vol 245:サタンとの電話






僕の声は、彼女の耳に届いた。

窓から見る景色は、呻き声と腐ったにおい。

こんな闇の世界を僕はどうして望んだんだろう。

サタンは言った。

地獄を好きなようにつかうといいと。

だけど、誰ひとり僕の言うことなんて聞かない。

それ以前にここの部屋から出られない。








サタン・・・サタン聞こえてるんやろ。

携帯が鳴り響く。

知らない番号。

「もしもし。」

『やぁ、カン。なんの用だい?。』

「サタンか。」

『君から僕を呼ぶなんて珍しい事もあるもんだねぇ。』

「お前、知ってるんやろ。
イエスが俺にコンタクト取って来た事。」

『コンタクト?助けを求めた。
その言い方の方が正しくないかい?。』

相変わらずの砕けた口調。

「アイツ、お前になんかされたんか。」

『ぷ!アハハハハハハ!
まさか。別に君に助けを求めるなとは契約してないからねぇ。
悪魔に踊らされてるみたいだな、天の子。』

「・・・。」

『ところで、君の家に居るオッサン?ジイサン?
新しい神がまた仲間に加わったのかい?。』

ばれてない。

「あぁ。そうや。
でも、彼はお前のおかげで弱った俺達の心の修復に来ただけや。
せやけど、良く知ってんな。」

『カン?今じゃ、神々が人間として降りるように、
闇の者もそこらじゅうに、人間としている。
それに気付かないようじゃ、君もまだまだ同じ土俵には立ってないね。』

「お前と違って、俺は純粋やから。」

俺も砕けた口調になる。

『君は純粋というよりも、
愚かその者。
父もそうだが、君も後を追っている。』

「お前の父じゃない。」

『クフフ。悪魔も生き物。
全て父の子。
僕は君の兄でもある。』

「俺の兄は主のみ。
お前は兄やないよ。」

『主よりも前に生まれたのが僕。
みんな兄弟なんだ。』

「なぁ、サタン。
お前の国で、お前に反発する者が出て来てるのも知ってるよなぁ?。」

『もちろん。
僕の国はそういう奴等の国だからねぇ。』

「どないするつもりや。」

『どうもこうも。
求める事は同じ。好きにさせるさ。』

「俺の仕事を邪魔する悪魔がいる。」

『神々の最後の希望の書だね。』

「お前もその本が怖いんか?。」

『全然。その書を読んだ者全てが、
全てを理解出来ない事なんて100も承知だよ。
それに、それを読んで身につくのは歴史。
神々の想い、霊の存在。
僕の敵になるおおいな力を持つ者が育つわけでもない。
ただの書でしかない。
そんな物に、なぜ恐れなければいけないんだい?。』

「せやけど、悪魔は恐れてる。」

『僕達の国の住人は、殆どが弱き者。
数で強いと思う者。
神々が力を入れてる物はなんだって怖いのさ。
でも、そんな下級の悪魔のいたずらごときで、
世に出ない物なら、なんの役目も力もないという事。
カン、君がギブアップするなら、
僕の見込み違いだったかなぁ。
君は僕と戦う神の子。
自らそれを選び、世に降りた子。』

「俺はお前と戦う為に降りたんやない。
命を救う為に降りたんや。」

『君の抗議で、神々の審判も和らいだ。
でも、着々と滅びに向かっている。
結局、僕たちは何もしちゃいない。
ほっといても、人間は期待通りの働きをしてくれるからねぇ。
ただ僕は、天界の神、僕の父に後悔を与えたいだけ。
・・・あぁ、ごめん。
そろそろ切らないと。
今から、講演があるんだ。
カン、僕は君を待ってるよ。』

電話は切れた。

少し安心した。

イエスが何もされていない事に。

サタンは嘘をつかない。

言葉は巧みやけど、そこに嘘はない。

とにかく、俺はやるべき事をする。

何をどうしてええんかわからんけど、

ただ、やるべき事を時が来るまで。







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