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vol 246:今の姿
「今日は、パパもシロも昼寝か。」
我は寝ていた。
寝ていると言っても、それは肉体だけ。
カンと兄様は仕事。
弥勒は家で書物を読みあさっている。
天界の父上も眠っているらしい。
我は美輪の山、
自分の国に良く顔を出す。
その理由は、
(白蛇神様!。)
「うむ。どうだ?。」
(はい!人の姿になって滝打ちが出来るようになりました!。)
「そうか。頑張ったではないか。」
小さな子どもの蛇の頭に触れる。
自然に笑み、自然に手を伸ばし、
自然に頭を撫でたくなるのだ。
(白蛇神様、おかえりなさい。)
「うむ。山の様子はどうだ。」
(はい。皆、修業に励んでおります。)
若い人形になった蛇に山の状態を聞く。
そう。
我は今、修業蛇の行く末を見守っているのだ。
(白蛇神様・・・。)
「うむ。どうした?。」
皆が皆、スムーズに成しとげられるわけもなく、
皆が皆、どこかで必ず大いに躓く。
そんな躓いた蛇達は我を頼って話しをしてくる。
我は山道の木の根に腰掛け、
その者も座らせて話しを聞く。
(私は、いくらこの山を登ったり下ったりしても、
何も悟る事が出来ません。
やはり、私は蛇のままなのでしょうか。)
「お前は、登ったり下ったりする事が苦難か?。」
(・・・。)
「正直に答えて良い。」
(はい。とても辛く思います。)
「それは何故だ。」
(・・・この道は人間にも通じる道。
人間の2本の足で登るかのような段差。
我々、蛇の体では登ることは辛く、
下ることは恐怖そのもの。)
「それでは、その登る下るをお前は意味を知らねばならぬ。
ここで諦めたいのであれば、諦めるが良い。
誰も止めぬ。
だが、我はそこに躓いたお前なら、
きっと、意味を理解し、この蛇の国の蛇神の一人となって、
皆の力になれると感じている。」
(白蛇神様・・・。)
「良いのだ。悩む事は悟りの道にいる証。
悩まぬ者は、悟りとは無縁の証。」
(はい!私はもう一度、登って下ります!
ありがとうございました!。)
蛇は礼を言って再び山を登りはじめた。
我はその蛇の後ろ姿を見つめる。
心から、頑張って欲しいと望むのだ。
我の力不足を目の当たりにした今、
一匹でも多くの蛇たちに力をつけてもらわねば。
「シロよ。」
全く気付かなかった。
隣に天界の父上が腰掛けている。
「父上・・・。」
「お前は立派だ。
あんなに王子と言うプライドを強く持っていたお前が、
この様な姿になるとは。」
「姿?。」
「ハハハ!自分で気付いておらぬのか。」
父上は我の足元に大きな器を出した。
そこには澄んだ水が張られている。
「覗いてみよ。」
我は器を覗き込む。
水面には我が映っている。
「これが・・・我か?。」
水面に映る我は、白くても、
まるで純白。肌からは真っ白な光が出ている。
「それがお前の今の姿だ。
良くぞ、ここまで光を磨いた。」
我は、自分の姿など、気にもしていなかった。
「父上よ・・・何故ここに。」
「毎日、お前が何をしているのか見てみたくなったのだ。
こんな素晴らしい事をしていたとは。
私はお前を誇りに思う。」
我は嬉しかった。
言われたことのない言葉を、
我らの父から聞けた事に。
「今日のお昼ごはんは、
そうめんと言うものだと弥勒が言っていた。
一緒に食さぬか?
肉体はまだ子ども。
肉体も力をつけねば。」
「はい。」
我は満面の笑みを見せた。
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