|
vol 232:森の主
弥勒が自分の寺に行っている間、
我らは今居る大日の寺の周辺を見て回る事にした。
池と気温以外とくに変わったところはない。
木々の緑が枯れているのは気温と邪気のせいだろう。
カンは木に触れ、
「待っといてな?しんどいよなぁ。」
そんな邪気に侵された木々に話しかけ、
兄様は、そんなカンの横で微笑ましくカンを見つめている。
・・・。
我に出来る事。
ここは、森。
寺の周辺は自然。
地面に触れて集中した。
この森にも蛇の主がいるはず。
「我の声を聞こえし兄弟よ。
子よ。」
暫くして地面の這う音が聞こえる。
草の中から1匹の大蛇が現れた。
「わ!なんや!。」
カンが驚いた。
「我が呼んだ。」
大きな大きな立派な大蛇。
(誰ダ。)
「我は蛇の国の大神の子、白蛇神だ。」
(我ラノ国ノ神・・・。)
「そう。今は訳有り、人間の姿をしている。」
大蛇と視線を交わす。
大蛇は頭を深く下げ、
(我ラノ神・・・。)
「うむ。」
我の事を理解した大蛇に我も軽く頭を下げた。
「この場所で何が起こっている。
お主は何か知っておるか。」
(悪シキ者、我ラ蛇、唆ス。)
「唆す?蛇をか?。」
大蛇は大きく頭を縦に振る。
我はカンを見た。
「俺は、カンや。
白蛇神の仲間やねんけど、
その悪しき者ってどんな奴や?。」
(人間ノ姿。人間デハナイ。
眼(まなこ)黒イ。
女。女デハナイ。)
兄様が言う。
「人間の女の姿をしてるってわけだね。
目が黒いのは、光がない。
主よ、私は蛇の国の大神の子のチビ神。
白蛇神の兄。
その悪しき者はお前にも来たのか?。」
(キタ。我ニ、チカラヲ貸セト。
コノ森ヲ人間カラ救ウ為ニ。)
やはり、標的は人間か。
「お前は手を貸したんか?。」
(我、コノ森ノ主。
人間、コノ森、荒ラサナイ。
我ラヲ大事ニスル。
森、守ラレテイル。
人間ニヨッテ。)
「ここでは、人と森は共存出来てるわけやな。」
カンは笑んだ。
(シカシ、他ノ蛇モ狐モ、
唆サレ、命吸イ取ラレタ。)
「命、吸い取る?。」
「悪魔の契約や。」
背後からボコンと泡のたつ音がする。
皆で振り返ると、池の面に我らに向いて女が顔を出した。
黒髪の長い白眼のない青白い女。
その女が顔を出した途端、
空気は更によどみ、重くなる。
「えぇか。今はほっとけ。
俺らの弱さを探っとる。」
カンが我らに話すと、女はニタァっと笑みを浮かべ沼に姿を消した。
「どうする?カン。」
カンは睨むように池を見つめ、暫くして口を開いた。
「弥勒が戻るまで待と。
本堂以外、この寺の家に結界張るんや。」
「結界なら、弥勒しか・・・。
俺達の結界は無意味になってしまうよ。」
「我らは蛇。
アヤツが、蛇の力も取り込んでいるなら、
我らの結界は弱まってしまう。」
「そこは、アレやん。
エキスパート呼ぶ。」
「役小角か。」
「あぁ。主、お前はどないする?。」
(我、仲間、奪ワレタ。
我、戦ウ。)
「そっか。ほんなら、俺らと一緒におろう。」
232 
|