vol 234:戦略





「どうだ?。」

「あ、弥勒。おかえり。」

「変わった事は?。」

「うん。」

大樹は弥勒の居ない間に起こった事を説明した。

「カンは、本堂に居るよ。」

俺は本堂の仏像を調べてた。

仏像に入ってた大日如来の化身、

まぁ、大日如来の国で修業してた人やな。

その霊はどこに行ったんやろか。

「小角、どない?。」

(居ないな。)

「気持ち悪い気しか感じへんよな。」

(うむ。闇の者独特だ。)

俗に言う悪霊、

それは人間が死んで怨み妬みが大きい者の事を言う。

闇の者の中にはそう言った奴等も確かに多い。

せやけど、悪魔は違う。

神の世界を嫌い、

光を嫌う一種のあの世の生き物や。

床には鋭い爪跡。

(カン、それには触れるな。
お前の気を乱す。)

「うん、わかった。」

そこに弥勒と大樹が現れた。

「よぉ。どうやった?。」

「顔は見れなかったよ。」

「どう言う意味や?。」

「顔の皮膚を剥がされていて、
包帯でぐるぐる巻き。」

弥勒から血のついた封筒を渡された。

中身を開けて読む。

「野郎は止めも刺さないで、
瀕死の状態にわざとさせた。」

「俺・・・コイツだけは許せんよ。」

大樹も小角も小さく頷いた。

手紙を弥勒に返し、

「どないする?。」

「役行者、貴方の意見を聞きたい。」

(闇の者の力が強まるのは、夜だ。
いくら、この世に姿を現す事が出来るようになったとはいえ、
己の最大の力を日がある内に出すのは、
まだ無理なはず。)

「じゃあ、日のある内に、。」

俺は大樹の言葉を遮った。

「いや、夜や。」

「夜って、。」

「最大の力出させたらえぇよ。」

「カン!。」

「正気か?。」

「正気やからそう言うんや。
最大の力出しても俺らに勝てんことを、
知らしめたる。」

俺はほくそ笑んだ。

「この事をサタンが知らんはずがない。
俺がどう出るか見とるはずや。
もうじき日も暮れる。
小角、この寺の周りに結界を。
大樹と弥勒、シロも呼んで、
この場合に最適な結界の張り方を覚えるんや。
どうせ、また使う時が来る。」

3人は俺の案に頷き、

俺はひとり本堂に残った。

頭の無い大日如来の仏像の前に座って両手を合わせる。

「ばぁちゃん、聞こえるか?。」

仏像から声が響く。

(えぇ、聞こえますとも。)

「ここに入ってた弟子は無事?。」

(命からがら戻って来ています。
塵となる寸前に。)

「そないに?。」

(我々の国は密教。
法力専門の国だが、分野が違う。
そして、寺に入る者は守る力、
それは心に知恵と宇宙の真理を教える為に居る。
闇の者と互角に戦える者は、
仏像に入る者など殆ど居ない。)

「必要ないもんな。普通。」

(カンよ。慈悲の心は闇の者の弱気弱点。
慈悲の心ある者の光ほど、
闇の者を苦しめます。
悪魔を救う事は、闇に還す事。)

「そんなん!・・・闇の門は開いたまんまや。」

(そう。時が来るまで、この繰り返しなのです。)

悔しい。

歯を食いしばって、手を合わせた両手に拳をつくる。

(怒りは相手の最大の力を増幅させる源。
それを忘れてはなりません。)

「うん・・・。」

「カン、小角さんが呼んでる。」

大樹が俺を呼びに来た。

俯いて座ってる俺に近付いて後ろから抱きしめる。

なんの言葉もない抱擁にも、

頼り合い、愛情もある相手との抱擁には、

時に言葉が要らない時もある。

大樹の回された腕に触れて、

大きく息を吸って、

「よっしゃ、行こか。」

俺は大樹と共に外に出た。









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