vol 20 : ちから



昨日、俺は生き霊にとり憑かれた。
その時に現れた大樹は俺を助ける為に、体から蛇を出して霊を襲わせた。
大樹の奴は霊と会話は出来へんはず。
教えたのはシロ。
どうやって?
俺は気になったのと、なんかやり方に納得出来ん気持ちが胸を締め付ける。
放課後に織田家に行って、大樹の帰りを待った。
夕飯食いながら。

「カン、お前の好きなカンパチだ。もっと食え。」

千代さんは俺が来たさかいに、
慌てて近所の魚屋に買いに行ってくれたらしい。

「なぁ、マツキチ。最近大樹に変わったとこない?」

松吉は俺の問いかけに笑顔を向ける。

「そういや、帰ってから部屋にこもって夜中まで何かしてるみたいだな。」

「なんかって・・・何?」

「それは解らん。イチイチ干渉せんからの。」

「そっか。」

俺は食欲ない。

「カンちゃん、おかわりは?」

俺は千代さんに眉尻下げて言う。

「うん・・・おかわり。」

俺の元気の無さに松吉は敏感や。

「あいつはお前の事以外は無関心だからな。
まぁ、ワシは心配しとらん。カンがおるからな。」

松吉はいっつも詳しく聞こうとはせん。
俺が言う話を黙って聞いて、深い言葉を言うてくれる。
大樹は松吉には何も話してへんみたいや。

「ただいま。」

大樹が帰って来た。

「おかえりなさい。ご飯?お風呂?」

あぁ、千代さんはホンマに日本のお母さんや。

「食欲ないんだ。部屋におにぎり持って来てくれないかな。」

俺はおかわりしたご飯をガツガツと口に詰め込み席を立ち、
玄関に向かった。

「ひゃんとめひくへよ。」

ちゃんと飯食えよ。
って言うたつもりやけど、口ん中がいっぱいで。

「カン!来てたの?」

目を丸くしながらも嬉しそうに言い、俺のパンパンな頬を見て吹き出し、

「アハハハ!ハムスターみたい。」

失礼な。

「大樹、おにぎりでいいのね?」

「うん。ごめん、母さん。」

千代さんは俺にも、もうご飯はいいのかと聞き奥に入って行った。

「カン、来て。」

俺は大樹と一緒に2階の部屋に向かい部屋の中に入る。
この前の蛇の軍団はいない。
そういうたらシロも。

「この時間にいるの、最近じゃ珍しいね。何かあったの?」

スーツの上着を脱ぎながら問いかける。
俺はやっとご飯を飲み込み、大樹のベッドに座った。

「なぁ、お前・・・シロの声聞こえるん?」

「いいや?どうして?」

「今日、シロは?おらんやん。」

「シロ、用事があるんだって。」

「聞こえへんのに何で解るん。」

俺の問いかけに大樹はデスクに近付き、ひらがな表を俺に見せた。

「俺がね、話すとシロが表の文字を指しに行くんだ。」

なーる。

「で、どうやって体から無数の蛇出したん?」

大樹はデスクに表を置いて椅子に座った。

「カンが霊で困ってる時に何か霊を離す方法はないか聞いたんだ。
シロは部屋にいる蛇達を使えって。それで、蛇の国の話や、
俺の事、カンの事を話した。」

「そんなんで聞いたんか?あいつら。」

「ううん。時間かかったよ。シロも説明してくれてたみたい。
彼等は自分達は醜い蛇で人間からも嫌われている存在だと思っていて、
大神の話や蛇の国の話をしたら興味を示してくれたんだ。
で、俺は大神だって言ったら力を貸してくれるって約束してくれた。」

大樹は表情を強張らせて話をする。

「でも・・・蛇達に悪い事をしたよね。あんな事させちゃって。
本当に俺は情けない。」

大樹はあの時の俺の言葉で深く落ち込んでる。

「なぁ、大樹。大事な事教わってないんやし、しゃーないよ。
仲間にした蛇も、何も学んでない奴らやろ?
そんなん、お前に行け言われたら襲いに行くしか思わんやろ。」

俺の言葉に大樹は顔をクシャリと顰め、

「うん・・・彼等に謝らなきゃ。」

俺は大樹に言うた。

「謝らんでもええ。あいつらを大神の元に行かせて、
修行させるんや。」

「大神の・・・修行?」

「そうや。修行させて、助ける意味をちゃんと学んでもらって、
大樹が必要としてる時に来て力を貸してもらう。
んで、蛇が大樹を必要とする時もあるやろ?
お前はその時の為に、ちゃんと判断出来るように勉強する。
どない?」

