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vol 23: 続昔話天の子編
人間は既にこの世に存在し、あの世には2つの世界がありました。
2つの世界は、天界と黄泉の国とに分かれていて、
お互いの世界が、お互いを神だと認めていませんでした。
此処は天界です。天界には宇宙の神の一人でもある神が、
地球を守る役割を与えられた神の治める大きな国です。
ここは天界から下界、いわゆる人間界を見下ろせる湖のある場所。
それぞれの人間を見ることが出来ます。
天の子は湖を見つめていました。
「天の子よ、どうしたのです?」
付き人、世話役の天使が問い掛けます。
「んー?・・・人間って何してるんやろ思て。」
ジッと湖を見つめ人間が人間に酷く乱暴をしている姿を眺めます。
「なぁ、なんであんなんしてるん?」
「あれは奴隷達です。今蹴られたのが奴隷ですね。」
「奴隷?奴隷って、なん?」
天使はどう話そうか迷いました。
すると、そこに天の子の兄が現れたのです。
天使は地面に膝をつき、額を地面につけました。
「主よ。」
天の子は顔を上げて現れた兄を見ました。
主は天使の頭上に手のひらを翳し、
「頭を上げなさい。その様な挨拶はしないでもらいたいと、
お願いしたはずです。私は貴方と何一つ変わらないのです。」
主は困った顔をして天使を立たせました。
天使は恐れおおいと後退りし、地面に再び頭を下げます。
「兄ちゃん・・・何しに来たん?」
天の子は湖を見つめながら問い掛けました。
主は妹の横にしゃがみ、湖を見つめます。
「お前が生まれてから私は直ぐに下界に降りた。
幼い頃のお前になにもしてやれないまま、私は帰って来ました。
お前との時間を作りたいのです。
いけませんか?」
主は優しい表情を天の子に向けました。
その言葉を聞き天の子は素直な感情を露にし、主に笑顔を向け、
「アカンわけないやん。兄ちゃんの事は皆から聞いてる。
スゲー人やって。人間の罪かぶった時、見てたんよ?
皆で。パパも一緒に。なんも出来んかったんはアタシの方や。」
天の子は主の殺される場面は忘れられず胸を痛めていました。
主はそんな天の子の言葉に笑みを見せ、
「あぁなる事を承知で下界に降りたのです。
ですが、まだ人は繰り返す。」
主は湖に映る人間を見つめました。
「なぁ兄ちゃん。あれは何してるん?」
さっきまでの疑問をぶつけます。
「あれは、人が人を物として扱っているんです。」
「人が人を物?」
主は湖の水面を指で撫でて場面を変えました。
水面には小さな子供が全裸で人前に立たされ、それを売る大人、
それを物色している大人の光景が映しだされました。
「今、これは子供をお金というもので買っているところです。
買われたこの子供達は人間以下の扱いをされます。」
天の子は目を見開き、とてつもない感情に水面に手を入れようとしました。
主はその手を掴み、
「いけません。手出しを出してはいけません。」
「なっ、なんでやねん!見てみぃ!あんな目してるやないか。」
売られる子供の生気のない瞳や怯える瞳を天の子は指をさします。
主は言いました。
「天界から手出しはしてはいけないのです。」
「なんでや!なんで助けたらアカンねや!」
「それは神だからです。神の力で助けても、
この下界で何万何千という奴隷達をお前は助け何か変わると言うのか。
この者たちを助けても、また違う者が同じ目に遭う、繰り返しなのです。
神の出来る事は導く事。
力を使うのは導く相手を守る影の役割。
本当に救いたいのであれば、人全てを変えねばならない。」
イエスは悲しみと怒りを言葉に詰めて話ました。
天の子は言われている事を飲み込めずも、主の感情は察知しました。
「・・・」
「心優しき妹よ。神には神の役目もある。
そして、神にも出来る事と出来ない事もある。
人間も自ら学ばなければいけない。
手を出したくても我慢なのです。父のように。」
天の子は涙を溢しました。
湖に落ちた1つの涙は、下界で大雨を降らし、
2つめの涙は下界で雷を起こしました。
主は天の子の腕を掴み立たせます。
「少し話を聞いたのですが、黄泉の国へ行ったそうですね。」
天の子は涙を拭い、主の問い掛けに頷きました。
「お前の考えを聞かせてくれませんか?」
主は天の子を連れて、天界にある自分の部屋に連れて行きました。
ここは天界にある主の部屋です。
天の子は地面に座ります。
主もまた地面に座りました。
「私も黄泉の国は素晴らしい国だと思います。」
「行ったことあるんか?」
「黄泉の国が出来た時に1度。今は国も大きくなっているのでしょうね。」
「おっきいで!蛇の国とかな、いっぱい国があるねん。」
天の子は興奮して黄泉の国を話ました。
「アハハハ、そうですか。釈迦如来が。」
「知ってるん?」
「ええ。見ていました。釈迦がまだ人の頃。
彼もまた私と似たところがありますからね。」
「パパはなんで黄泉の国の神の事も神と認めへんの?
やってることは一緒やのに。
主は笑みを溢しました。
「父も認めていますよ。だから黄泉の国も今存在するのです。
ただ、父以外の神達が問題なのも事実。
黄泉の国を認めさせたいのであれば、神々の考えを変えなさい。」
天の子は思いました。
父が一言言えば済む話なのにと。
「それは違います。父の言葉偉大ですが、神々も人と同じ。
表向きと心とは違うもの。
本当に解ってこそなのです。」
「とりあえず、皆を黄泉の国に連れて行けばええんや。」
天の子は名案だと思いました。
「どうでしょう?そうしたとしても、黄泉の国もまた、
誤解をしている。入れてもらえないんじゃないですか?」
「ほんなら、どないすればええん?」
悩む天の子に主は提案しました。
「まず黄泉の国の住人に話をしてみてはどうでしょう?」
主の考えはこうです。
黄泉の国に受け入れる体制を取ってもらってから、
天界の神々を連れて黄泉の国に行くことを目指す。
その為には、まず黄泉の国の誤解を解かねばならない。
「妹よ。私も協力しましょう。天界の神々を集め話をしてみます。
お前は黄泉の国に行きなさい。」
天の子は嬉しくて堪りません。
立ち上がり、早速行ってくると黄泉の国に向かいました。
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