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vol 238:幼い頃の友人
ある日の午後、酷い頭痛がした。
姿は見えてる。
白髪で、肌は真っ赤な色。
霊にも見えない。
「誰?。」
声をかけるも無言で。
何も言わんからほっとく。
どう見ても女には間違いなくて、
姿が見えんようになったら俺の頭痛は酷くなって、
その女が俺の体に入り込んでるからや。
「なに?なんか用か?。」
頭痛に耐えきれなくなる度に問いかける。
何も答えもしない。
夜中も頭痛で眠れずに朝を迎えて、
辛抱しきれずに、ニコニコさんを呼んだ。
(どうしたカン。)
「ごめん、俺の中にいる人、誰かわからんねん。
頭痛で死にそうや。」
ニコニコさんはジッと俺を見つめる。
俺やなしに、俺の中の奴を見てるんや。
(これは・・・。)
「誰?。」
(お前の良く知ってる子だ。)
「俺の良く知ってる?。」
その時、浮かんだのは、黒髪のあの世の幼い友達。
まさか・・・容姿が違い過ぎる。
「阿修羅・・・?。」
ニコニコさんは頷いた。
「えぇ!ちょ、いや、でも!。
阿修羅やったら名乗るやろ。
なんで、名乗らんの?!。」
俺の体から赤い肌の白髪の女が抜け出ると、
悔しそうに、悲しそうに唇を噛みしめて涙を流す。
「あ、しゅら?。」
(天・・・ちゃん。)
「阿修羅!。阿修羅、お前どないしてん!。」
確かに俺らが出会った時は、阿修羅はまだ幼い女の子。
俺もガキやった。
俺が大人になってるっちゅーことは、
阿修羅も大人になってるのが当たり前や。
それでも・・・この容姿・・・。
「阿修羅?なんかあったん?。」
俺は今は生身の人間。
霊感ある人間でも、滅多に出来ない事を俺はする事が出来る。
それは、霊に触れられること。
阿修羅の手にそっと触れて優しく問いかける。
「ほら、言わなわからんやん。な?。」
阿修羅は俺の手を強く握り、大声で泣いた。
(天ちゃん、天ちゃん、。)
「ん?。」
俺は阿修羅を抱きしめて、ゆっくり閉ざした心を開こうとする。
昔もそうやった。
黄泉の国に閉じ込められてた阿修羅に会った時。
(私、天ちゃんの力になりたくて、
勉強してたの!頑張って、頑張って!。)
「うん。」
(でも、解らない事が多くて、だから!
だから・・・。)
ニコニコさんの表情が悲しみに変わる。
(でも、どこの国に行っても、入れてもらえない!
仏様に会わせてもらえない!。)
「それって、門前払いされるっちゅーことか?。」
(どこの国も、どこの国も。
そしたら、地獄の亡者が誘いに来るの。
お前は自分たちの仲間だって。
一緒に悪魔と人間を滅ぼそうって!。)
「まって!待ってや!なんで、黄泉の国の各国に入れて、。」
(・・・鬼の子。)
「え?。」
(お前は鬼の子だから・・・、
お前が来る場所じゃない。)
俺は目を見開いた。
「・・・な、に?。」
(私!私!、。)
(阿修羅よ・・・ほんに辛かったろうに。)
阿修羅の今の姿は、
心を壊された姿やった。
「ニコニコさん・・・あの世はどうなっとんねん。」
ニコニコさんは目を伏せた。
(修行僧達は、修業の身。
まだまだ、そこまでの、。)
「そんなんで片付けられん・・・。
阿修羅、阿弥陀の国にも行ったんか?。」
阿修羅は俺の胸に顔を埋めて頷いた。
「っ!。」
阿修羅は全ての国から排除されてた。
そんなこと絶対にあったらアカン阿弥陀の国にまでも。
(私・・・天ちゃんの力になれない。
闇の力を持つ、邪悪な私は天ちゃんの、。)
「邪悪な力であろうが、なんであろうが、
関係ない。お前は愛らしい俺の大事な阿修羅や。」
(天ちゃん・・・。)
怒りが込み上げる。
「阿修羅、ニコニコさん、行こ。」
(いやよ!行きたくない!。)
「アカン、行くんや。
堂々と行くんや。」
ニコニコさんは阿修羅に笑んで、そっと頭に触れる。
俺と阿修羅とニコニコさんで阿弥陀如来の国に。
(阿修羅!また来たか!
ここにはお前など入れぬと、!。)
「うっさい、黙れ。」
(天の子!待たれよ!
