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vol 109:子供の記憶
サタンが気を集中させると、俺達はラドゥンの記憶の中へ。
また、魔法みたいなと思ってたけど、
これは魔法でもない。
死んで間もない人間の体に入る。
勿論、魂でや。
少しでも死んだ肉体の中に、記憶してるかもしれん。
想いが残ってるかも。
ラドゥンの中に俺と弥勒とサタンが入る。
魂とは形のない光。
それでも、こんなちっさい体に男3人もって考えたら・・・、
ウゲェ~。
『おやすみ、ラドゥン!。』
(おやすみ、チー、ジャンヌ。)
チーとジャンヌにおやすみを言った。
今日は怪我をしたから一番喜びを感じた。
過激派が興奮して何発か撃った銃の玉が、
父親の元に行こうと走っていた時に俺の横から顎を貫いた。
一瞬の事で何がどうなったのかわからない。
ただ、俺は誰かに顎を横から殴られたみたいで、
そのまま地面に倒れたんだ。
不思議とこの時はまだ痛みを感じなくて、
顔を上げたら目の前には父親が倒れて死んでた。
(父さん!・・・とうさぁーん!。)
『あ゛・・あ゛・・・?!。』
叫んだはずの声は、言葉にならなくて、
だらだらと何かが垂れ落ちる違和感に、地面を見る。
赤い水溜り。
震えながら顔に触れる。
ヌルヌルしていて・・・、。
(ぅ・・・うわぁああああああ!。)
その後は地獄みたいだった。
軍に運ばれて、紐で手足を縛られて、
まだ生きているから、この傷で人間はどの程度生きられるのか、
実験しようって大人が話す。
血が止まらない傷に良く熱した鉄の棒を剥き出しになっている個所に、
当てて焼いて止血した。
味わったことのない痛みに死にたいとまで思ったんだ。
あまりの痛みに気を失って、
廃人の様になって軍の施設に隔離されてた。
飲めないって思ってたんだろうね。
軍人は長い管を喉から胃に入れて、
俺にスープを与えてた。1日2回。
すごく苦しくて、でも俺はされるがままで。
神様・・・俺、そんなに悪い事したんだね。
良い子じゃなかったんだね。
ごめんなさい、神様。
神様が助けてくれないのは、
俺が良い子じゃなかったからだって思い込んだ。
何日かして軍の施設が爆撃されたんだ。
俺は逃げた。
走って、走って。
孤児院の近くで倒れていたのを、町の誰かが孤児院に運んでくれた。
目を覚ましたら、
そこにはチーが居てニッコリ笑って・・・、
『おお!生きてる!おまえ、スゲーなっ。』
チーの無邪気な笑顔に、
(コイツ、俺が怖くないのか?。)
心で思う。
『こわくない。おまえの光、きれいだからな。』
驚いた。
コイツ、俺の言葉が解るのか。
でも、コイツの目・・・。
(お前、俺の言葉がわかるのか?。)
『わかる。オレはおまえじゃない。
オレはチーだ。』
チーはすごく愛らしくて、少し生意気で。
俺よりも小さいのにとても明るくて、一番の俺の理解者になってくれた。
(なぁ、チー。)
『ん~?。』
(チーはどうして目がないんだ?。)
『んー、オレのとうちゃん過激派でな、
軍にバレて。』
(軍に攻撃されてか。)
『ううん。バレたってわかったとうちゃんが、
手榴弾で自爆したんだ。
そんとき、かあちゃんに抱かれてて、
咄嗟にかあちゃんはオレを力いっぱい放り投げたんだ。
その時、オレはかあちゃんを見てた。
オレがかあちゃんを見てた時に爆発して、
爆風で目が焼かれた。』
(チー・・・。)
チーもまた、俺とは違っても大きな心に傷をもってる。
でも、それでもチーは笑ってて、絶対に泣かない。
イジメられても、シスターにお仕置きされても、
チーは唇噛みしめて耐えるんだ。
そして、夜中にひとりベッドの中で泣いてるのを俺とジャンヌは知ってる。
ジャンヌは途中から入ってきた。
見た目は普通なのに耳がない。
俺の声も聞こえない。
ジャンヌはいつも無表情な女の子。
孤児院のみんなは俺をバケモノって呼んでるくらい、
嫌がられてる。
ジャンヌは女の子。
俺よりも年上だけど、きっとジャンヌも・・・。
俺はジャンヌの手話はその頃わからなくて。
ジャンヌが紙に文字を書いて見せてきた。
ラドゥン、私もあなたと話しがしたい。
そして、ジャンヌの手話をチーと教わった。
ジャンヌは過激派から逃げてきたんだ。
父親が軍人でジャンヌが掴まって拷問にあって。
大人は子供をいじめるのが好きだ。
大人のよく解らない争いで、
俺達のような子供が増えてる。
大人はすぐに死ぬけど、
俺達は、
こんな姿になっても死ねずに生きてる。
「トントン。」
思い出に耽っているとドアを叩く音が鳴った。
とても小さな音で。
チーやジャンヌは寝てるみたい。
俺はベッドから出て、ドアに向かう。
ゆっくりドアを開けたんだ。
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