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vol 2 : 午後
昼休みの終わりチャイムが鳴ろうとしている。
慌てて教室に戻り、コソコソとみんなに気づかれないように、
鞄を持って教室を後にする。
織田家は閑静な高級住宅街にある1件の純和風家屋や。
学校からチャリで40分程。
織田家が恋しくてひたすらペダルを漕ぐ。
織田家に着いた頃には結構な息切れや。
俺が織田家に到着した頃、玄関前で千代さんが水撒きをしている。
「あら、カンちゃん」
壁際に自転車を留める俺は名前を呼ばれてビクッと肩を跳ねさせ、
「ど、ども~」
後頭部に手を当ててアハアハと笑う気色悪い俺。
「帰って来たんね?お帰りなさい」
そうなんや。千代さんは何でかいつも早退して我が家の様に、
織田家に来る俺を快く迎えてくれる。
「マツキチは?」
「お父さん?お父さんなら庭にいますよ。」
笑顔で答える千代さんに、軽く会釈して中に入る。
玄関に靴を脱ぎ、長い廊下を歩くと日本庭園を醸し出す庭が見えて、
おったおった。おーおー、やってるやってる。
庭に出る草履をそっと履いて、背後に忍び寄ると相手の耳元でご挨拶。
「まーつきち!」
「ぬぉあ!」
少し背を曲げて真剣に盆栽の枝をハサミで切っていた松吉は、
一気に背を立て細い目を見開き驚き声を上げる。
ついでに・・・。
「あぁぁぁぁぁ~!」
ヒョコッと松吉の手元を見ると切る予定ではなかった枝を切ったらしく、
肩を下げてしょんぼりし、
「カン~・・・」
泣きそうな顔で俺に振り返る。
この顔、大樹そっくりや。
「なははは!やっちまったな~」
どこぞの漫才師の口調を真似しケタケタ笑う俺に、松吉は、
直ぐに普段の笑み顔に戻って察知する。
「今日は何があった?」
その問いかけは、けして強制的ではなく優しい問いかけ。
俺は縁側で寝ている花子に近付き、その場にしゃがむと、
花子の頭をワシワシ撫で、
「・・・屋上でな、死にかけたんや。」
何気に話し出す俺に松吉の視線を感じると、ハサミで切る音が鳴り。
「なぁ、カン。人にも理由があるように、きっとそのモノにも理由がある。
理由は時に、残酷なものなんじゃよ。理解など、簡単にはできんよ。」
盆栽を切る音が耳にやたら響く。
花子の顎や肉球を触りながら話を聞くも、いつも松吉の言葉は、
考えさせられる。まるで宿題のように。
「理由あるか知らん。理由言わへんし。頭痛いしそんな余裕ない。」
頭痛・吐き気・眩暈は半端なもんちゃう。
そんな中、相手の理由なんか考えてられんわ。
「聞いたか?」
「え?」
「なぜ頭痛がするのか。」
「・・・んーん」
俺は顔をしかめてこもった返事をした。
「まずは、そこからだな」
気付くと俺が花子にやってるみたいに、松吉の大きな手のひらが、
俺のプリチーな頭をワシワシ撫でる。
「そ、そんなこと言うたかて・・・」
「お前はそれを望んだんだろ?。関わると人も誰も同じだ」
その言葉。重く痛い。
「カンちゃーん?おとーさぁーん?おやつにしましょう?」
部屋の奥から千代さんの声がする。
俺は立ち上がり松吉と目が合い・・・
「はぁ~い」
二人で同時に返事をして笑みがこぼれ、
「カン、腰痛が酷くてなぁ~。またアレやってくれんか?」
「ええよ。任せとき」
俺はガッツポーズをして見せ、下で花子が大きく欠伸をする。
千代さんのおやつ・・・今日は何やろか。
「今日はプリンかいな。朝からカンのおやつ作ってたから。」
俺の考えは織田家には筒抜けか。
「はよーおいでー?」
千代さんの優しい声が再び奥からこだまする。
「はぁーいー!松吉いこ」
松吉の手を掴み急ぐように台所に向かい、テーブルに並ぶ、
プルルンとし上には白い生クリーム、下にはスポンジ。
まるでケーキのようなプリンに俺と松吉は目をキラキラさせ、
「うまそー!」
と言いながら椅子を引いて座ると手を合わせる俺と松吉。
「いっただっきま」
「二人とも、手、洗って来なさい」
「・・・」
「・・・はい」
目が点になる俺に、しゅんとしながら弱弱しく返事をする松吉。
二人で手を洗いに洗面所に向かい、その後のプリンは格別に美味かった。
これが午後の話。
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