vol 18 : 誤解



変わらぬ日々が続く。

普通に過ごして、霊達の訪問。

時に楽しく時に苦しく日々を送る。
今自分が何をしなくてはいけないとか、
そんなん浮かばんままに。

俺は日々考えてた。
天界と黄泉の国の世界の話が、やっぱり頭から離れん。
俺が見た世界がホンマにあって、
あの蜘蛛の糸の話がホンマやったとしたら、
俺のとこに来る霊達の悩みは、俺が聞く中ではやけど、
酷く中身が濃く悲しいもの。
日々、それを経験すると、実際の周りの人間が小さくお気楽で甘えたで、
自分の為だけに努力し悩んでる気がした。
俺も含め、人間が嫌いになる。

学校の奴らの悩み。
親への不満、女や男の話、新しい音楽にアイドルの事。

年寄りの悩み。
子供のこと、世間体、金、欲。

今の俺らには大きな悩み。
それがくだらない悩みに振り回されているとか、思えて堪らん。

同じ地球で繰り広げられる戦争、犯罪。
これもまた、俺ら人間が起こしてる結果良くならない事。

人間の悩みや悲しみに俺は冷めた。
それよりも、俺らの足に踏まれる雑草や、家の為に切られる山。
必要以上に殺される魚や牛。
車にひかれて放置されてる猫。
そっちのが大きな悩みと俺ら人間がしてる悲しみに頭がいっぱいになる。

「ちょっと、知ってる?
見たのよ。戌尾さんとこの息子さんがね、死んでる猫拾ってるとこ。」

「私は道端の雑草をじーと見てるのみたわ。」

「最近おかしいわよね。」

「洋子ちゃんも大変よねぇ。息子がおかしくなっちゃって。」

近所の人間が噂する。
世間話のネタ。

最近俺は、道路でひかれて死んでいる猫を拾って家の裏に埋めた。
理由は1つ。
人間のせいで死んだのに、放置されてる事。
これが人間が死んでたら大騒ぎになるのに、

「でもいいんじゃないかしら。猫が死んでたら気持ち悪いもの。
役所に電話して処置してもらおうと思ってたのよ。」

最低、最低、最低。
人間ならではの発言。

同じ動物やのに、こうも違う。
野生の動物は、肉食は草食動物を殺す。
草食動物は草をむしる。
生きる為に殺して食べてる。
ただ、それだけ。
必要以上に殺すわけでもなく。
人間はそれが出来へん。

なんでや?

俺は地面の道に広がる草をどうしても踏みたくなかった。
せやから草を避けてコンクリートを歩くんやけど、
補正されてない道は雑草だらけで、
歩く場所がなくなって立ち止まってもうた。

「・・・」

歩かな帰られへん。
どないしよう。
どないも出来へん。
草を踏んで歩いた。

ごめん。
ごめん。
ごめ・・ん。

涙が溢れそうになった。
人に見られたら恥ずかしい。
俺は見られんように俯いて歩く。
俺もまた、人間。

部屋に戻って問い掛けた。

(なぁ、ニコニコさん。どないしたらええん?)

最近の俺は人を見下す。
人付き合いもせんようになった。
織田家にも行くの辞めた。
松吉や大樹や千代さんは好きや。
せやけど・・・人間や。
俺も含め人間や。

立ちすくんで泣く俺の前にニコニコさんが現れた。

(カン、責めるな。)

ニコニコさんはいつもの笑顔で話す。
笑えへんよ・・・今の俺。

(俺は天の子なんやろ?それやったら・・・それやったら、
なんで霊と話したり見えるだけで何も出来んの!)

俺が霊と話せたり見えるんも、元からやない。
自分で望んで勉強したからや。

(大事な自然も守られへん!
俺も当たり前みたいに食ってる!
金も欲しいし、贅沢ももっとしたい!
・・・。
そんなん・・・思う人間が、天の子呼ばわりされる資格ない。)

俺の心の中では俺は真っ暗の中で蹲ってる。

(それは神の我々であっても、何も出来んことと同じじゃよ?
神でも何も出来ん。
道を教えても、後は相手次第。
木が倒れていても、木を元に戻す事も出来ん。
殺されそうになっている者に逃げる道を与えても、
その者が諦めてしまえば助ける事も出来ん。
霊になってから初めて手を出せる。
しかしな、霊になっても我々の話を聞かなければ、強制は出来ん。)

(・・・ほんなら・・・神なんかいらんやん。)

俺の発言にニコニコさんは俺の頭に触れた。

(カンはワシが嫌いか?)

