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vol 243:コンタクト
少し俺達の中でも平穏が続く。
パパが降りて来て、人間の世界の自然を悲しみつつも、
楽しげにしているのを見てるせいか。
普通にコンクリートを歩く蟻に気付けば、
どこに行くか観察したり、
鳥や猫、犬、虫としゃがみ込んで会話をしてたり。
あー、こんな事もあった。
たくさんの猫を引きつれて外から帰って来たことも。
理由は、話しの途中で雨が降って来たからやって。
あん時は困った。
アカン言うても、ひたすらなんで?って。
今、この猫の放浪の旅の話しの途中なのにって。
丁度、俺は家に居た。
弥勒も大樹もパパも家に居て、
それぞれ何かしらやってる。
パパとシロはTVを見ながらお菓子。
弥勒は書物を読んでる。
大樹はネット。
俺はソファーで一人横になってた。
(助けて!。)
込み上げてくる不安と涙。
「・・・。」
(お願い!聞こえてるんだろ!。)
(どうした?。)
心で会話する。
(僕は・・・。)
霊がこの場に居る気配はない。
でも、声が聞こえる。
(僕は、体を売ってしまった。)
(売ったって・・・なんや契約でもしたんか?。)
(うん・・・。)
契約って言うたら悪魔や。
(契約してたら後の祭りやなぁ。)
契約する弱い人間がアホなんや。
誰と契約したか聞く前は俺はこんな想いやった。
(僕は馬鹿だった。でも僕はここから出たい。)
(出たい?。)
契約をすれば、その内容が叶って暫くは自分でいられるはず。
(もう死んだんか?。)
(ちがう。地獄に閉じ込められてる。)
何かおかしい。
普通の悪魔との契約には思えない。
(僕はサタンと契約をした。)
「サタンとっ!!!!。」
俺は飛び起きた。
TVを見ていたパパとシロが同時に俺に振り向く。
俺は額に両手を触れさせて俯き、
「どういう事や。
お前・・・じゃあ、お前は・・・イエスか?。」
(うん。イエス・ブロッド。
お願い!助けて!。)
「ま、待て!地獄に居たままどうやって俺に、!。」
(時間がない。見つかってしまう。
やっと、アナタに僕の存在を伝えられた。
お願い、僕を助けて!。)
「助けてって・・・でも、契約、。」
それ以降、声は止んだ。
「おい!なぁ!おいって!。」
「カンよ、どうした。」
パパが俺の隣に来て座る。
心が共鳴してたからか涙が止まらない。
「サタンの・・・肉体の本人が来たんや。
いや、来てないんやけど・・・話してきた。」
シロは黙って話しを聞いてる。
「サタンと契約して、今地獄に閉じ込められてるって。」
何かを感じたんか、弥勒と大樹も部屋から出てきた。
「閉じ込められているのではない。
それは、元々彼が、彼自身が望んだこと。」
「イエスがか?。」
「そうだ。家族に不満を持ち、
世の中にも不満を持ち、そこでサタンと最終契約を結んだ。」
「せやけど、そんな人間ゴロゴロいるやん。」
「イエス・ブロッドは心から神に信仰を示す女と男の子。
そして、主の名を持ち、世にも親にも不満を抱いた子。
ルシファーからすれば、
これ程、自分の起こす事に抜擢する人間はいない。
悪魔に選ばれた子。」
「そっか・・・。」
大樹はパパとは逆の俺の横に座った。
「イエスは時間がない言うてた。
見つかったらって。
やっと俺に存在を伝えられたって。
助けてって・・・。」
弥勒は言う。
「自ら最終契約をした上で、
助けを求められても、全てサタンの物になってる今、
後悔してもどうにも出来ないんじゃないのか?
サタンが塵にならない限り永遠にサタンの物になる。」
契約してから、もう何年になるんか。
閉じ込められた檻の中で、イエスは変わったのか。
俺はこの想いを聞いて、
どうすればいいのか。
どう想えばいいのか。
解らない。
大樹はそっと俺の手を握った。
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