「へぇ・・・僕も・・・泣けるんだ?。」
「涙?。」
初めてみる赤い涙。
サタンはゆっくり目を閉じて両手の雫を片手に集め、
ゆっくり握りしめた。
暫くして、手のひらを開くと、
そこには透き通った赤の涙型のペンダントが。
サタンは一つ笑い、
「僕にも作れた。ペンダント。」
そう言って俺の首にペンダントを付けた。
「それ、君のパパに渡しといて。
僕の涙は赤だったって言ってねぇ。」
サタンはベッドから降りて、スッキリしたような顔をして、
「それじゃ、警告はしたから。
次に会う時は、戦場で。大好きだよ、カン。」
「お、俺は信じてる!お前はそんな事せんって。
俺もお前が大好きやから!。」
俺の言葉にサタンは目を見開くも眉尻下げて笑み部屋を出て行った。
ベッドに入って目を閉じて、天界に向かった。
天界には黄泉の国の神や人達が居て、
どうやら天界も黄泉の国も其々が行き来しているらしい。
パパに会いに行くと、パパは俺を抱きしめて喜んだ。
俺はサタンから預かっているペンダントを首から離してパパに渡した。
サタンが言っていた事を言うと、パパは一人にしてくれ言うから、
俺は部屋から出た。
天界に大粒の雨が降った。
なかなか降りやまない大粒の雨。
窓から手を出して手のひらに雨を落とす。
手のひらで丸くなっている雨粒は、
透き通った青い色をしてた。

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