vol 240:パパ






「ぱ、パパ!つか、なんやそのオッサンジイサン!。」

「娘よ!。」

パパは中に入って俺を抱きしめた。

大樹は壁に背中と両手を大の字にくっつけて、

弥勒とシロは目を丸くしとる。

「くっさ!。」

服や髪から漂う異臭に俺は失神しそうになって、

とにかく風呂に入らせた。

「どうしよ!弥勒!シロ!
どうしよ!。」

「お、落ちつけ大樹。」

「落ちつけるかよ!
お父様が来たんだぞ!。」

大樹のこの恋人の父親が来たというテンパリ。

「兄様・・・着替えを用意した方が良いのではないか?。」

「あーーー!そうだ!
弥勒の服借りるから!。」

着替えを用意するのもドタバタとする大樹に、

3人で呆れつつ、

「俺も緊張してきた・・・。」

弥勒もソワソワしとる。

「なんでお前も緊張すんねん。」

「バッカ!お前、天界の神だぞ?
本人登場だぞ?予想もしてねーだろ!。」

シロはコクコク頷く。

「天界の神の風貌すらないやんけ。
オッサンジイサンやのに。」

「カンよ、お前は緊張する人物はいないのか?。」

「あ?・・・おらん。」

シロと弥勒は顔を見合わせて大きな溜息を吐いた。

「いやぁ、風呂とは実に良きもの。」

パパが現れると弥勒とシロは正座をしだす。

パパは、長い髪を大樹にピシっと頭上に団子に結ってもらい、

弥勒のグレーのスウェットの上下姿。

長いサラサラになった髭を触りながらご機嫌で、

ソファーに座った。

「んで、その人間どないしたん?
体、借りとるんやろ。」

「神とは言え、
全ての人間に見える自分の姿でこの地上に降りることは出来ん。
サタンや闇の者に知れるわけにもいかん。
素性も知れぬ者の体を借りて、
気配を別の者にする方が良いのだ。」

結局、身内とかがおる死んだばっかの人間やと、

家族が居たり、葬儀やらで肉体を焼かれたり、

生き返ったとなれば、その人間として居なアカン。

ホームレスは身内とも縁を切っていたり、

どうも、パパが入った体の持ち主は、

身よりも居ない人間やったらしい。

弥勒やシロはひたすら無言。

「お、お父様!冷たいお茶です!。」

大樹がぎこちない笑顔でトレーに乗せたグラスを運んで来た。

「お茶とな。」

パパにとっては物珍しい物ばっか。

「おい、弥勒、シロ。
お前らなんも聞くことないんか?。」

ヒソヒソと弥勒とシロに問う。

弥勒なんか聞きたい事ばっかやろうに。

「あ、あの!・・・あの、天界の神。」

弥勒が声を出した。

「パパでよいぞ、弥勒菩薩よ。」

俺ら4人は固まった。

「ぱ、パパ・・・あの、。」

素直にパパと言う弥勒に俺は腹を押さえて、

後ろに上半身を捩じって笑いを堪える。

シロは俯いて肩を震わせて笑いを堪えてた。

「どうして、ここに。
神が地上に降りて来るなど、余程の事。」

パパは気にいったお茶のグラスを机に置いて、

「お前達を上で見ておれぬようになってな。
私の原因でサタンをあの様にしてしまい、
新しい人間という生き物を創造したが、
この様だ。
私の事でお前たちが苦しみ、それでも、
私の想いを貫こうとしてくれている。
お前たちの想いであっても、
同じ想い故、私の想いでもあるのだ。
今まではずっと天界で見て来たが、
もう、じっとはしておれぬ。
私もまた、自分が愛し創造した人間になり、
お前たちと共に苦しみを分かち合うべきだと考えた。」

弥勒は、ジワっと涙を浮かべ、

「俺は情けないです。
黄泉の国で何を今まで学んで来たんだろうと。」

「弥勒よ、心を学び、それは頭や心が理解している事。
それを行動となり、実際となれば、
今のお前の心境で正解なのだ。
辛かったろう?
すまない。」

パパが弥勒に頭を下げた。

天界の神は頑固で、黄泉の国の神を神と認めなかった神。

その神が、弥勒に頭を下げた。

弥勒も頭を下げ、

「俺・・・こそ・・・すみません。」

パパは、弥勒を強く抱きしめると、

弥勒は目を見開き、

「すまなかった、弥勒よ。」

「ぱ・・・ぱっ。」

この普通なら、普通に感動すべき場面。

俺とシロ、大樹は、

「ぷぅぅぅぅ!!!!。」

「あははははは!!!。」

「クックックック!!!。」

「あーっはっはっはっは!。」

大笑い。

「な、なんだよ!。」

弥勒は大笑いする俺らに顔を真っ赤にして叫ぶ。

「せやかて・・・、。」

「弥勒・・・パパって。」

「腹が・・・痛い。」

俺もシロも大樹も目に涙溜めて笑う。

パパはそれを見て、

「ハッハッハッハ!!!!。」

いきなり笑いだした。

4人でパパをキョトンと見、

「パパ、なんで笑ってるん。」

「いや・・・なにやら楽しそうだから。」

そんな子どものようなパパを初めて見て、

俺ら4人目を見合わせて、

「なんやそれ~。」

「あははははは。」

「ハッハッハッハ!。」

みんなで笑った。

胸が熱くなって、可笑しくて腹が痛くて、

笑いと喜びの涙を溢れさせて5人で笑った。











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