|
vol 21 : 使者
俺は普通では目に見えないモノが見える。
普通では聞こえない声が聞こえる。
それは生まれながらに持つ力ではなく、俺が望んだ力や。
昨日、大樹と力について話をした。
俺は自分の掌を合わせて目を閉じてみる。
集中し・・・
「ふんっ!」
カッと、目を開き息を勢い良く出すも、なんも起こらん。
「ハァ・・・なんで大樹はあんな事できるようになったのに。」
これは嫉妬か?
後から来た大樹のが、なんや不思議な事できたさかいに。
嫉妬て・・・そんなんする事事態おかしいやろ。
と思う自分と、思いながら実際は悔しい気持ちをかき消す。
部屋には誰かいる気配がする。
ニコニコさんやない。
なんか、空気が重い感じがする。
(誰や。おるんやろ?)
すると真白な狼の姿が隅から現れた。
「うっわ!オオカミや!」
俺は動物が好きで、中でも狼にはとてつもない魅力を感じる。
なんでココに狼がいるとかも考えられんくらいに興奮した。
「お前、話出来るん?」
キラキラした目を向けて問い掛ける俺に狼はゆっくり近づき、
(カン・・・チカラ欲シイ?)
力?
「力って・・・そらまぁ、なぁ。」
その問いかけに違和感を感じつつも、俺は仲良くなりたぁて堪らん。
「な、な。触ってもええ?」
(オレニ触ル?カン。)
「せや?触りたいんや。アカン?」
狼はゆっくり俺に近付き、
その場で膝をついている俺の体に顔を擦り寄せてきた。
夢みたいや。
鋭い目に凛とした顔。フワフワな毛。
俺は狼の体に触れて背筋を撫でた。
大樹にはシロ。俺にも・・・。
(カン友達。カン好キ。仲間。)
「え・・・俺とお前がか?」
(俺トオ前。仲間。力。)
俺の今の心境を覗かれてるかのような言葉を言う相手に、
俺は胸が苦しくもなり、高鳴りもした。
「そうか。ええで。よう来てくれたなぁ。」
狼の頭を撫でる。
(カン有名。天ノ子。デモ、天ノ子関係ナイ。カン好キ。チカラナリタイ。)
俺は天の子と言う言葉にはウンザリしてたんと、
後ろめたい気持ちと、その名前が嫌いになっとった。
それをコイツは関係ない言うてる。俺が好きやって。
「名前は?」
狼に問い掛けると、狼の黒と青い目は大きく開き、
その目に少し寒気すらする。
(リュカオーン・・・)
「りゅ?・・・なんや長い名前やなぁ。リュカでええか。」
俺は大樹とシロみたいに相棒が出来た気持ちになった。
へっへーン!大樹に自慢しーたろっ。
(内緒。皆ニ内緒。)
「え?内緒って、お前ん事言うたらアカンって事か?」
リュカオーンは首を縦に振った。
「・・・わかった。」
俺は自慢したいなんかよう言わんかったんや。
ニコニコさんにも内緒、なんかな?
そう思うとニコニコさんに罪悪感感じる。
「なぁ、うちのオカンもな見えはせんけど、聞こえるんや。アカン?」
リュカオーンは首を縦に振る。
アカンか。
「ほんなら、俺にはニコニコさん言う神さんがいるんやけど・・・。」
そう言ってニコニコさんの置物に目をやった。
リュカオーンは大きく首を横に振る。
罪悪感を感じつつも、
俺はリュカオーンの神秘的かつ鋭い目の風貌に心惹かれ、
それを承諾したんや。
(カン友達。カン助ケル。)
そう言ってリュカは姿を消していった。
嬉しくてドキドキする。
リュカがどう助けてくれるんやろか。
まるで、漫画の主人公になったみたいや。
それに伴い、きっとこれからいろんな霊とまた出会うんやろうなって、
少し覚悟せんなアカン気もした。
でも、リュカがいる。
大丈夫や。
ニコニコさんの存在が俺の中でリュカオーンという狼の存在のが、
大きくなっていく。
それを知ってか知るまいか、ニコニコさんの姿が見えへんようになった。
忙しいんやろうけど、俺の神さんやのになんでおらんねん。
俺より他の方が大事なんやなきっと。
リュカは毎晩会いに来た。
風呂ん時も学校にもついて来るようになって俺は嬉しくて堪らん。
不思議な事にリュカが来て数日の間、霊の頭痛がない。
霊すら感じへん。
リュカに守られてるんやろか。
織田家に行く時はリュカは一緒に行こうとはせん。
織田家の帰りに自転車の横を気づけば一緒に走ってる。
こんなんも結構新鮮やし、俺が好きな光景や。
リュカは俺の望んでることをやってくれる。
何か文句言うわけでもなく。
「ねぇ、シロ。最近、カン変じゃない?」
俺はカンが帰った後、ベッドでとぐろを巻くシロに問い掛けた。
シロの声は相変わらず聞こえない。
ひらがな表をシロの前に持って行く。
「いつも、変。」
シロは口でひらがなを指す。
「またぁ。シロもカンが好きなくせにそうやってふざけるんだから。
カン、少し痩せたし、笑ってても表情が暗い。」
俺の話にシロが指す。
「なにかに・・てをだしたんじゃないか。何かにって!」
俺はシロの発言に驚いて一気に不安になった。
カンは俺の大事な人。カンの変化はすぐに解る。
「シロ!偵察してきて!お願い。」
真顔の俺にシロは、え~っと言わんばかりの顔をし、
ひらがな表を指す。
「もうすこしようすをみろ。
・・・様子なんて見ててカンに何かあったらどうするのさ!
あの暗い雰囲気おかしいって!」
興奮しながら大人げなくブンブン頭を左右に振り、
「シロ、お願い!」
俺はシロに頭を下げた。
シロは小さく溜息を吐き頭を縦に振り消えていく。
「カン・・・」
シロの偵察を待つしかない俺はソワソワし眠れるわけもない。
シロは帰って来なかった。
朝になり、まったく寝ていない頭は重い。
学校の支度をしないと。
食欲のない状態だけど、父さんも母さんも心配するからと、
朝食を食べて学校に向かった。
 |
21 
|