バスの中へ、高校生らしい男子の一団が乗込んできた。手に手に野球のバットと、バッグを持っている。練習試合にでもゆくのだろうか。真黒に日やけした顔。坊主頭。
楽しそうに談笑しているが、決して不作法ではない。むしろ、くっきりと白い歯がさわやかにさえ感じられる。私はテレビで、新学期早々実力テストを受けているこどもたちの、暗い緊張した顔をみてきたばかりだったので、この印象は新鮮だった。この少年たちは、いわゆる「出来る子」ではないかも知れない。だが、あふれる健康と、何よりも人の和を信じて疑わぬ強いまなざし、それがある。
適宜のスポーツは、精神に健康を与えるばかりでなく、今の世に欠けがちな、協調と克己の心を養ってくれる。小さな子に、音楽や絵のたのしみを与えるのもいいが、そうしたことに向かない男の子には、スポーツの楽しみを与えてみてはどうだろう。もちろん、これにはある程度の組織がいる。ある雑誌に、おけいこごとの塾は多いのに、スポーツの塾がないのはどうしたことか、という一文があって、男の子を持つ私の関心をかきたてたが、スポーツなんか出来たって――というような考えが、案外一般にあるのかも知れない。
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