おい!門を閉めるのだ!。)
国に入ろうとすると門が閉められる。
(天ちゃん!。)
俺はまだ開いている隙間に体を入れて、
門を両手で支え、
「は、よぉ・・・入れ。」
ニコニコさんは阿修羅を連れて中へ。
俺も中に入った。
大勢の阿弥陀の弟子が群がり、
中へ入れさせまいとする。
俺はもう怒り爆発状態で、
「なんなんやこれ・・・。
お前ら!それで何を教わってんねんっ!。」
大声で叫んだ。
この声とこの俺の感情が阿弥陀本人に届かないわけがない。
群衆を割って阿弥陀が現れた。
(カンよ、どうしました。)
俺は阿弥陀の前に立って怒りをぶつけた。
「どうした?どうしたもこうしたもない!
なんなんや、コレ!。」
俺はジッと阿弥陀を睨みつけた。
阿弥陀は俺の目から心を読み取り、
その瞬間、悲痛な表情を露わにして、
俺の横を通り、阿修羅の前に立つと、深く頭を下げた。
群衆はヒソヒソと声をたてる。
(あ、阿弥陀様。)
(阿弥陀様が何故、頭を。)
(阿修羅よ、許しておくれ。
私の力不足故に、お前の心をこんなにも傷つけてしまった。)
阿修羅は眉尻下げて阿弥陀の前に両手を合わせて膝まづく。
ニコニコさんも目を伏せて両手を合わせた。
阿弥陀の言う言葉に群衆は顔をしかめて、
ヒソヒソと声をあげるのをやめない。
「阿弥陀・・・どないすんねん・・・。
一人でも俺らの力になって欲しいのに、
大慈悲のこの国の住人がこれじゃ・・・。」
阿弥陀は膝まづく阿修羅の合わせた手を、
両手で包み、
(カンよ・・・この国が一番難しい国なのです。
私も、悲しみは深い。)
俺は群衆に目を向けた。
みんな、ここで気付いたのか目を反らす。
「アンタら・・・どんだけこの国で学んでん。
この国で学んだ最大の宝を、
深く傷つけてから気付くんか?
違うやろ・・・。
ここまで傷つけんでもえぇやろ・・・。
阿修羅だけやない。
七福神の神も、
アンタらの尊敬する阿弥陀を一番・・・。」
群衆の中の、ほんの数名が、
泣きながら地面に額をつけて阿弥陀と阿修羅、
ニコニコさんに土下座をした。
たくさんいる中の数名。
(阿修羅、私を許してくれるか?。)
(阿弥陀様・・・。)
阿修羅も、地面に頭を深く下げた。
(頭をお上げなさい。
ニコニコさんも、迷惑をかけた。
すまない。)
ニコニコさんは笑み、顔を左右に振った。
阿弥陀の部屋に3人で向かって、
話しを始めた。
まだ、白髪に赤い肌の阿修羅。
傷は深い。
「阿修羅は、勉強したがってる。
きっと、大日や薬師とかの国でも、
ここと同じで、本人の耳に入ってないと思うねん。」
(阿修羅よ、お前はどの国で学びたい。)
阿修羅は俯いたまま黙ってる。
本人でも解らんねや。
「阿修羅は力は元々持った子や。
力を増幅させても、コントロール出来んかったら、
それこそ危ない力になってしまう。
迷いの中に居るのが阿修羅。
その迷いを克服するのは心。」
阿修羅は不安そうな顔を俺に向けた。
俺はそれに笑んで、
(そうか。それではどうだろう。
私の弟子、釈迦如来に預けると言うのは。)
「釈迦如来?。」
(それは良きお考え。
阿弥陀如来は、とても難しい最後の国。
甘い中に浸かり、
そこから本来を悟る国。
それを釈迦如来の国では、
もう少し厳しさを兼ね備え、
甘いと言う難しさの根本を教えるお方。)
阿弥陀はニコニコさんの言葉に頷いた。
(阿修羅、ワシも釈迦如来の国で学んだ一人だ。)
ニコニコさんは阿修羅に言った。
俺は、なんか嬉しくて、
「ニコニコさんは、超優しいもんなぁ~。」
歯を見せて笑み、
俺はニコニコさんが大好きや。
俺の笑みと感情に阿修羅が少しまた心を開く。
俺を見てクスクスと笑い、
それを見て阿弥陀もニッコリほほ笑んだ。
釈迦如来への紹介は阿弥陀に任せ、
阿修羅に頑張るように告げて、俺は肉体へ。
頭痛はピタっと治まった。
でも、まるで丸一日海で泳いだかのような疲労感。
胸も苦しく痛い。
次の日、熱を出した。
「カン、どう?。」
「大樹・・・。
これが阿修羅なんかな。
強い力を持ち、怒り悲しみ苦悩で溢れた力。
それが俺の体に入ってたから、
その余韻が残ってるんかもしれん。」
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