俺は俯きながら大きく左右に頭を振った。

(そうか。だったら、神のはしくれのワシがカンには要るという事じゃ。
ワシも皆もカンが大好きなんじゃよ?
人間のカンが。
そして、お前の父、天界の神も人間が好きなんじゃ。
天界の神は・・・カン以上に人間への悲しみを背負っていらっしゃる。
手を出せずに見守っている神々は、
死んでいる猫を埋めてやることすら出来んのじゃから。)

真っ暗な俺の中で小さな光が灯る。
俺はニコニコさんに抱きついた。
けして形あるものと違う。
形あるものとして抱きついた。

「ごめ・・・ごめん!ごめん・・・。」

涙はますます溢れて、自分の馬鹿さに呆れて、
自分勝手な思いの馬鹿さに申し訳なくて。

(ハッハッハ!そう思うのもとても大事な事。
思って初めて解る事もある。
そして・・・誤解も解ける。)

ニコニコさんは優しく言う。
優しく、優しく。

(人間は素晴らしい生き物じゃ。賢い知恵もある。
ただ、使い道がのぅ。)

眉尻下げて笑みを浮かべるニコニコさん。

(命のなかった純粋な人間が、死の恐怖を知り、
その結果なんじゃ。
でもな、それには理由があり、その根源はもう罪を背負ってきた。
長き罪。
そしてそこにも、そうなった理由があった。
難しく、悲しく、哀れな事実。
その人間がいたからこそ、カンが此処に居て、
ワシらと出会えた事。
人間に感謝せねばな。)

話が深い。

まだ、ガキの俺は話を解らない事もありながらも聞き、
今の俺が居る事に関しては人間に感謝せなあかんとも思た。
俺が人間なんは変わらん事実。
戦争やら自然破壊してるんも人間という事実。
何も出来へんという事実。

(カンよ。シロが怒っとたぞ!)

ニコニコさんが白蛇神をシロっちゅーた事に俺は目が点になった。

(いやぁ~。カンが神を侮辱している!ソナタの教育がなっとらん!
シャー!ってな。)

ニコニコさんは笑いながらシロの真似をして言う。

「アイツそんなんニコニコさんに言うたんか!」

シロのやつ。

(そうじゃ。まぁ、あの方は蛇の国の中の大神じゃからな。
少し世間知らずの坊ちゃんなんじゃ。仕方あるまいて。)

(せっかく俺がええあだ名つけたって大樹にも可愛がられとんのに。)

俺は、やれやれと床に腕を組んで胡坐をかいて座った。

(ほれ、坊ちゃんじゃから。)

ニコニコさんはクスクス笑って俺の前に座った。
ニコニコさんとこんなゆったりしたんは初めてや。

いつもの俺に戻った気分や。

(ニコニコさん、シロにシロ言うたん?)

(おぉ!勿論じゃよ。大樹のとこにおる、部屋中の蛇達に、
説明しとったんじゃけど、シロはやたら上からものを言う傾向がある。)

(あー)

あの性格やったらな。

(そんでワシがもうちと、蛇達に合わせて話したらどうじゃシロ。
そう言ったら怒りだしての。
シロじゃない!白蛇神だ!ってのぅ。)

「アハハハ。ほんで?」

(噛まれた。)

「ひー!」

俺は可笑しくて可笑しくて腹抱えて笑って、
そのまま寝ころんだ。

ニコニコさんはその後、用があるからってどっか行ったけど、
俺の中での、あのイライラや苦しいや冷めた感情は無く、
なんかスッキリしてたんや。

ニコニコさん曰く、
俺のその通りで、でも誤解していた事は、
必要なことであって、それが解けた時、
俺が一つ大きくなった気がした。

みんなも、早く気付いて欲しい。

そばに誰かが居ることを。

誤解はいつか必ず解けるんよ。

変な噂されようが、
誤解なら、いつか必ず解けるんよ。

それに惑わされんと真っすぐ生きてたら、
誤解はいつか解けるんよ。

その意味が解った時、
大きくなれるんよ。

がんばろ俺。

頑張ろうや、みんな。










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