俺は笑顔を大樹に向けた。
大樹は少し間があいてから笑顔を俺に向け、

「そうだね、カン。俺もカンやシロや蛇達の力になりたい。」

「うん。せやけど、ちからっちゅーのは何か勉強せなな。」

俺は何故か口からポンポンと俺も勉強していない、
知らないはずの言葉が出る。

「力には、相手を傷つける力もあれば、相手を救う力もある。
癒す力もあるし、諭す力もある。」

「うん。昨日の俺のやった事は傷つける方?」

「襲いかかってたからなぁ。せやけど、それが必要な時もある思うで?
なんぼ話しても相手が聞く耳もたんと襲いかかってきたら、
こっちも自分守らなアカンからなぁ。」

大樹はそうかと真剣に聞いて頷く。

「大樹の場合は聞こえへんから判断が難しいかもしれん。
でも、聞こえる俺すらも聞いても聞いても答えてくれんパターンが多い。
でも、多分もっと経験せなアカンかも。
俺より大樹はまだ経験少ないし、経験して解る事は結構あるから。」

俺は大樹に再び笑顔を向けた。

「そうだね。もっと経験して、カンの足手纏いにならないようにしなきゃ。」

思い詰めた顔をする大樹に、俺は左右に首を振り、

「なに言うとんねん。足手纏いどころか、支えになってくれてるやん。
織田家は俺の大事な家族や。
松吉も千代さんも違うとこで支えになってくれとる。」

そう話す俺に大樹は真直ぐな視線を向け、

「俺も・・・俺も父さん達と同じなの?
カンにとって、俺は父さん達と同じ存在なの?」

その問い掛けと、大樹の顔に言葉を詰まらせた。
それぞれの存在に、それぞれの意味がある。
それをどう説明すればいいのか。
大樹に対して俺の気持ちは?

「な、なぁ、大樹!シロの奴、へこんでたらしいで。」

話をすり替える俺は卑怯ですか?

「え、あぁ。だって、どアホって言われてたもんね。カンに。」

「あん時はつい。カチンときたんよ。」

「アハハ。でもシロあの後ずっと丸まって寝てたんだ。
心配になって抱いてやったけど。
どアホなんて言われたことなかったんだろうね。」

シロに言い過ぎたかなぁ。
頬をポリポリ掻き少し後悔した。
言葉って時に励ますし、時に誤解呼ぶし、時に傷つける。
選んで話せなアカン時もある。
その判断は感情に左右される時もあるんや。

「俺も・・・大人げなかったな・・・。」

その言葉に大樹は目を丸くし、

「ちょ・・・カン。君はまだ16だよ。大人は20から。」

「あ!そっか。ほんなら今回の事はギリ?」

「ぷっ!ギリって何?」

「ギリは・・・ギリギリセーフ。」

「アハハハハ!カン変だよ、その文法。」

「そうか?・・・あはははは。」

「アハハハハ。」

俺と大樹は二人で笑いだした。

腹抱えて笑ったんや。

この時、俺も大樹も別な意味で安心したんやと思う。
解らんと、良かれと思ってやった事が、間違いで、
でもその間違いは人それぞれで、何が正しいかは自分で、
判断せなアカンねんけど、それはとてつもなく難しい事で。
俺らが今、壁にぶちあたってるんは今回の対処の事。

俺と大樹はこれから、もっと深い世界に踏み込もうとしてる。
それに対して、いろんな更なる出来事が待ち受けてることも考えんと。



ちから。
それは持つ者で左右される。
その力で救うことも出来るし、傷つけることもできる。
力とは、素晴らしくもあり、恐ろしくもあると俺は思った。

そして安易に使ってはいけないことも。










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