vol 9 : 休日 


日曜日。相変わらず昼まで寝ようとうつ伏せで膝を曲げて丸くなって、
布団の中で涎を垂らして寝てる俺。
オカン曰く、カエル寝と呼ばれるスタイル。

携帯が鳴る。
誰や・・・。時刻は10時。まだ10時やん。
顔をしかめながら携帯に出る。

「こちらは留守番サービスです。おかけになった電話は、
現在電波の届かない所か電源が入っていないため、お繋ぎできません」

「カン!あのさ、」

大樹や。

「・・・こちらは留守番電話サービスです。おかけになった電話は」

「今から映画行こうよ!。ほら、カンが見たがってた映画。」

コイツ・・・自己中や・・・。

「あのなぁ!留守電や言うとるやろっ!」

逆ギレで言うも・・・

「行こうよ~。ね?ね?」

まったくもってテンションの変わらない相手に完敗。

「俺、金ない。」

「いつもお金出さないじゃないか。迎えに行くから用意しときなよ?」

「・・・わかった。」

大樹には弱い俺。なんでやねん。
ちゅーか、男の俺誘わんと女誘えっちゅーの。
すっかり目が覚めて起き上がり準備する。
20分程して、下からオカンに呼ばれ大樹が迎えに来た。

大樹の車に乗り込み映画館へ。
本日、頭痛なし。吐き気なし。久々に体調良し。

「俺が見たい映画って、エンジェルの輝きかいな?」

「うん。カン見たいって言ってただろ。」

エンジェルの輝き。死後の世界の話。
映画館に到着し、大樹がチケットを買いに行く間、
大樹に金を貰って売店に並ぶ。

「ポップコーン、デカいの1つとコーラー、M2つ。」

売店で一番デカいポップコーンとジュースを買い、

「カン、俺ジュース持つね。」

ご機嫌の大樹と共に室内に入り指定席に座る。
ポップコーンの箱を持ち、パクパクと食べる俺に大樹は呆れた顔をする。

「カン、まだ映画始ってないのに、もう食べて。」

「・・・えぇやん、別に。」

すると、近くに座っている女の二人連れがヒソヒソと話をする。

「やだ、彼ちょーかっこいー。」

大樹を見て言うてる。大樹め・・・モテやがって。

「ほーんと。イケメン。でも、彼女付きじゃね。」

彼女?大樹と違うんか?

「でも、あのポップコーン一番大きいやつだよ。」

「すごい彼女ね。クスクス」

この視線、ポップコーンのデカいやつ・・・まさか、俺かよ!

「カン、ホラホラ。膝にこぼしてるよ。」

微笑みながら俺の膝のポップコーンを拾って食べる。

「キャー」

女がそんな大樹を見て黄色い悲鳴をあげる。

室内が暗くなった。

「カン、始まったよ。」

映画が始まる。
映画の内容は、主人公は妻と2人の子供がいた。
妻は画家で精神面に問題があり、自殺未遂も何度かで精神病院に。
でも、主人公は支え続け、病院も退院して幸せな日々を送る。
そして二人の子供達は交通事故で死んでしまう。
主人公も、その後、事故に巻き込まれる。そして死んでしまった。
残された妻は再び精神を病み、自殺。
主人公が行った先のあの世は、いわゆる天国だ。
暫く天国を満喫しているも、死んだ子供たちに会いに行きたくなり、
同じ天国にいる子供達に会いに行く。
すると子供たちから妻が自殺して地獄に居ることを知る。
そして主人公は妻を救いに地獄に行くんや。
妻を助けた後は、二人でまた生を受けて出会い、共に生きたいと、
この世に赤ん坊として生まれる。
内容はこんな映画。
映画が終わると、隣から鼻をすする音が聞こえる。
隣の大樹を見ると・・・号泣中。

「・・・」

感動は解るけど・・・そない泣くなよ・・・大樹。
苦笑しながら一人でポップコーンをたいらげた為、満腹状態の腹を擦る。

「カン、いい映画だったね。俺、すごく感動しちゃったよ。」

涙をハンカチで拭きながら笑顔で話かける大樹に俺はキュンとか思う。
アホや。俺。

「なぁ、大樹。」

「ん?」

「夕飯はステーキ食べたい。」

照れ隠し。

「うん。ステーキ食べようか。」

俺に優しい大樹。いつも思う。なんでやろ。
大樹は俺を心配し、俺は大樹には弱い。
この意味が解るのは、まだ少し先になるみたい。

今週の俺の休日の話。



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