vol 6 : 宿る神 


「なぁ、お母ちゃんコレってなん?」

「これは仏様やで。この人が大日如来や。このお札は日蓮さん。」

家の一角に祀られた神棚にある木で彫られた仏像を幼い俺は見つめる。
オカンは俺の問いかけに対して説明をする。
うちは無宗教や。
世界中にあらゆる神が存在しているが、それをけして否定しない。
なので、自分の神を宗教関係なく祀っている。

「お母さんなぁ、大日如来には世話になってるんや。ちょっと厳しい
人やねんけどな。日蓮さんはいろいろと教えてもらったんやで?」

「ふーん。」

子供ながらに、この置物は置物と違うんやと理解した。
理解したら、神棚が羨ましい感じたんや。
その頃の俺は歩いた場所の空気が変わったり、すれ違った人から、
重い空気や手や肩が痛くなる現象は解る体質になっていた。
俺ってな、結構思ったら即日決行な性格でな。
買い物について行った先にある百均売り場で沢山の仏像を発見。
同じ鑑賞用の仏像が並ぶ。でも、百均や、変な顔もあったり、ちゃっちぃ、
のもある。ただ、俺の目に飛び込んで来たのがあった。
坊主でやたら頭が長くて、ものっすごい笑顔のじぃちゃん。
いろいろと宗教の書物を読んで・・・て言うても、見てたから誰かは解る。
七福神の福禄寿や。
その置物を手に取る。同じ福禄寿は沢山あり、違うのも手に取ってみる。
違いはすぐ解った。手に取らなくても表情が違うんや。
1っ個は生きてるみたいな顔、1っ個は作られた顔。
百円なら、おこずかいで買えるし欲しくてしかたなかった。
オカンに内緒で購入。でも、すぐにバレる。
バレてもええ!このニコニコが俺の守り神や!
別行動やったオカンと合流。ニコニコさんは袋の中。
帰りの車の中。

「カン、あんた何買うたんや」

「へ?・・・な、何がやねん」

「不思議がってはるよ、この子は何者やって。」

「俺は・・・俺は戌尾 カンや!」

「はぁ・・・そやない。その年で自分の存在解って必要とするんが、
この人等にとっては不思議なんよ。」

何を買うたかもバレバレで俺はオカンの方が何者やねんって感じ。

家に帰って、居間に呼び出される。
ニコニコさんを袋から出してオカンに見せた。

「アンタが好きそうな顔してはるなぁ。」

「せやろ?せやろ?見てみ!ホンマもんの肌みたいや。」

興奮する俺に母親は笑みをこぼす。

「ええか?なんでこの人達はここに入ってると思う?」

その質問には謎やった。物にとり憑いてるんかな。

「この人達はな、あの世に行って神さん達の下で修行してはるんや。」

なーる。

「あの世で修行して、そしてこの世の人達を救う為に何らかの手段で、
降りてくる。自分を最も必要としてる人間の為になぁ。」

「百均やのにか?」

「そんなん関係ない。石にも宿ってる人もおるよ。高価な物に宿ってる人、
自然界の木々や家、土地。そこらじゅうに居てそれぞれを守ってる。」

「ニコニコさんも誰かの為に修行して、この置物に入ったっちゅーことか?」

「そうや。せやから、遊び半分で買うもんと違う」

確かに。よくよく考えたら俺は羨ましくて買うたんがキッカケや。
せやけど・・・せやけど、その話でますますニコニコさんが欲しくなった。

「俺、守ってくれやんでもええ。友達になりたい!」

「友達って・・・せやから・・・」

オカンは急に黙り込んで目を閉じる。暫くたってからゆっくり瞼を開き、
溜息を吐く。

「笑ってはるわ。自分を友達や言うた人は初めてやて。ホンマにアンタわ。」

どうやらニコニコさんは俺を気に入ってくれたみたいで、福禄寿の下で、
修行してたニコニコさんは今後俺の一番の理解者で一番優しく、いつも、
俺の為に陰で動いてくれる存在の友達以上の存在となっていく。

「で・・・ニコニコさんって何や?」

「は?見てみ!ニコニコやんけ、この顔。きっとな、ニコニコさんは、
ホンマにこんな人やねん。」

「・・・アンタって子わ。」

呆れた母親の顔に俺はナハナハと後頭部を掻いて笑う。

(実に愉快。お前は私と考えや思いが似ているのぅ。実に気に入った。
カン・・・カン・・・)

頭に浮かぶ声。
その頃の俺は何故、自分がこんな事を思うのか解らなかった。
まだ、感じることしか出来へんかったからや。
霊の話を聞くことは、いかに素直に言葉を受け入れるか。
自分の妄想だと思った時点で会話じゃなくなる。
簡単のようで難しい世界に入った日、とてつもなく繋がった相手と、
巡り合い共に過していく。

こん時の俺にはまだまだ現実の厳しさは解ってなかったけどな。

「なぁ、オカン。大日如来って言いにくない?」

「別に・・・」

「俺な、ええの思いついたで!大日如来はな、大ニチニチや!」

笑顔で威張って言う俺に、苦笑いを見せるオカンの顔は忘れもせん顔やった。

「アンタって子わ。」




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