vol 34: 夢




時刻は午前1時。そろそろ寝な今日も学校や。

ついついゲームしてたらこんな時間になってまう。

ゲームを終わらせて布団に入って携帯を充電器に挿そうとした時に、
メールが入ってるのに気付いた。

受信2件。

1件は弥勒から。

≪件名:レベル99達成!≫
本文:やっと99。カンは今レベルどこまでいった?

無視。

2件目は大樹。

≪件名:起きてる?≫
本文:電話したい。ダメかな。

受信の時刻を見ると、12時45分。
なんやろ?

電話をかける。

『・・・もしもし?。』

『あぁ、大樹?今、メール見た。』

『なんだ、返事がないから寝たのかと思った。』

相変わらずの優しいトーン。

『で、なん?。』

『うん。特に何かっていうのはないんだ。
ただ、声が聞きたくて・・・。』

さぶ。

本来であれば、ここで鳥肌もんやろうけど、
俺は昔は女やったこともあり、普通に話を聞ける。
記憶が戻らんかったら、鳥肌もんやろうな。

『なんやねん、それ。もう寝な起きられへんで?』

普通に答える。

『ハハ、俺は平気。カンはヤバそうだね。』

『うっさいわ。』

『あのさ、ネットで載ってたんだけど、好きな人の写真をさ、
枕の下に入れて寝ると夢に出てくるんだって。』

『ふーん。・・・って、何を乙女チックな事、調べとんねん。』

『今夜、カンの写真入れて寝ようかなって。』

『俺がうなされるわ。』

『ちゃんと許可を得てしようと思ったんだ。
かまわない?』

『は?えらい律儀に。・・・好きにしーや。』

『そっか。うん。じゃ、そうする。』

その後は、学校の事と弥勒がレベル99になったことを話して電話を切った。

大樹も神で、俺も神やった時は俺も好意は持ってた。
でも、それよりもせなアカン事の方が気持ちが勝ってたんや。
男に生まれる事に反対した大樹は、なんで男に生まれなアカンか説明して、
渋々納得しよった。
天界と黄泉の国が仲良くなったとしても、
黄泉の国の神と天界の神が恋愛なんて許されるもんでもない。
しかも、俺は天界を治める人の娘や。
弥勒は当時、下界に行く俺らにカケオチとか言うて冷やかしてたけど。

いろいろと思いだしてるうちに、眠った。





寝た記憶があるのに、意識はハッキリしてる。

此処は見覚えのある景色。

森ん中や。

「カン?」

名前を呼ぶ声に振り向くと、チビ神が居る。

「カン、かわいー!」

キャピキャピと目の前ではしゃぐチビ神に俺は目が点。

「どうしたのカン?」

笑顔で近づくチビ神に、俺は不思議な疑問があった。

「夢やろ?なんで俺、意識あるん?」

チビ神はクスっと笑んだ。

「電話で言ったじゃないか。枕の下に写真を入れると、
好きな人の夢が見れる。」

「でも、なんで意識あるん?俺は写真なんか入れて寝てへんし。
なんで俺までお前の夢見てるわけ?」

チビ神は眉尻下げて切なげな目を向ける。

「スパッと言われると、分かっていてもグサっとくるね。
俺の力かもしれないね。ほら、元神だし。」

俺は怒りが込み上げた。

「おい・・人の睡眠をなんやと思っとるん?」

メラメラ怒る俺にお構いなしに、俺の髪に触れるも、
自分でも見えるはずのないクリクリした横髪に驚いた。

待てよ?電話の話って事は、見た目チビ神やけど、大樹って事か。
ってことは・・・俺は。

辺りを見渡し自分の姿が確認出来るものを探す。
ふと足元を見ると、俺は裸足でスカートのような白い服。
見覚えのある服に青褪めた。

「何やってるの?」

大樹は不思議そうに問い掛ける。
この森は確か、黄泉の国の蛇の国。
奥に行けば湖があるはず。俺は走って森の奥に進む。

「あ!ちょっと、カン?!」

そんな大樹の声も無視して走ると湖が見えて来た。
やっぱり。ここは蛇の国の森や。

膝を草につけて湖を覗き込む。
水面に映し出されたのは金色の髪のクリクリパーマの小さな女の子。

「ぬぁあっ!」

後ろに尻もちをついた。
なんで天界の姿やねん!

