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vol 242:抱擁
今、天界の神と一緒に住んでいる。
今まででは有りえない事で。
神がこの地球に降りて来て、
人間に示した事は何度かあったが、
神が人間としてこの地球に居るなんて。
黄泉の国の神には聞けない事や、
黄泉の国の神では解らない事を、
神の中でも我々の星じゃ主とも言える天界の神に、
聞きたい事はたくさんある。
でも、なかなか聞けるもんでもない。
それだけの大きい存在の神なんだ。
「弥勒、行って来る。」
「あぁ。気をつけてな。」
カンが仕事に出かける。
大樹も一緒に行くみたいだ。
シロは肉体を離れ、黄泉の国に行っていて居ない。
「おい、弥勒。大丈夫か?。」
「え?。」
「パパと二人やぞ。」
「あぁ。でも、一緒に行くって言わなかったんだな。」
「そうなんや。絶対言うと思ってたのに。」
「まー、適当に過ごしてるよ。」
「ん。そんなら頼むわ。」
「おう。」
カンと大樹を見送って二人は行ってしまった。
「適当に・・・っつっても、。」
言ったものの、どう過ごすか。
朝食をとキッチンに立って、
トーストを焼く。
神はたまごは食べない。
雛になる命を絶たせた食べ物だからだ。
イチゴのジャムを塗って、
最近お気に入りのミルクティーをいれて。
「おはよう。弥勒よ。」
神が部屋から出てきた。
「おはようございます。朝食、今出来ました。」
俺は笑んで挨拶をし返し、
リビングに運んだ。
神はベランダの窓を開け外に出る。
「おはよう。おはよう。」
その光景を見ると、まさしく神だ。
鳥たちが群がり、電柱や手すりにたくさん。
今まで風も吹いてない暑い外は、
心地良い風が舞う。
鳥たちのさえずり。
「ほぉ。それはめでたい。
そうか・・・住む場所がか。」
暫くして神が中に戻って来た。
「鳥はなんか言ってました?。」
「スズメの子が無事に孵ったそうだ。
カラス達は住む場所がなくなって来たらしい。」
嬉しい報告もあれば、悩ます報告もある。
「ここに居ても、皆の声で悩まされますね。」
「そうでもない。上に居る時は、
心の声だったが、ここだと、我の声と子ども達の声、
会話が生まれるのは嬉しいものだ。」
俺がここに降りて来た時、
こんな気持ちにはならなかった。
やっぱり、神だ。
「弥勒よ、なんでも聞くがよい。」
「え?。」
「やっと二人になれたのだ。
待っておったんであろう?。」
まさか。
「もしかして、それを解っていたから、
カンについて行かなかったんですか?。」
神はやわく笑み、カップを持って食事をする。
「今までの私は愚かそのもの。
お前たちの事を神と認めず、
自分だけが神だと思っていた。
こんなにも、私が創った子どもたちの面倒を、
見て、支えてくれていたのに。」
「過去は過去ですよ。俺も、
黄泉の国の神も、貴方には感謝しています。
それに、今この機会がある事も過去があってなので、
俺は不謹慎かもしれないけど、
嬉しいです。」
「そうか・・・そうだな。
お前がカンの良き仲間であってくれて、
私も心強い。」
その言葉に俺は胸が詰まった。
「俺は・・・。
俺は、皆の為に力になれてるんでしょうか。
人となって、
恐れも憎しみも怒りも覚えました。
弱さも。
それが無いと、全てを理解出来ない事は解ってます。
しかし・・・、。」
恐れ、憎しみ、怒り、弱さに押しつぶされそうになる。
「お前の気持ちは良く解る。
だが、それはお前はあの世で生まれ育ったからだ。
私など、天界に居てもその感情を持っておった。」
「貴方が?。」
「そうだ。傲慢だからこそ、
神は私ひとりで良いと思っていた。」
「では、その怒りや憎しみは人間に対してですか?。」
「子ども達に思った事はない。
思うとすれば悲しみのみ。
恐れ、憎しみ、怒り、弱さは、
私に対してだ。」
「自分に・・・ですか。」
「お前もあるであろう?
自分の役目への想い、
自分の力の無さ、
先の不安。
どの様な神であろうと、人間であろうと、
心があれば皆同じなのだ。」
この言葉に安堵感が心を包む。
「弥勒、お前はそのままで良い。
何も自分を恥じる事はない。
私はお前を誇りに思う。
今のお前をだ。」
俺は涙が溢れた。
俯くしか出来ず、
今のこんな最悪な俺を神は認め、
このままで良いと言ってくれたんだ。
神は俺の隣に来ると頭から抱きしめた。
黄泉の国でされた事もない。
涙が止まらない。
「よしよし。苦悩は辛いであろう。
良くぞ、耐えている。
お前を見ていると、主を思い出す。」
「・・・主、を?。」
「人間で降り、役目を理解した後、
毎晩、私に向かって泣いて脅えていた。
自分に出来るのかと。
脅えては来る悪魔共に必死に耐え、
人間は心通じる者はわずか。
通じても裏切りも知っている悲しみ。
良く、私に泣いていた。」
「俺!・・・俺、頑張ります!。」
俺は神の背中に触れて抱きしめ返した。
「自分の器を広げる事は、
自分の水の量を把握し、
こぼれそうになれば、頑張るのをやめること。
さすれば水はこぼれる事はしない。
こぼれた水は勿体無いであろう?」
「はい・・・。」
「弥勒よ、きっとお前の気持ちは、
私よりも主の方がとても理解出来るであろう。
何かつまづき、恐れた時は主を呼ぶとよい。
良き、友になれるであろう。」
一日中、神と話しをしていた。
「ただいまぁ~。」
「アハハハ!あ、帰って来た。」
「なんや、えらい楽しそうに。」
「おかえり!我が子よ!。」
神は帰って来たカンに気付くと立ち上がって、
出迎え抱擁する。
「大樹、おかえり!。」
そして大樹にも。
「た、ただいま!。」
大樹は固まってテンパっている。
カンが俺の側に来て、耳元で、
「おい、どうやった?困らんかったか?。」
「あぁ。すごく、俺のためになった一日だった。」
「弥勒のため?。」
「良い話しがたくさん聞けたよ。
俺も頑張らなくちゃな!。」
俺はカンを抱きしめた。
「ちょ!弥勒!。」
カンを抱きしめる俺を見て大樹が目を見開いた。
「弥勒・・・お前どないしてん。」
カンは呆れた顔をする。
「ハハ、たまにはいいじゃねーか。
パパに教わったんだ。
大樹、妬くなよ。
お前の抱擁とは想いも違う。」
大樹は神に抱かれたまま、
「同じ想いだったら困るよ!。」
俺に向かって叫んだ。
「じゃー・・・大樹にするか!。」
「え!。」
「ハハハハ!では私は代わるとするか!。」
「え!え!いいよ!ちょ、弥勒やめろ!。」
神が離れると俺は大樹に駆け寄り強く抱きしめた。
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