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vol 209:蓮のつぼみ
仕事の移動中。
「なぁ、大樹アレ・・・。」
窓の外の道を歩く人を指差す。
「あの人もだね。」
「あっちも・・・こっちも・・・。」
俺や大樹、霊が見える者にしか解らない光景。
道行く人々の後ろに白い服を着、
灰色の羽根を生やした者がベッタリとくっついてる。
「どう見ても天使やんな?。」
「ただの霊には絶対見えないよね。
あの白さと光。」
天使の羽根は俗に白で表現されることが多い。
せやけど、実際は鳥の羽根みたいに、
灰色やったり、先の方が濃いかったり。
真っ白もいるけど、
それは俺や。
主は少し黄色がかってる。
まぁ、基本羽根は天使であって、
俺や主や神は持ち合わせてないんやけど、
勿論、付けることもできるんや。
「ねぇ、カン。」
「ん~?。」
「裁判じゃないけど、
神々の審判はどうなったの?。」
「あー、どうなったんやろ・・・。
結局、結果何も聞いてない。
大日が任せろ言うから放置。」
大樹に言われるまで何も気にしてなかった。
どうなったんやろ。
思い出すと気になりだす。
夜、4時間しか眠れない時間の中、
大樹と一緒に黄泉の国にくり出した。
向かうはやっぱ阿弥陀の国。
(おや、いらっしゃい。)
相変わらずの阿弥陀如来に大樹は頭を下げて挨拶をする。
「なぁーなぁー、どうなったん?。」
蓮の花が咲く川のような池のある庭に座っている阿弥陀に、
俺と大樹は近づいて目の前に腰を下ろした。
(決まったようですね。
天界の神に聞いてないのですか?。)
「うん。帰ってへんし。」
(たまには帰って顔を見せてあげないと。)
「なんや、人間界がおかしいんやけど。」
「天使の数が半端ないんです。」
(そうでしょうね。
災害・争い・貧困は免れないようです。)
「えぇ!ほんなら、審判は続行なん?!。」
阿弥陀はゆっくり縦に頷いた。
「カンの訴えは届かなかったね・・・。」
大樹が悲しそうな顔をして呟いた。
(いいえ。ちゃんと届きました。)
「え?でも・・・結果は何も変わらなかったってことですよね?。」
(いいえ。決行はされますが、
全ての生き物の命を奪うことは免れました。)
「どういうことなん?。」
(見極めた者は、宇宙の神々の子らによって、
救われます。)
「見極めた者だけ・・・ですか?。」
(見極めた者はどんな困難にも生き延び、
そこに宇宙の神々の子らが手を差し伸べる。)
「ようわからん。
結局、普通の者は死んで、
役目ある者だけが助かる言う事なん?。」
その答えなら俺はムカツク。
(いいえ。
普通の者が生き延びるでしょう。)
「普通の者が・・・ですか?。」
(普通の者。
今、普通の者はどれだけ居るでしょう。
普通とは一体何か。
きっと、今の人間は普通の事が、とても難しい事と思うはず。)
「当たり前の事が出来へんみたいな?。」
阿弥陀は俺にニッコリと笑んだ。
(衣食住の大事さ。
衣食住の真の意味。
命の尊さ。
それぞれの愛の意味。
この根本を理解している者。
その者こそ、新たな始まりの人間となるのです。)
「要は、今いる人を観察してるっちゅーことか。」
(そうですね。)
「あの・・・黄泉の神々はそれに加わっているのですか?。」
大樹の素朴な質問。
阿弥陀はゆっくり左右に頭を振った。
(これは天界の神々、宇宙の神々の役目。
我々は、死んだ者への対応となります。)
「そうですか・・・。」
「生きてる者の見極めも責任ある事やけど、
これで死んだ奴への対応のがかなり大変やん。」
阿弥陀は池に咲く一輪の枯れた蓮の花を指さした。
「この国でも枯れるのですか?。」
(見てなさい。)
枯れた花は茶色くなって、
花弁も水面に浮かぶ。
暫くすると、全ての花弁が千切れて流されていき、
残ったのは小さな綺麗な色のつぼみ。
(死してここに来る者も同じ。
理解出来ず、何故自分が死んだのか、
納得も出来ず、落ち込み、荒れ、
しかし、我々はその者が理解出来るように精一杯の、
手助けをする。
そして、全てを理解出来た時、
始まりのつぼみとなるのです。
我々の役目もまた責任もあり、
とても、重要な事なのですよ?。)
大樹は、ジッとその蓮のつぼみを見つめた。
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