「ハァハァ・・・カン、走るの速いって。」

追いついた大樹を下から睨み上げる。

「大樹・・・お前、なんでこの姿やねん!」

大樹はキョトンとするも、頬を赤らめて照れ笑し、

「だって・・・夢だし。」

「は?」

「あ!でも、現世のカンの姿も好きだから!」

必死になって言う大樹の腹を、つい殴ってしもうた。


静かな森の中の湖。
何故か女の姿の俺と大樹が座ってる。
大樹は腹を殴られた意味が解らないと不貞腐れとる。
不貞腐れたいのは俺の方や。

「あー!もう、うっとおしいなぁ。隣で唇尖らすなや!」

不貞腐れ方が気にくわん。どっちが女やねん。

「だって、せっかく夢で逢ったのに、手も握ってないもん。」

アホかコイツ。

「・・・うるさい!」

でも、コイツに弱いのは俺で。
大樹の手をギュっと握ってやる。
俺の顔は真赤。
手を握られた大樹は俺の顔を覗き込む。
目を細めて・・・まるでキスするみたいに。

「・・・。」

アカン、このままでは流されてしまいそうや。
俺のプリチーな唇が奪われる。

「チビ神?もしや天の子ですか?」

大樹と俺の唇がくっつきそうになった瞬間、背後から声が聞こえ、
大樹と俺は目を見開きパチクリと瞬きをした。
俺は大樹の肩を思いっきり押すと大樹は後ろに転げてしまい、
体を後ろに振り向かせる。

「あぁ、やっぱり。これはまさかの人に出会いました。」

そこに居たのは阿弥陀如来や。

俺は懐かしい相手に笑顔になって立ちあがって阿弥陀如来の手を取った。

「うわ~!めちゃめちゃ久し振りやん!元気しとった?」

「ふふ、元気でしたよ。天の子。貴女も元気そうですね。」

「うん。元気・・・やけど、なかなか上手くいかんわ。」

「ほう。やはり難しいですか。」

阿弥陀と二人で話は盛り上がる。
大樹は転げたままシクシク泣いている。

「ん?チビ神、如何なされましたか?」

阿弥陀が泣き声と話に入ってこず、倒れている大樹に話しかける。

「あー、もう、そいつは無視無視。」

俺は阿弥陀の手を掴み、苦笑しながら話を元に戻した。

「釈迦如来とか元気しとるん?」

「えぇ、勿論。我々も最近は忙しくて。死者も増えてますし。
弥勒も居ないので少し寂しさも感じています。」

「そっか。死者も増えてるって・・・。」

「えぇ、幼い死者が。天界の方もとてもバタバタしている様子です。」

「・・・下界で今犠牲になっとるんは子供やねん。」

「子供は今からの存在ですからね。」

「うん。」

「天の子。」

「今はカンって呼ばれてるんや。」

「そうですか。カン、闇の使者にはもう?」

「あぁ、うん。2回程。でも、まだそんなには関わってへん。」

「闇の者は霊体でしたか?」

「霊体?・・・うん、多分。実体化はしてへんかった。」

その話に俺は深刻に表情を曇らせた。

「闇の住人も、着々と自分たちの手下をつくってる。
しかも、生きてる人間を善悪つかん状態にさせて利用しとる。」

「いいですか、カン。時が来る事に備えなさい。」

「それやねん!俺、どないしたらええんか解らんねん!」

ずっと下界で悩んでいた事。
何をしたらいいのか解らない。

阿弥陀は俺の頭に手のひらを乗せて笑んだ。

「人間という生き物の在り方を学ぶのです。
左右される心を悟し、何事にも揺れぬ人となるのです。
大丈夫。貴女には我々もお父上も主も・・・全てのあの世の者がついているのですから。」

「・・・うん。」

難しい宿題やと思った。
せやけど、阿弥陀の言葉は安心もさせる。

「では、そろそろ私は行きますね。」

「あ、うん。」

「チビ神、ではまた。」

真赤な鼻をした泣き顔の大樹はコクコクと阿弥陀に頷いた。

ホンマ・・・こいつ・・・。

阿弥陀が去った後、景色がぼやけだす。

「え?嘘・・・もう?」

どうやら夢から覚めるみたいや。

「そ、そんなぁ~。俺なんにもしてない。」

指を咥えて肩を落とす相手に、頭を殴ってやりたい気分になる。
なんとか、その気持ちも抑え、

「なぁ、大樹。お前、夢で俺と何したかったん?」

その問い掛けに大樹は顔を一気に赤らめて俺から目線を逸らした。

「そ、それは・・・愛し合いたいって・・・。」

「・・・夢、もう覚めてかまへんぞー。」

空に向かって何気に言うと大樹は嫌だ嫌だと足踏みをする。

あの世で俺にずっと協力して、下界にまで共に降りた大樹。
そう思うと、俺かて愛しく思う。

「大樹・・・。」

俺は大樹の首に両手を伸ばして首に手を絡める。
背が低いから自然と大樹が腰を曲げた。

「・・・カン?」

「ちゃんと・・・好いとうよ?」

その言葉に大樹が目を見開くと俺は自ら唇を重ねようと・・・。

ピピピピピピピ・・・。

ゆっくり目を開けると、いつもの俺の部屋の天井。

目が覚めた。

鳴り響く目覚ましを手のひらで叩いて切り、上半身を起こす。

激怠。

3分後に大樹からメールが来た。

≪件名:     ≫
本文:なんで?!

知るか。
もうちょっとでチュウするとこで終わったから不服なんやろな。

ええか、大樹。
夢ん中の俺が告白しただけでもありがたく思え!


全然寝てへん中、制服に着替えようとした時、
窓から眩しい真白の光が部屋に射した。

この光の眩しさ・・・天界の神・・・パパや。











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